絵美

ねえねえ、山ノ井君って、
誰か好きな女の子って居るの?

絵美が俊之に訊いた。

俊之

え!?何だ?急に??

由佳

いいじゃん、教えてよー。

由佳も絵美に加勢する。

俊之

教えても何も、
何で高校になったら、
急にそんな事を訊いてくるんだよ?

絵美

だって、山ノ井君、
中学の時はちょっと、
近寄り難い感じだったじゃん。

由佳

高校に入ってから、
すごく雰囲気が変わったよね。

絵美

うん。
とても優しそうな感じになったよ。

俊之

それと俺が誰を好きかってのは
関係があんの?

絵美

だから、前から訊きたかったんだけど、
中学の時は訊き辛かったから~。

俊之

ああ、そういう事か。

絵美

ねね、誰が好きなの?

俊之

って、何で俺がそんな事を
教えなきゃなんねーの!?

由佳

いいじゃん、教えてよー。

俊之

んー。

由佳

どうしたの?

俊之

いや、どうしたもんかと思ってね。

絵美

どうしたもんかって、
どういう事?

俊之

俺は川村の事が好きなんだけど。

俊之は少し照れ臭そうに、そう答えた。

絵美

え!?私!?

俊之

だって、好きな子に
誰が好きかって訊かれて、
他の子の名前を
言える訳がねーだろ。

絵美は俯いて、黙り込んでしまった。

由佳も俯いてしまう。

絵美は少し照れている様な感じだったが、
由佳はちょっと悲しそうだった。

俊之

俺、ずっと、
川村の事が好きだったんだよ。

絵美はまだ、俯いて黙り込んでいた。

由佳

良かったじゃ~ん、絵美。

由佳は気丈な振る舞いで、絵美に声を掛けた。

俊之

この際だから、
俺も腹を括って言うよ。
川村、良かったら、
俺と付き合ってくれないか?

絵美はまだ、俯いて黙り込んでいる。

俊之

本当はもう少し経ってから、
告ろうかと思っていたんだけどね。
こうなったら、もう、
言うしかねーよな。

絵美

少し、考えさせてくれる?

絵美は俯いたまま、小さな声で訊いた。

俊之

うん。
余り期待をしないで待ってる。

絵美

え!?

絵美は顔を上げて、俊之に目線を戻した。

俊之

期待をするとフラれた時、
きついからなぁ。
それに俺がそうやって
ダメージを減らす事が出来ると判れば、
川村も遠慮無く、
結論を出す事が出来るだろ!?

俊之は絵美に優しい眼差しを向けて言った。

そして少し、間を空けてから続ける。

俊之

それにOKだった場合は喜びが倍増。

俊之はそう言いながら、悪戯な笑顔を作った。

俊之

それじゃ、待ってるから。

そう言うと、俊之は教室へ戻って行った。

絵美と由佳は廊下の柱の脇で俊之を見送る。

窓の外では、花を散らしたばかりの桜の葉が、
そよ風に揺れていた。

エピソード1/告白

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