ドターン!
王子、入るよ
この間、貸したCDを返し……
あれ?
さっきまでいたのに。
いつの間に出かけたんだろ
仕方ない、勝手に持って行くか。
えーと、どこだろ……?
ん?
この本は……
パラ…
こ、これは!
はい、藤吉さんに借りた
BL漫画とBLCD。
これで全部だね
とうとう感想を聞かせて
くれませんでしたね……。
ちゃんと読んでくれました?
だから読んでないし、
CDも聴いてないって
ええーっ!
せっかくBL王子にも
ボーイズラブの造詣を
深めてもらおうと
思ったのに!
藤吉さんは俺に
腐男子になって欲しいの?
っていうよりも、
とりあえずBLに対する
抵抗を無くして
もらおうと思って
あっそ……
今度はオススメの
BL小説を持ってきますね
だから読まないって!
あれ?
一冊足りないかも……
えっ、本当?
家に忘れてきちゃったのかも。
足りないのってどの本?
兄×弟モノです。
兄弟愛を超越した
究極の愛がテーマの、
禁断のラブストーリーです
内容は説明しなくていいよ……。
その漫画のタイトルは?
『弟のお前を愛しているから
メチャクチャにしたいんだ…。
兄ちゃんやめてよ!
兄弟でこんなのおかしいよ』
──と、いうタイトルです
(タイトル聞かなきゃ良かった)
おーい、王子ー!
あ、コウ。
奇遇だな
ゲームの発売日だから
そこの店で買って来たんだ。
あ、藤吉もいるじゃん
こんにちは。
学校以外でお会いするのは
初めてですね
そういや、そうだな。
王子と藤吉は
こんなとこで何やってんの?
ハッ!!
ま、まさか……!
デートじゃねえだろうな?
はは、違うよ。
藤吉さんに漫画とCDを
返すの忘れてたから、
メールで呼び出したんだ
(↑一刻も早く返したかったので)
なあーんだ、
それなら良かった
ふふふっ。
責田くんは本当に
BL王子が大好きなんですね
(あっ、また余計な事を)
大好きっつうか……。
惚れてるのは確かだけど、
あんまりそれ言うと
コイツが嫌がるし
意外と控え目なんですね
驚いた……
何が?
一応、コウなりに
気を遣ってくれてたんだな
そりゃまあな。
今まで友達だった奴を
急に恋人として見ろって
言われても無理だろ?
だから少しずつ慣らして
行こうと思ってな!
少しずつでも
慣れることは
永遠に無いからな?
さすが責田くん!
親友キャラの鑑(かがみ)です!
実はうちの学園の理事長だった、
という設定があれば完璧ですね!
うちは学園じゃなくて
普通の高校だろ。
理事長もいないし
それよか王子の家に行こうぜ。
さっき買ったゲームやらないか?
ああ、いいよ。
藤吉さんも来る?
残りの一冊も返したいし
えっ、私もいいんですか?
二人のお邪魔に
ならないかな……
大丈夫、大丈夫!
人が多い方が楽しいから!
ありがとうございます。
じゃあ、ご一緒しますね
ただいまー
お邪魔しまーす
失礼します
遅かったね、王子……
え?
まだ昼間だよ。
別に遅くないでしょ?
俺はずっと
お前が帰って来るのを
待ってたんだ
どうして美術の
美家 騎士(ナイト)先生が
ここにいらっしゃるんですか?
騎士先生は王子の
お兄さんなんだぜ。
知らなかったのか?
し、知りませんでした!
たしかに王子を守るのは
騎士の役目ですよね!
美形兄弟CP最高です!
……シーピーって何?
CPはカップリングの略です!
つまり受けと攻めの
組み合わせのことですね
聞くんじゃなかった
こういう回答がくるって
わかりきってるのに、
お前も何で質問するんだよ
ふ、藤吉さん?
なんかいつもとキャラが違うね
ああ、この子は学校じゃ
猫被ってるから
そ、そう……。
ところで王子、
大事な話があるんだけど
話?
コウたちが帰ってからでもいい?
出来れば今がいい。
悪いけどキミたち、
今日は帰ってくれないかな?
えーっ!
そりゃ無いっすよ。
せっかく遊ぼうと思ってたのに
頼むよ、
兄弟の一大事なんだ……
い、一大事って!
