武雄

ここの住民と俺の信頼関係は抜群だ。
だが、世の中の普通はこんなデカイマンションの住人一人一人と
仲良くしようなんて考える馬鹿はあまり居ない

武雄

お前がどうしようとお前の自由だ。
お前のやりやすい職場はお前が作っていけ

叔父さんはそう言った。
だから俺は。

なんにもしなかった。

叔父さんに与えられた住み込み用の部屋で
次の日も、その次の日も

一日中ゲームをしていた。

真守

っしゃぁ!
野郎、ぶっ殺してやったぜ!

真守

あァ゛!?
てめえこいつリスキルしてんじゃねえぞボケ!

真守

ヒャッハー!
汚物は消毒じゃー!

え? ここは普通、住民たちと仲良くなっていく?







知るかそんなもん。

叔父さんは言った。
俺の好きなようにやれと。

だから俺は”特に関わらない”という選択をした。
何も間違っちゃいない。

そして、俺は次の日もゲームをしていた。
もちろんマンション内の掃除業者やゴミ回収業者の手配。
仕事はきっちりとこなしていった。

そんなせいか。
誰とも関わらずにこそこそと生きていこうと思っていた。

しかし、現実はそんな甘くはなかった。

源さん

お~、お~、若いの。今日も元気にやっとるのう

真守

お?なんだ6階の爺さんじゃねーか。
6階なんて偉そうに高いところに住みやがって毎日降りてくんのが
大変そうじゃねーか

源さん

無駄口叩いとらんでテキパキ働かんか馬鹿者

真守

痛え! 爺、てめえさっさと資産を俺によこしてくたばれ!

源さん

誰がお前みたいな若造にやるもんか。ばーかばーか

真守

てめえ、夜中に騒いでんじゃねー!
ぶっ殺すぞ!

トモ

なんだテメー、このプロゲーマー様がゲーム中なんだぞ!邪魔してんじゃねーぞ!
てめえのせいで一回死んだだろうが!

真守

はぁ!?下手くそが!
人のせいにしてんじゃねー!
ってかもう夜だから静かにやれ!
静かに!

真守

先生ー。先生ー。担当さん困ってますよー。
原稿進めてくださいよー

諸星先生

お願い、先生は今居ないの……

真守

いやいるじゃないっすか……

担当の小川さん

先生、お願いしますよ!
今年、春に一回落としてるんですよ!?
もう跡がないんですよぉ!

諸星先生

うげげっ! 真守くん、助けてぇぇ

担当の小川さん

先生、お願いします。プリン買ってきましたから

諸星先生

私、そんなモグモグ……安い女じゃモグモグ……ないんだから……あ、美味しいこれ

真守

……安い

トモ

っしゃあ!見たか今の!

真守

はあ!? 俺のサポートだろ俺の!

トモ

っるせえ! アシスタントは一生アシやってろや!

真守

よそ見してんな、次来たぞ。俺は左から行く

トモ

じゃあ俺は右からだな! 任せとけや

徳富くん

父さんがプロの選手だから僕も期待されてて……

真守

どーでもいいじゃん。そんなの。
まあ強いて言うなら球をよく見てガッときたら
ドヒュンだ。これでいけ

徳富くん

ガッときたらドヒュン!?

徳富くん

ありがとうございます。
自分、行けそうです!

次の日。

徳富くん

師匠のおかげで全打席ホームランでした!
ありがとうございますっっ!

真守

え!? へ、へぇ~そうか。
グッジョブグッジョブ……。

でもやっぱりあんずだけは。

真守

よぉ、あんず。今日ははえーんだな

あんず

……武さんにでもなったつもり?
ばっかみたい

真守

……

正直、俺は面倒だから誰とも関わりたくないと思っていた。
だが、蓋を開けてみたらどうだ!?

なんじゃこりゃ。

ここの連中はどいつもこいつも癖があって
個性的で……



すげー楽しい。




多分俺が叔父さんに似てるっていうのもあるし、
俺自身も叔父さんに憧れている部分もあるからこそ


結局俺は叔父さんの真似事をしているのだった。




それだけに、

あんずの言葉は深く刺さった。


真守

あいついつかしばく

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