第一話 おはようございます

遺言状

××市××町×丁目*-** 
通称「月光館」の土地、家屋、家財道具一切については、澁澤松彦の長男、
澁澤普(しぶさわあまね)に相続するものとする。


俺はそいつと、約1分くらい見つめ合っている。

…………

…………

尚、相続の条件については、種村法律事務所、種村弁護士に目録と誓約書の管理を預けるものとする

いやあ、相続条件なんて簡単なもんですよ、家と家財道具を一切売ってはいけないってだけですから

澁澤普には相続条件を順守し、次世代に澁澤家の財産を引き継いでくれることを期待したい。

あ、奥の間に箱があるんだそうで、
その中にあるものは
くれぐれも絶対に何があっても大切にせよ
というのが、
おばあさまの最期のお言葉でした

がんばってね★

なんじゃあこりゃあぁぁ!!

死体!
棺桶の中に、カッと目を見開いた、青白い、
まごうことなき死体!
これ何人だ!
あのババア、
とんでもねえもの押し付けていきやがった!

おかしいと思ったんだよ、
一度しか会ったことのない俺に、
こんな莫大な遺産……

ふぁあぁぁぁ

犯罪者になれってことか。
なるほどな!
一族の隅っこでニートやってる俺なら、
被害も最小限だ!

……ぬぅ、空気が悪い(鼻ヒクヒク)

莫大な財産と引き換えに、
自分のしでかした犯罪の隠匿をしろっていうことか。
あのババア善人ヅラしやがって
とんでもねえ秘密を隠していやがった。
どうする、いきなりピンチだぞ。
どうする俺、澁澤普…!

どっこいしょっと。おはよう、人の子よ

あ、おはようございます。……

生きてんの!?

生きてはいない。
ときに今は
何年何月何日何曜日何時何分か?

2015年11月9日(月)午後2時8分ですが

ふむ、寝なおす。おやすみ

棺桶にもそもそと戻っていく死体。
茫然と見下ろす俺。
ガタガタと十字架が彫刻された上板がスライドして、
やがて元の通りピッタリと閉

待て待て待て

すんでのところで俺はそれを止めた。

なんだよこれなんだよあんた何人だよ。説明しろよ。ちゃんと説明してよ。これドッキリか

お前が何を言ってるか皆目分からんが、私が今言えることはたった一つだけだ

俺と棺の攻防戦を繰り広げながら、
その何人かわからん男は端正といっていい顔をキリっと引き締めた。

続きは夜8時!
お楽しみに!

ピシャ、と棺の蓋が閉じた。

第一話 おはようございます。

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