何があったの兄ちゃん?
私たちは一階に居ますので、
二階でお話をされるのは
いかがでしょうか?
そうだね、
帰ってもらうのも
悪い気がしてきたし……。
じゃあリビングで待っててよ
よかった~。
藤吉、リビングのテレビで
ゲームやろうぜ!
はーい♪
じゃあ部屋に行こうか、王子
う、うん
えいっ! クソッ!
ふふ、また私の勝ちですね
チクショー……。
お前って見かけによらず
格ゲー強えな。
特訓でもしてんのか?
弟と言い争いになるたびに、
格闘ゲームで決着をつけてきたんです。
そうしたらいつの間にか
強くなっちゃって……
なるほどなあ。
負けられない闘いってやつか
はい!
ケンカの内容のほとんどは
カップリング論争でしたから
弟とカップリング論争……?
ところでBL王子たち、
遅いですね
深刻な話みたいだったから、
まだ時間かかるんじゃねえのか?
どんなお話をしてるか
気になりますね……
おいおい。
まさか家族間の話に
首突っ込む気じゃねえだろうな?
ドターン!
2階から大きな物音が!
まさか取っ組み合いの
ケンカをしてるんでしょうか?
あの二人に限って
それはないだろ
は、激しい……。
さすがに心配になってきたな
是非見に行きましょう!
素敵な展開が
待ち受けてるかもしれません!!
素敵な展開?
そこの本棚に
こんな物が有ったんだけど
ああ、それ?
藤吉さんから
借りた漫画だよ。
返すの忘れててさ
(うっ、確かに表紙に
『弟のお前を愛しているから
メチャクチャにしたいんだ…。
兄ちゃんやめてよ!
兄弟でこんなのおかしいよ』
って書いてある……)
(一冊ずつ見てなかったから
気づかなかったけど、
すごいタイトルだな……)
どうしてこんな物を
藤吉さんから借りたんだい?
どうして、と聞かれても……。
なんて説明すれば
わかってもらえるんだろう
……王子の気持ちはわかった。
皆まで言わなくていいよ
はい?
俺は何をわかられたの?
今まで気づいてやれなくてごめん。
本当は兄ちゃんに、
この漫画みたいな事して
欲しかったんだよな?
そんなわけあるか!!
だったらどうして
こんな漫画を読んだんだ?
だからさっきも言ったけど、
それは藤吉さんに借りたというか、
押し付けられたんだよ!
中身は読んでない!
なるほどね
わかってくれた?
わかったよ。
藤吉さんを理由にして、
照れ隠しをしてるんだろ?
何もわかってない!
まあまあ、落ち着いて
……ちょっと兄ちゃん。
指先で髪をすくうの
やめてくれない?
ごめん。
恥ずかしがってるのが
可愛くて
恥ずかしがってるんじゃなくて、
俺は怒ってるんだよ!!
……って、
なんで顔を近づけてくるの?
チュッ……
んっ!?
(うわああー!
兄ちゃんにキスされた!
頭を押さえられてるせいで
逃げられない!!)
んーっ!
んーっ!
クチュ……
(なんか生温かい物が
入ってき、た……)
んっ……んちゅ……
っん、んむっ……
(これ兄ちゃんの舌じゃん!)
兄ちゃん、やめて!
どうしたんだ?
どうしたもこうしたも無い!
兄弟でこんなのおかしいよ!
ははっ。
さっきの本のタイトル
そのまんまだね。
そこまで再現したいのかい?
ち、違っ……!
ドターン!
いたっ!
わかったよ。
ちょっと荒っぽくなるけど
我慢してくれ
なんで俺を押し倒して
組み敷いてるんだよ!
だってさっきの漫画では
そうしていただろ?
そんなの知らない!
離してよ!!
こらっ、暴れるなって!
困った奴だな!
(兄ちゃん……!
意外に腕力が強くて
振り払えない!!)
せっかく王子の
望み通りにしてるのに、
何が気に入らないんだ?
兄ちゃんは誤解してる!
俺は兄ちゃんのこと
そういう目で見てないから!
そういう目で……
見てない……?
な、なんだよ。
なんでそんな
悲しそうな顔になるの?
俺は王子のこと、
ずっと“そういう目”で見てたよ?
