謎の女性は、なぜ怒られたか理解に苦しんでいる顔をしているシンデレラを連れて部屋を出て階段を下りた。
謎の女性は、なぜ怒られたか理解に苦しんでいる顔をしているシンデレラを連れて部屋を出て階段を下りた。
ったく、なんでこの家を作った野郎は二階なんて作ったんだぁ?全部一階で作れってんだ。なぁ?
えっ!?わ、私はこの家の雰囲気、好きです・・・けど・・・
突然の質問でビックリはしたが、正直な感想を述べた。なぜだか落ち着くというか何というか。
まぁ作らせたの私だけどな?アハハ!
この人、凄く怖いんですけどぉ!?
言ってることが滅茶苦茶だ。シンデレラが心の中で怯えていると、
しかし、流石は親子といったところだ。キミの母も好きだといっていたよ。
!!
・・・今、この人は「キミの母」と言ったのか?
謎の女性から急に母の事を口に出され困惑する。
あの!・・・何者なんですか?
焦らさんな。リビングで一服しながらでも話そうじゃないか・・・キミの母の事をね。
シンデレラと謎の女性はテーブルを間に挟み、向き合って座っていた。
自己紹介が遅れたな。私のことは博士とでも呼んでくれ。
博士・・・あの、私はシン・・・
・・・デレラ。だろ?
・・・・・・・・・・・
やはり、この博士と呼ばれる人は母の事を知っている。
そう警戒しなさんな。キミの母とはちょっとした付き合いだよ。
何の、付き合いだったんですか?
ド・レ・ス。
ドレス、ですか?
これは一部の人間しか知らないことだが、ドレスは私が作っているんだ。
そう。一般の人はドレスの製作者の顔を見たことが無い。それはなぜ?ドレスは元は兵器。そんな物を作っているのが身近に存在するなら一部の人にとって恰好の的になる。
製作者は各国の組織に匿ってもらい、その存在を隠しているのだ。
ドレスを!?でも、ドレスって何十年も前、戦争をしていた時に作られてて・・・どう見ても・・・
おいおい。流石にそれはないって。
まだ二十代だぞ?私は。
簡単に言うと、ドレスの作り方を誰かさんが語り継ぐ。何時の時代でもドレスが作れるようにってな。
そして、数年前から今に至るまで世に出回っているドレスを作っているのが私だ。
「まぁ私以外に何人もいるがな」と補足をした。
な、なるほど。
なんか、とんでもない人を目の前にしているはずなのに驚くのに疲れて反応に困ってしまった。
つまり、この人はドレスは作っていて・・・
お母様がドレスを介して博士と繋がりを持ったと。
ご名答♪
お母様とドレス・・・日常でも見かけるドレスなのに、シンデレラは母がドレスを着ているとこなんて見たことがなかった。
これは噂レベルの話しなんだがな?シンデレラは昔の母の事を知っているか?
い、いえ・・・
なんでも、ドレスのプロトタイプ・・・あ~ドレスがまだ量産される前の段階のやつって言えばいいのか?名前は・・・
『グリム』
今ではどんな物を作るにしても設計図や語り継がれた伝統・・・それらを使って物は作られる。しかし、それがない、初めて作るものだったら?
手探りで作るしかなかったドレスは、その時代で伝えられていたあらゆるものを組み込み、実験を重ねていった。
今は心配ないが、その時は危ないことに手を染めてまで作ってたらしい。魔法?錬金術?よく分かんないけど・・・
作っているのに分からないんですか!?
私は今に語り継がれた設計を見て作ってるだけだからねぇ。詳しい事はパスで。
そのおかげで、空飛んだり【コード】なんていう魔法や錬金術紛いな事まで出来るようになったんだ。便利だろ?良かったじゃん。
「なんていい加減な人なんだ」
・・・とは口に出すだけ無駄だと思った。
んで、その『グリム』にキミの母が実験体の一人として着ていたそうだ。
!?
ドレスが作られたのが何十年も前・・・それだと母が子供の頃に『グリム』を着ていたということになる。
ドレスは誰かが着ないと効果を発揮できない・・・何人もの人が実験に参加したって話だ。
お母様・・・なんで・・・
まぁあの時代に生まれたのが運の尽き。ドレスが完成すれば誰でも戦力になる。そういうことだろ?
シンデレラは当時の戦争については詳しくは知らない。何も知らない自分を悔やんだ。
まだ亡くなるには早かった人だ。小さい頃に『グリム』で無理をしていたのが死期を早めたのかもな。
・・・・・・・・・・・
・・・すまんな、母の事を思い出させたか。
博士なりの気遣いだろう。シンデレラは少しの間、目を伏せて俯いた。
・・・いえ!大丈夫です!!
いつまでも引きずったままだと前には進めませんから!
シンデレラは三女と戦っている時のことを思い出した。あの時、右手の【コード】に感じた母の感覚・・・あれは嘘偽りないと信じている。
なかなかどうして、心が強い子だ。
博士はシンデレラの母と出会い、その時のことを思い出した。
・・・私は別に構わない。けれども、本当に
『コレ』はあの子の為になるのか?戦いに身を投じさせる事が。
確かに私もそう思いました。でも私がいなくなった先、あの子一人で生きていく力がないとダメ・・・それを見越して考えた最善策が『コレ』なの。
・・・・・・・・・・・
いつもは適当にあしらって済ます博士だが、この珍しい客の何かに魅かれた気がした。
「もっと強いドレス」
「もっと輝かしいドレス」
・
・
・
今まで自分を訪ねてくるやつはこの二択の人間ばかり。しかし、目の前にいる客は違う。
・・・・・・わかった。
引き受けようじゃないか、その依頼。
・・・ありがとうございます。
あの・・・博士?
ん?あぁスマンな。ちょっと思い出にふけっていただけだ。
それで、結局のところお母様とはどんな事があったのでしょうか?
失敬。それを話すつもりだったのに少し話がズレてしまったな。シンデレラ、ちょっとついてきな。
博士が腰を上げ、リビングから出ようとした。
は、はい!
シンデレラは黙ってついて行くことにした。
家の外に出ると、シンデレラのよく知っている街並みが目の前に広がった。西洋風の町が立ち並んでいるその間に、明らかに場違いな家が建てられている・・・普通だったらこんな場所に、こんな家を建てないだろう。
つくづくこの人の感性は分からない。
この家は私の私物の一つでな。飽きるんだよねぇ~同じ風景ばっか見てるとさ。
それで家を作っちゃうなんて・・・
物作りの上で必要なものはシゲキ。
私だって一から十まで設計図のままドレスを作ったりはしないさ。個人的に試したいことや挑戦したいことだってある。ま、その証明も兼ねて教えてあげるよ。
そして街を出てから道なき道を歩き、寂しく建っている建物にたどり着いた。
・・・お母様!!