プリンセペル

兄さん!

シエルン

どうした、そんなに声を荒げて

プリンセペル

兄さんは人間達が錬金術の研究をするのを手助けしていると聞いたが、本当か?

シエルン

ああ、出来る範囲でやっているが、それが何か?

プリンセペル

黄金を作りだそう等と、そんな強欲で傲慢な事が許されるのか!

シエルン

その事が引っかかっているのか。
今から説明するから甘草のソーダでも飲んで落ち着け

プリンセペル

……

シエルン

確かに、黄金を作ろうというのは強欲で傲慢な行為だ。
しかし、人間には錬金術が必要だ

プリンセペル

その心は

シエルン

知恵の実を口にし、楽園を追われた人間達は、さらなる知恵を付けなければ生きていく事が出来ない。
錬金術が生み出す物は黄金などでは無く知恵だ

プリンセペル

……

シエルン

考えようによっては、黄金を作り出すよりも強欲な行為かも知れないがな

プリンセペル

なるほど。
しかし、このまま人間が知恵を付けていったとしたら、どうなるのだろうか

シエルン

それは神以外に誰も知らないだろう。
もしかしたら、もしかしたらの話だぞ?
人間はいずれ、同性同士の番いでも子を成せるようになるかも知れないし、もしかしたら番にすらならずとも増える事が出来るようになるかも知れない

プリンセペル

まぁ、番にならずとも増える生き物は既に居るから、無いとは言えないな

シエルン

そう。
いずれ人間は父なる神以外の神に属する者達も、その手から離れていく事も有るだろう。
ただ、錬金術で一つだけ確実に不可能な事がある

プリンセペル

それはなんだ?

シエルン

黄金を作る事だ

プリンセペル

何故それは不可能だと?

シエルン

理由は簡単だ。
黄金は元素鉱物だからな。
流石に元素はどうしようも無いだろう

プリンセペル

話を盛り上げていきながらバッサリ切り捨てるこのやり方、相変わらずだな

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