ありがと
ありがと
そのとき彼女たちは、対峙したウィステリアを見ていた。
あなたそれでも人間?
ウィステリアに言われポーロウニアは、その特徴的なジト目をウィステリアへ向けただけで、結局耳を貸すことはなかった。
なんとでもいいなさい
とポーロウニアは、持っていたナイフを肉に突き刺した。
切れ口から赤い滴があふれ流れ出てきた。
きゃぁあああ
鬼
悪魔
呪われてしまいなさい
ウィステリアの言葉に、ポーロウニアは長いため息を吐いてゆっくりとナイフを置いた。
あんたねぇ
わかる?
ここは食堂なの
料理を頼まないのも
食べないのも
あなたたちの勝手
でも、ここは正しくは
食べるところなの
おわかり?
ライバルという名の旧友の言葉だから、傷つくこともある。
あなた、変わったわね。
余裕がないというか。
トラブってるのよ。
それは、会話のちょっとしたトゲが、ポーロウニアの感情をほぐし、話す予定のない言葉がポロリと出た出来事だった。
なにが?
魔法協会がよ。
あなた知らないの?
むしろ、知らなかったから
私を呼んだのよね?
私的には
助かったわ
何か大変そうね
人ごとね
あんたも
巻き込まれて
いるというのに
どうせ、
魔法協会の恒例の
政治的なものでしょ
わたし、そういうの
興味ないから
そういうあんたは、
その名前を次ぐ意味って、
どういうことか
考えたことあるの?
人を馬鹿みたいに言わないで
でも、こうして外に出てるのも
巻き込まれないコツよね
あんたって、以前からそうだったわね。
いつも、面倒ごとは他人に押しつけて
わたしは、いつも貧乏くじ
それで、私に用事って何?
わたしたち、お金が必要なの
ウィステリアは、単刀直入に告げた。
ふーん
それで料理を注文しなかったのね
でも、お金は貸さないわよ
そうじゃなくて
例の商人の
情報が欲しいの
依頼人が居なくなった仕事を
まだ続けるつもりなの?
今回は訳ありなのよ
訳ねぇ
何するつもりなの?
ちょっとね
怪しいなぁ
そういえば
ゆうしゃさまが
いないようだけど?
まさか
あなたたち
失敗したの?
ちゃんと倒したわよ
ふーん
まあいいわ
それで、ゆうしゃさまを
生き返らせる
お金が必要なのね
ええ、そういうことなの
あくまでも仕事で
しているのですから
調査は途中で
打ち切られてるわよ
とポーロウニアは一言断って、彼、商人の身の上を語り始めた。
行商人の彼は
各地を回っていたわ
ベノム村にはちょうど
春に寄っていたみたい
商人仲間の話では
彼は誰かのために、
魂を集めてるという話
彼にとって身内とよべるのは妹だけ
月並みだけど
彼にも生き返らせる人が
居るということね
あなた方と同じく
そこまで話しながたポーロウニアは、カスミたちの計画を察して、それ以上、敵を知れば気が滅入ると話を続けることはしなかった。
そうね。持ち主の居ない財宝は、あなた方の物よね。
ポーロウニアは、料理に口を付けずにウィステリアに伝票を渡して席を立った。
ウィステリアが受け取った伝票は、伝票に見せた紙であった。
そこには魔法使いがみれば分かる文字で場所が記載されていた。
ありがと
ばっばっかじゃないの?
あなたのためじゃなく
ゆうしゃさまのために
教えてるのよ
ウィステリアの言葉でポーロウニアは、自分でもなぜだか分からないが動揺していた。
それがまた自分でもわかり、一段と彼女を焦らせたのだった。
ポールウニアは、挨拶もほどほどに逃げるように店を出て行った。
さて、どうしたものか
たべる?
そうじゃねえよ
まあ、行くしかないわね
あのぉ
ゆうしゃさまの
復活費用
わたくしが立て替えて
もいいのですよ
そのかわり
ゆうしゃさまは
きゃ
ためている理由を
聞いてしまったあとでは
気が進みませんが
今回はあの商人が貯めているはずの
お金をもらいましょう
あんな体になってまで
集めた資金があるはずだな
あたしらも殺されてるんだし
受けとる権利はあるわな
むしかよ