カンナに続き、遼にケガがなくてよかったと保健医が笑う。だが、遼は何がよかったのか検討もつかない。
カンナにケガをさせたのに、自分が一つも傷つかないのはどうかしている。みんなが擁護してくれることが我慢ならなかった。
体育は一時中断するかに思えたが、カンナと遼を抜いて授業は再開された。
カンナのケガは幸い大きなものではなく、軽い骨折で済んだ。
だが、だからと言って遼の胸が軽くなるわけではない。
大事を取って病院へ向かう保健医の車に遼も付き添い、カンナの治療を見届けた。動かさないように大きなギプスを取り付ける姿は痛々しい。
彼女は心配いらないからと笑うが、遼は隣に座って真剣な面持ちで、腫れている足が見えなくなるのを見ていた。
病室ではなく、相談室のような小さな部屋で治療を受ける。ドキドキと胸が鳴り、手はじっとりと汗ばむ。