コンビニのATM。
封筒のお金を全部振り込む真。
振込先は“ミナミアオヤマビョウイン”

命は金に変えられない。金は命に変えられる


南青山病院の病室。
咳をしながら寝ている愛花蓮。
そっと部屋に入ってくる真。
メモと果物を添えて帰ろうとすると

花蓮

どうしたの?こんな遅くにコソコソと

ごめん起こしちゃったか。もうちょっと早く来ようと思ったんだけど残業でさ

花蓮

嘘。女の人と会ってたんでしょ?それも年上の人。すごいキツイ香水の匂いするもん

バレた?すごい洞察力。さすが小説家

花蓮

わざとらしいなあ。これぐらい普通の女なら誰でも気付くから気をつけた方がいいよ?

ご忠告どうも。食べる?

花蓮

どうしようかなあ。この時間からの夜食は太るからなあ

花蓮の細い手。
手の甲には赤い斑点がうっすらと浮かぶ。
花蓮に真っ赤なりんごを握らす真

太らなくちゃ。早く元気になってこの部屋を出よう





僕らは血の繋がっていない兄妹だ。

互いの幼少期に両親が再婚。



その数か月後、

僕らを残して二人の両親は交通事故死。



それからずっと二人で生きてきた








いやあ、すごいなあと思って聞いたんだ。何でガラス越しのキスだったのって。そしたら何て言ったと思う?

花蓮

わかんない。何て?

もしあっちが舌入れてきたらホテル代まで面倒見なくちゃいけないと思ったから

花蓮

えー、サイテー。お兄ちゃん、そういう人だと思わなかった

いや、俺じゃなくて友達の話!
それも聞いてみたんだけど、何ていうのかな。彼にとってはキスまでがデート。セックスからは獣みたいな感覚らしいんだ

花蓮

何ソレ?私にはわからないなあ。好きな人とずっと触れていたいって思うのはそんなに変な事じゃないでしょ?

…多分彼は一度も恋なんてしたこと無いのかもしれないね。お、今のフレーズ良くない?今度これテーマにして小説書いてよ

花蓮

わざとらしー。どうせ書いても読まないくせに

そんなこと無いさ~



小鳥がさえずる清々しい朝。
スーツを着崩して病院から出てくる真。
締め切られたカーテン。
薄暗い部屋。
目覚める花蓮。
窓の外。
真の後ろ姿を確認してから
安心して昨日のリンゴを丸ごと吐き出した。

続く

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