ご注意!
この物語は(解決編)です。
まだ(調査編)を読んでいない方は
読まないようにお願いします。




























さて、まず事件の
おさらいから話してやろう。

8月2日15時…
つまり昨日の昼だが、
ごく平凡な住宅地で
女性の遺体が発見された。

本城朱里35歳。

第一発見者は彼女の夫だ。

死因は凍死。

争った形跡もなく、
普通の部屋でソファーに
横たわったまま死んでいた。

ちなみにクーラーや
テレビが点けっぱなし。

食事をしたばかりなのか
洗っていない食器や、
これから干す予定だった
洗濯物もあった。

えっ、私の知らない情報も
なんか加筆されてないかな!?

無論、ボクがさっき
発見した情報だ。

キミが知らなくて当然だろう?

………………………………。

ま、まぁとにかく、
聞けば聞くほど変だよね……

普通に眠っていたら
凍って亡くなったってこと?

まぁそうだな。

ちなみに死亡推定時刻の
気温は39℃だ。

暑いわけだな。

あ、なら被害者の夫が
クーラーに細工をして、
極寒の状態で凍死させたとか!?

バカか君は。

それなら部屋が凍っているだろう。

あう……。

だが少しはいい線をいっている。

半分は正解としておこうか

え! 
じゃあやっぱり夫が犯人!?

…前言撤回だ。

熱したコンクリートの上に
裸足で正座して反省しろ。

ひえっ……!?

はぁ……
クーラーだよ。クーラー。

あの部屋では
少し寒いぐらいにクーラーが
かかっていたんだ。

でもそれで死んだってことは……。

もちろんそれだけではない。

決定的ではないが、原因の一つさ。

原因の一つ?

この家の冷蔵庫を覚えているか?

冷蔵庫? 
ぎっしり素材が詰まってて
すごかったよね!

そこだ、咲くん。

キミは料理はよくするよな?

うん、割と得意だよ?

大体のモノなら
レシピもいらないしね。

なら料理を作る時にどうしている?

どうしているって……

道具を取り出して、
その後材料を出したり……あっ!?

そう、食事をしているなら、
食材は減ってなくてはいけない。

なのに部屋の冷蔵庫は満杯だった。

じゃあ彼女は一体何を
食べていたのかな?

少しは状況を想像し、考察しろ。

暑い日に食べるものといえば
……キミならなんだ?

うーん…
アイスとか!

………………………。

あ、あれ?

もしかして全然見当違いな
こと言っちゃった?

…正解だ。

誠に遺憾なことだがな。

遺憾って……え?

でもどうしてアイスが
今回の事件に? 毒殺とか?

それだと、死因は
凍死ではなく
毒殺になるだろうが!

あぁもうまどろっこしい。

結論から言ってやろう。
  

ボクはさっき大量の
ゴミを発見していたんだ。

君が冷蔵庫にかまけている時にな。

大量のゴミ?

そう、中は眼を疑うような
光景だったね。

…なんと1リットルの
チョコミントアイスクリームの
ゴミが、実に5箱分あった。

……パーティしてたとか?

残念すぎる……。

本当に君の頭の中は
赤色だけなくなった
ロケットペンシル並に残念すぎる。

そこはかとなく残念な罵倒に!?

被害者は夫とも
そこまでうまくいかず、
ストレスをため込んでいた。

近所の付き合いも
なかったみたいだしな。

そこでストレス解消の
ためにアイス?

納涼効果もあって
彼女はそれを好んだ。

いや、好みすぎたんだろう。

彼女は次第にアイスのみを
食す生活になっていった。

それは、あのゴミ袋の中を調べれば
わかることだろうさ。

あーたまに聞く、
偏食ってやつだよね?

そうだ。普通なら
病気になったりして
それなりの前兆がある。

が、彼女は急に
それにハマってしまい、
実に一回の食事で
5リットルのアイスを
食べきってしまった。

するとどうなるか?

どうなるの?

彼女はかなり
皮下脂肪の厚い体形だった。

だから食べたアイスにより
体温が奪われ、自律回復が
出来る体温を下回った。

ちなみにエアコンは
真夏に寒く感じるほど低温だ。

そのまま低体温、低体温障害となり……。

凍死にまで至った……



って、これってただの!

そう。
事故だったんだ。

これが今回の事件の答えだな。

そんなことってあるんだねぇ……。

実際稀ではあるが、
調べればこのケースは
過去にもないことはない。

国内よりも海外で
報告されていることが
多いだろうがな。

あらゆる食べ物にも
言えることだが
なんだって食べ過ぎは
体に毒ということだ。

さて、これ以上
ここにいるのは面倒だ。

刑事にでも連絡して
とっとと帰るとしよう。

遺体は?

興味がなくなった。

まったく…もっとボクを
悩ませるような事件がないものか。

もっとも、天才のボクに
かかれば、ちょっとやそっとの
事件では話にならないがな。

とりあえず私にとっては
アナタの傲慢さが悩みの種よ……。

後日

『真夏に凍死!?奇妙な悲劇』

……か。

あ、今日の夕刊だね。
思ったよりも小さな記事に
なっちゃったんだ。

マスコミが煽る前に
事件が終わったからな。

世は事もなしに。
何事もこれぐらいが
丁度いいんだよ。

あれ?
普段ならもっと大きく出せーとか
言ったりしないっけ?

あのな……このボクが
こんなくだらない事件の
解決者として世に出たって
三流記事のダシにされるだけで
1文の得にもならないんだよ。

どこぞの毎回生きてるだけで
周りの人間が死ぬような
少年探偵や高校探偵じゃないんだ。

こういった面倒は避けたほうが
色々と都合がいいんだよ。

本当は写真撮られると
身長140cmの自分が
世の中に出回っちゃうのが
嫌なだけなんじゃ……。

……おい乳袋。
それ以上言ったら、
キミの恥ずかしい過去を
全校の生徒に晒すことになるぞ?

わーリアルな
脅迫いただいちゃったー!?

あぁ……しかし暇だ。
とても暇だ。
すごく暇だ。

もう少しまともな事件でも
どこかで起こっては
くれないものか……。

その前に、ちゃんと私以外の
友達でも作ったらいいのになぁ……。

凪咲探偵物語

真夏の雪女








最後までご視聴ありがとうございました。

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記:ラフ・フォックス

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