ん~……迷うわねぇ。どれがいいかしら?

ナーロック、こんな酒場に呼び出していったいっ……おわっ! どうしたんだよ! このテーブルいっぱいの本とDVD!

良い所に来たわね、シンヤ。ねえ、『第一回・戯言SF紹介録』はどの作品がいいと思う?

……『戯言SF紹介録』って何?

あら? 言わなかったかしら? 私の看板ラジオ番組が始まるのよ。グラウのどこでも私の癒しボイスを聞く事が出来る、素晴らしい事よ。ついでに、私の好感度も売り上げも、二倍・三倍となって……

……結局、お金じゃないか

いいえ、それは誤解よ! 私がラジオで好感度が上がる事は、イレイザーの……ひいてはグラウ能力者全体の地位向上にも繋がるのよ!

う、うん。わかった、わかったから! 顔が近いって!

わかってくれればいいわ。で、そのラジオ番組で『戯言SF紹介録』っていうコーナーがあって、私のお気に入りのSF作品を紹介するのよ。大事な第一回目の作品は、どれにするか迷っちゃって

へぇ~……あ、『2001年宇宙の旅』だ。どこのレンタル店に置いてたんだ? 僕も一度探したんだけど、置いてなかったなぁ

レンタルじゃないわ。全部、私が買って集めたコレクションよ

買った? レンタルじゃないの? ほら、最近できた……TATUYA

ああ、TATUYA。地球からグラウにも進出してきた、超大型チェーンね。グラウにも店舗を出すなんて、先見の明があったのか、欲深いのかは……三年後にしかわからないわね

ふ~ん……。ん? 僕はナーロックが作品選ぶ為に呼ばれたのか?

そうよ。どれがいいと思う? 一応、映画三作品に絞ったわ。本当はねぇ、ロボット三原則の産みの親・アイザック・アシモフの小説を紹介したかったんだけどねぇ。私のオススメとして、SFミステリ三部作の第一巻『鋼鉄都市』とか……。第一回目だから、認知度の高い映画作品からの方が良いと思って……断念したわ

でも、アシモフの小説が元になった映画もあるだろ? ウィル・スミス主演の『アイ・ロボット』。あれなんて、メジャー作品だろ? ……え? なにその顔

まあ……そうね。でも、小説と映画はほぼ別物だと思うわ。ロボット三原則の適用とカルヴィン博士の登場は一緒だけどね。その話は、『アイ・ロボット』の紹介の時にでもするわ。今はラジオよ!

三作品って言ってたけど、どれ?

1、『誤作動? いいえ、私、失敗しませんから。だって、ロボットですから』な矛盾した命令にショート寸前、任務は人間の命より重いロボット・HALが登場する『2001年宇宙の旅』。
2、『殺人容疑? いいえ、私、殺しませんから。だって、ロボットですから』なロボット三原則を放り捨てた、殺人容疑ロボット・サニーが登場する『アイ・ロボット』。
3、『嘘? いいえ、私、嘘なんて付つきませんから。だって、ロボットですから』なユーモアと人間の機微を理解する、ロッカー型ロボットが登場する『インターステラー』。
……本当は庇護欲そそるロボット『チャッピー』も良かったんだけどね。どれがいいと思う?

1と2の紹介の仕方に悪意があり過ぎて、3しか選択肢がないんだけど……。っていうか、『インターステラー』を紹介したいんだろ?

おーけー! シンヤの熱烈なリクエストにお応えして、記念すべき第1回でご紹介する作品は……『2001年宇宙の旅』!

なんでだよっ!

シンヤ……何事も基本を忘れてはいけないのよ

……ああ、そう。僕、もう帰るよ。ミズキも待ちくたびれて、寝てると思うけど

まあ、ピンポン! よくわかったわね

へ?

ミィちゃんったら、シンヤが来る前に寝ちゃったのよね

うわあ! ミズキ! 何でナーロックに膝枕してもらってるんだよ!

んんんん~?

ほら! 起きて! こんな所で寝たらダメだよ! ナーロックみたいなのに、連れてかれたらどうするんだよ!

あぁら? どういう意味かしら? シンヤ

そのままの意味だよ! 大体、ミズキみたいな女の子を夜の酒場に……

次回、第1回戯言SF紹介録『2001年宇宙の旅』

ここに登場した者たちは、ラジオドラマ「ヴリドラの子たち」に登場します。YOUTUBEから誰でもお気軽にお聞きいただけますので、宜しくお願い致します。

ナーロックとユニークな仲間たち・前夜編

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