世間がノストラダムスや2000年問題で騒いでいる頃、僕は大学一年生で、学業はそっちのけで遊びとバイトに明け暮れていた。
僕の通った遊技場はワンフロアにビリヤードとダーツがあり、二つの遊戯の間は腰ぐらいの高さの緑のネットで仕切られていた。
でも、僕が通い始めの頃にはネットなんてなかった。
この緑のネットで仕切られる事になったのは、僕が通い始めて三カ月が経った頃の事件が原因だった。
ビリヤードグループとダーツグループは僕が通い始める前から仲が悪く……先輩曰く
世間がノストラダムスや2000年問題で騒いでいる頃、僕は大学一年生で、学業はそっちのけで遊びとバイトに明け暮れていた。
僕の通った遊技場はワンフロアにビリヤードとダーツがあり、二つの遊戯の間は腰ぐらいの高さの緑のネットで仕切られていた。
でも、僕が通い始めの頃にはネットなんてなかった。
この緑のネットで仕切られる事になったのは、僕が通い始めて三カ月が経った頃の事件が原因だった。
ビリヤードグループとダーツグループは僕が通い始める前から仲が悪く……先輩曰く
フィーリングが合わない
らしく、お互い無視することで平和?にやっていた。
その日もお互い挨拶もせず、それぞれのゲームを楽しんでいた。
でも、ちょうど先輩が矢を投げようとした時、事件が起きた。
ダーツボードの前にビリヤードの玉が転がって来たのだ。
あっ
誰かが声を上げる。ビリヤードの男が追いかけて来て、玉を拾おうと屈んだのだ。ダーツボードの前で。
僕も見たが、まさに矢を投げようとしていた先輩も見てしまい、視線と一緒に矢先も下を向いたらしく、
ひっ!
男は悲鳴を上げ、尻もちをつく。矢は男の眼前スレスレに飛び、壁に突き刺さった。
あっぶねぇ~
僕は安堵のため息を吐いたが、先輩は大股で男の前まで来ると、いきなり胸倉を掴み上げ怒鳴る。
ふざけんなよっ! お前のツラがどうなろうと知ったことじゃないけどな、矢を投げた俺は迷惑だし、流血騒ぎになった店も迷惑だし、夜のニュースで流された日には、全国のダーツ愛好家に迷惑かけんだよっ!
二度とダーツボードの前に来んなっ!
あまりの先輩の剣幕に、店中が凍りついた。
僕もビビった。先輩がマジギレするのを見るのも初めてだったし、そもそも怒ることがあるのに驚いてしまった。
出会って三カ月。横浜のボンボンで潤沢な仕送りをもらっていた先輩に、僕は好きなだけタカっていたし、先輩もへらへら笑って奢ってくれたから……正直、ちょっぴりナメていたのだ。
《教訓1 いかなる理由であろうと、プレイ中はボードの前に立ち入るべからず!》