鬱田志乃

それで、集まったのがこの面子、と

駿河恵司

悪い、多いか……?

鬱田志乃

問題はない。ただ……

駿河恵司

ただ?

駿河麻衣

ドクオ先生、久しぶりなのじゃ!

沢近里香

お、お邪魔して大丈夫だったんですか……?

鬱田志乃

中々気まずくないか、俺退職してるんだが……大丈夫なのかこれ

駿河麻衣

大丈夫なのじゃ! 麻衣からすればドクオ先生は兄者のお友達だし、里香ちゃんはドクオ先生が引率だからお泊まりを許してもらったのじゃからな

鬱田志乃

引率ではないんだが

駿河麻衣

細かいことは気にするでない

埴谷義己

すまない、俺もよかったのか?

鬱田志乃

えっと、アンタは埴谷……さんだっけか。構わないさ、恵司もその方がいいと

埴谷義己

駿河が? 弟の方が誘うならまだしも、兄の方か

駿河恵司

悪いな、人は少しでも多い方がよくって……

砂尾緋糸

恵司ー!

駿河恵司

うわっ!? 緋糸ちゃん、いきなり飛び付くのはびっくりするからやめてくれるか?

砂尾緋糸

えへへー。恵司と一緒にお泊まりなんて嬉しいな! みんなも一緒だし!

駿河麻衣

麻衣も緋糸ちゃんとお泊まり、嬉しいのじゃ!

箱入椎

私も、ギコ君やみんなとお泊まりだなんて出来ると思わなかったよ

駿河恵司

ああ、椎さんも来てたのか

鬱田志乃

椎さん……って、このパソコンの事か?

箱入椎

はい! 私、箱入椎っていいます! 鬱田さん、よろしくお願いしますね!

鬱田志乃

……恵司

駿河恵司

事情は後で話す。埴谷の連れだ

鬱田志乃

……。そういや、音耶の姿が見えないが……来てるのか?

駿河恵司

来てるよ。ただ、ちょっと色々事情があってな

鬱田志乃

多いな事情……。まぁいいさ。車は用意しといたから、適当に乗ってくれ。男女別れる形とかでいいから

駿河麻衣

ドクオ先生と一緒がいいのじゃ

沢近里香

私も……

駿河恵司

おいおい人気だな、ドクオ先生

鬱田志乃

怖い目を向けるな恵司。言ったろ、生徒には人気だったんだよ

駿河恵司

とりあえず、じゃあ麻衣と里香ちゃん、鬱田は同じ車だろ? それなら緋糸ちゃんもそっちだな

砂尾緋糸

うん! 麻衣、私はお菓子をたくさん持ってきたぞ!

駿河麻衣

流石緋糸ちゃんなのじゃ!

駿河恵司

それじゃあ、後は残りって感じだな

埴谷義己

椎、悪いな、男ばかりの方で

箱入椎

ううん。私、ギコ君と一緒だから構わないよ

埴谷義己

椎……

駿河恵司

リア充爆発しろ

鬱田志乃

リア充のお前が言うか。って、肝心のお前の彼女はどうした

駿河恵司

あれ? そういや見ないな。……どこにいるかまでは全くわからん

鬱田志乃

それもそうか……仕方ない、行こう

鬱田志乃

着いたぞ

駿河恵司

一応聞いておくがここのペンションの名前は"シュプール"だとか"ブラウニー"じゃないだろうな

鬱田志乃

人が死にそうな名前のペンションじゃねーよ。後そのネタ必ずしも万人に通じるものじゃないからな

駿河恵司

お前なら通じるかと

鬱田志乃

てかその話するとフラグ立ちそうだから止めろ

埴谷義己

まぁ、誰も知らない赤の他人が混じっているわけじゃないんだ。心配もないだろう

箱入椎

ギコ君とか音耶さんとか、警察の人も居るもんね!

駿河恵司

それはつまり猟奇殺人鬼も一緒に泊まっているという事なんだが黙っておくか……

駿河音耶

すまない鬱田、先に裏から部屋に通してもらっていいか?

鬱田志乃

構わんが、何で一人だけこそこそしてるんだお前

駿河恵司

あーっと、緋糸ちゃんへの配慮でな

駿河音耶

実は、緋糸ちゃんは俺らが双子ってこと知らないんだよ。俺のこと見ても「恵司ー」って言うから、“駿河恵司”が二人同時に居たらまずいだろ

鬱田志乃

緋糸って、恵司の彼女さんの妹だろ? 何でお前らの事知らないんだよ

砂尾空

そこは私から説明しよう

鬱田志乃

うわぁっ!? 唐突だなオイ

砂尾空

実は、あの子は私が生きてる頃から二人の区別がつかなくてな。私の死後、精神的に参っている彼女に追い打ちをかけても仕方がないだろうと、彼らが気を使ってくれているのだ

駿河恵司

説明すんのは簡単だけど、中々理解してくれなくてさ。自分の姉が殺されたって事実ですらあの子は未だにちゃんと理解してないんだ。そこに俺らのことを無理に理解させようとしたら、おかしくなっちまうかなと

駿河音耶

いつかはちゃんと説明しようと思うんだが……。如何せん、空のことがあるからな

鬱田志乃

……結構、込み入った事情があるんだな

駿河恵司

もうちょっとあの子が大きくなれば、全部理解してくれるさ。俺らのことは笑い話にでもしてくれりゃいいし

砂尾空

いつも済まないな、気を使わせてしまって。緋糸の代わりに礼を言う

駿河音耶

構わんさ。それじゃあ鬱田、俺は先に中に居る。他の連中には適当に取り繕っておいてくれ

鬱田志乃

ああ、わかった

砂尾空

……おっと、コメディのつもりが真面目な話をしてしまったな。どれ、バランスを取る為にふざけた事でも言っておこうか

鬱田志乃

何の話だよ、別にいいんじゃないか?

砂尾空

ふむ……、まぁいい。私に考えがある

駿河音耶

考え?

砂尾空

楽しみにしておけ。なぁに、フラグは立っているんだ。「今夜7時のサプライズパーティーをお楽しみに」ってやつだよ

駿河恵司

は? それって――

埴谷義己

……すまない、さっきからお前たちは誰と話しているんだ?

鬱田志乃

えっ?

砂尾空

どうやら、私の事が見えないみたいだな。無理もない、恵司や音耶なんかは私と生前のからの縁があるから見えるのだろうしな。彼とはこれが初対面――いや、彼には見えていないのだから、会ってもないのか

鬱田志乃

まて、それなら俺には何で見えるんだ

砂尾空

霊感が強いんじゃないのか? 根暗そうだしな

鬱田志乃

根暗は関係ないだろ

駿河音耶

それは否定しないのか……

殺人鬼×雪のペンション=××

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