……それはつまり?
俺は王子が好きだ。
今までは弟としか
思っていなかったけど、
やっと自分の
本当の気持ちに気づいたんだ
俺も兄ちゃんが
好きだけど……
本当か……?
嬉しいよ!
俺たち両思いだったんだな!
最後まで話を聞いてよ!
あくまで兄弟として好きって意味!
だから抱きしめるなっ!!
王子……
コ、コウ!
お前ら、
そういう関係
だったのかよ……
これは違う!
ふざけてたら二人とも
転んじゃったんだよ!
いいじゃないか。
この際、責田くんにも
俺たちのことを知ってもらおう
とっくの間に知ってるよ!
俺と兄ちゃんが
ただの兄弟ってことは!
あ、ゴメン。
俺たちの関係は、
人前では内緒にしておくんだね
なんで、ただの兄弟ってのを
内緒にする必要があるのさ!
見損なったぜ王子……。
俺というものがありながら!
紛らわしい言い方するな!
お前は、ただの友達だろうが!
ただの友達……
藤吉さん!
そこに居るんだろ?
出て来てよ!
チッ……。
もう少し修羅場を
堪能したかったのに……
何が堪能だよ。
藤吉さんに借りた漫画のせいで、
とんでもない事になったじゃないか
普通は漫画を貸したくらいで
こんな事になりませんよ。
BL王子の成せる業ですね
うっ……反論できない
責田くん、藤吉さん。
俺たちが恋人同士ってこと、
学校のみんなには秘密だよ?
教師と生徒の秘密の恋愛、
そして禁断の兄妹愛ですね!
属性がダブルで素敵です!
秘密を守るご褒美として
定期報告をよろしくお願いします!
ああ、わかったよ
何がダブル属性だーっ!
俺はそんなの認めねえぞ!
なあ、嘘なんだろ?
嘘だと言ってくれよ王子!
嘘だよ
アッサリ認めると
逆に信用できねーぞ!
じゃあどうすれば
いいんだよ……
男なんか信じられるか!
もう王子とは絶交だー!!
あ、責田くん!
勝手に誤解して
帰ってしまった……。
疲れる……
じゃあ、私もそろそろ帰りますね。
どうぞ二人の時間を
ごゆっくりお過ごしください
ありがとう藤吉さん。
これからのこと、
王子とじっくり話し合うよ
いい加減に
しろーっ!
急に怒鳴って
どうした?
なんで兄ちゃんは
俺の話を聞かないんだよ!
話なら聞いてるじゃないか
聞いてないよ!
何言っても自分の都合のいい方向に
持って行くし!
兄ちゃんなんか大っ嫌いだー!
BL王子!
どこに行くんですか!?
家出だよ!
兄ちゃんがいる家になんか
居られるか!
王子、待て!
王子っっ!!
(兄ちゃんなんか嫌いだ……。
絶対に家には
帰らないからな!)
(でも……。
勢いで飛び出しちゃったから、
財布もスマホも持って来て
ないんだよなあ……)
(取りに戻ったら親か兄ちゃんに
見つかりそうだし。
困ったなあ……。
これからどうすればいいんだ?)
ねえねえ、キミ。
こんな時間に一人で
何してんの?
えっ……?
>子無狐さん
好くんウザがられてなくて良かったです(笑)
姫はBLハプニングが起きるのは全部王子が原因だと思っているので、ツッコミを入れる隙を見逃さないんだと思います!(作者なのに他人事)
じ、次回も似たようなテイストなので、過度な期待はしないでくださいね_(:3」∠)_
浅井さん、こんばんは!
イラストを使ってくださりありがとうございます///実は腐女子の私なので、お話読んでテンションあがりました♡続きも楽しみにしております!
>さくらいさん
こんばんは~!
このお話は絵師さんの素敵なイラストが無ければ成り立たないので、素晴らしいイラストを投稿されていることに感謝です!
あ、あと、こんな話にイラストを使っても怒らないで下さってありがとうございます…!!
>涼雲さん
はじめまして。さっそくフォロー返しました!
面白いなんて言って頂けてありがとうございます…(ノд`)
続きを待ってくださる方がいらっしゃることが、作品を書く一番の原動力です!
続きは今夜あたりに投稿しますので、少々お待ち下さい!