咲の家。
裸でキスしながら抱き合う真と咲。

ねえ真さん。入院費払ったら一緒に海外へ逃げましょう?

え?

逃げましょう。もう限界でしょう、お互い…そう思いませんか?私、苦しくって

“お互い”ってどういう意味ですか?

どうって…

僕は妹を重荷だなんて思ったことはありません。置いて逃げるなんて絶対ありえない

…それは嘘ですよね?だったら何でこんな思いまでしてお金を工面するんですか?完全に治る見込みも無いんでしょ

ベッドから降りようとする真。
慌てて引き止める咲。

ごめんなさい!でも、私しっかり覚えているんです。内海が死ぬ寸前の声…手の感触。彼は猫じゃない!人間でした

真の胸に頬を寄せる咲。
愛おしそうに肌に指を這わせながら

あなたに触っていないとまた思い出してしまう。思い出してしまうんです!

…すいません。離してもらえますか?今から病院に支払いと、見舞いに行って来ます

警察が私を嗅ぎつける前にですか?


無視して真は服を着始める。
頭を掻き毟る咲。

結局彼女を愛しているのね

…妹ですからね

違う、そういう愛してるじゃない!女だから!血が繋がってないもの

いい加減にしろ!!

ごめんなさい。咲さん、僕たちちょっと疲れてるんですよ。ゆっくり休んでまた明日…

それってどんな明日ですか?朝目覚めるとこの部屋には私一人。
あなたとお金だけが綺麗に消えていて、見上げた窓の外には空高く飛行機が飛んでるの。
その中で真さんと仮病の妹が楽しそうに話してる。
松嶋咲はどうしようもないHでバカな女だったよって

真の平手打ちでベッドに打ち付けられる咲。

ごめん!でも、違うんだ。そうじゃなくて僕は本当に

何がどう違うの!?そうやって男は力で本音をもみ消すんだ!知ってんだ。ずっと昔から知ってるんだ!

這い蹲って札束の入った袋にしがみ付く咲。

このお金は絶対渡さない!絶対渡さないんだから!

いい加減に…

どっちがだよ!!お前もあいつと一緒だ!さんざん人の事バカにしやがって!!弄ぶだけあそんでおいて!!これっぽっちも私の言う事聞いてくれないんだからー!!

札束を真にぶつけまくる。
舞い上がるお札。

あなただけは違うと思ってたのに!貴方だけは私、本当に信じてたのに!!

落ち着いてくれ咲!僕は

僕は何?女騙す以外に何が出来るの?

真の歩み寄る足が止まる。

もー!ふざけるなあ!

紙袋を持ったままベランダに走り出す咲。
フェンスに背を向けて真を凝視。

死んでやる…違う、もう死なせてほしいの…限界

待て!


走り出す真。







足元の札束に足を滑らせ咲に激突。







その勢いでベランダから落ちる咲。







とっさに真が咲の髪に手を伸ばす。







一掴み毟り取れただけで咲の体は闇に消えていく。








ドサリという鈍い音が下で鳴る。








下を覗く真。







真っ暗で何も見えない。





























殺意は


全く無かったといえば


嘘になる





続く

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