ー セ・カンド
〜ポルト街道 ー









魂の抜けたような表情で

ふらふらと道をゆく勇者様。


これまで一緒に旅をしてきた

ポチさんがいなくなり

心に大きなクレーターが

できてしまいました。





歩くその姿はまるで夢遊病のよう。





…と突然、勇者様の胸元が

もぞもぞとこそばゆくなりました。


勇者

…ハッ!


として、我に返った勇者様。


胸元を見ると…






そこには、ポチさん…






ではなく、セ・カンドにいた

もふもふさん達が

服の中で

もふもふもぞもぞ


もふもふもぞもぞ


もふもふもぞもぞ

勇者

くすぐったいー!


たまらず胸元からもふもふさん達を取り出します。

もふもふ

勇者

お前たち、ついて来てたのか…。

勇者

お前たちも帰るとこが
なくなっちゃったもんな…

勇者

…一緒にいくか?

もふもふ
もふもふ


少しばかり表情が明るくなった勇者様。





次に向かうは…











シーラも席を外します









ソルフェ

これを見よ。


ソルフェージュさんは

そう言いながら

胸元から折りたたまれた紙を

取り出します。


開いてみると…

シーラ

これは…アルザレア大陸の地図ですね。

ソルフェ

赤い点が今いる王都アルザレアだ。

ソルフェ

レベルが低い場合は
『アルザレア』から山脈を迂回するように
『ハジメノ』『セ・カンド』を経由して
山を挟んだ位置にある『港町ポルト』へと
行く。

そこから『ナゲー川』を渡って
『ウスト大陸』の『ツギノ』へ行くのが
レベル上げも兼ねた一般コースだ。

ソルフェ

勇ちゃんはレベルが1に戻っているから
そっちから行ったんだろうね、きっと☆

ポメラ

勇者って不便なジョブだよなぁ…。
魔王を倒したらレベルが1に戻るんだぜ?
俺だったら耐えられないぜ。

シーラ

え…。勇者だけなんですか?
その制約って…。

ソルフェ

勇者のレベルは、現存する脅威に
どれほど抗ったか?なのだ。

ソルフェ

平和な世界においては、
勇者はその技能を活かして
別の職をすべきなのだ。

シーラ

勇くん、お仕事変えたほうが
良かったんじゃないかしら…。

ソルフェ

さて。一般コースは脅威も少ないが
道程も長い。

ソルフェ

だが、我らはそんな悠長なことは
していられない。
まずは地図の青い点、
『港町ズール』へと向かう。

ソルフェ

そして、『港町ズール』より
目指すは『ペイ大陸』にある
旧アインスターク城。
そこにある書架で情報収集を行う。

シーラ

アインスターク…。
勇くんが倒した魔王ですね。

ポメラ

勇と『俺達』な!

ソルフェ

『ペイ大陸』へ渡るには、
『港町ズール』より月に1度出ている
ズール⇔クルナ間の定期船を利用する。

ちょうど二日後がその日にあたるのだ。

シーラ

結構ギリギリですね…。

ポメラ

だから、今日中にシーラを連れていくかの
答えを出す必要があったのさ。

ソルフェ

ズール⇔クルナ間の航路は非常に危険で
定期船は常に警護員を求めておる。

我々もその警護にあたりながら
『ペイ大陸』の『港町クルナ』へと向かおう。

ソルフェ

危険な旅となるが、
シーラにとっては
良い試練となるだろう。

シーラ

はい!

ポメラ

強い敵と戦ったほうが、
短い時間でレベルが上って
効率的だぜ!

ソルフェ

我々もサポートするので
大方問題はないだろう。

シーラ

よろしくね、ポメラ、ソルフェちゃん、
ソルフェージュ様。

ソルフェ

まっかせてー☆

ソルフェ

任せっきりにするなよ?
ちゃんと自らの力で切り開かんと
力はつかんぞ?

ポメラ

シーラもソルフェの扱いが
うまくなってきたな…。

ソルフェ

さて、シーラ。旅の準備を
数刻のうちに済ませるのだ。

シーラ

わかりました。


三人で盛り上がっていると

屋根裏よりパタパタと階段を降りる音が

聞こえてきました。

ライル

シーラ様!

シーラ

あら、ライル…。

ライル

私も連れて行ってください!
シーラ様にお力添えをしたく!

シーラ

あなた、いつの間に人の言葉が
喋れるようになったの?

ライル

それはきっと、この新しい名札の
おかげだと思います。

ソルフェ

ほほー。アルザレアキビの繊維で作った
パピルスじゃないか。

ソルフェ

先ほど教えたとおり、
アルザレアキビは樹液より
その繊維の方に魔力を増幅する作用がある。

ソルフェ

通常の紙や布での契約書より
遥かにマスターの魔力の恩恵を
うけるはずだ。

ポメラ

良かったな、コボルト。

ライル

ライルと呼んでください。

ソルフェ

ところで、まだシーラから返事を
もらっていないようだが…?

ライル

あ!

ライル

お願いします、シーラ様ぁ〜。

シーラ

わかったわ。

シーラ

一緒に行きましょう、ライル。

シーラ

いいですよね?ソルフェージュ様。

ソルフェ

おまえのスクワイアだ。
好きにするが良い。

シーラ

良かったわね、ライル。

ライル

はい!

シーラ

さて、あとは…


部屋の周りを見渡して

うなずくシーラさん。

召喚の構えです。

シーラ

ささやき…
いのり…
えいしょう…

シーラ

ねんじろ!





アシュタル

お呼びですか、シーラ様

シーラ

アシュタル、と書いて…よし。

シーラ

アシュタル、
これより魔王トロワ討伐へと
向かいます。

アシュタル

ふふふ…。
ついにこの私の力が必要なようですね!
いいでしょう!魔王戦!
この私にふさわしい仕事!

シーラ

お留守番、お願いね。

アシュタル

………はい…。



* * *


旅の準備を済ませたシーラさん。

3人と1匹は家の外へと出ます。


シーラ

この看板をこれに変えて…と。




シーラさんは

勇者代行カンパニーの掛看板を

扉から取り外し

新たな掛看板を付けます。



シーラ

さあ、行きましょう!

ライル

はい!

ソルフェ

ふふふ、凛々しいもんだ。

ポメラ

二人共泣くんじゃないぞー!








こうして、賑やかな3人と1匹は



王都アルザレアから西北へ位置する



港町ズールへと向かうのでした。













扉の掛看板は



風を受けてゆらゆらと揺れています。




[勇者は席を外しております]
[シーラも席を外します]

[一応、留守番はいます]








つづく








【勇者勇の装備】
レベル  :7
めいせい :205
ぶき   :新品の短剣
よろい  :鋼鉄のよろい
かぶと  :いつもの額当て
たて   :なし
どうぐ  :ファンガスの切り身(黄)
      野ばらのペンダント
      焼豚×2
      焼きとり×3
なかま  :もふもふ
とくぎ  :ファイアブレス
じょうたい:ツギノへ向かった模様


【シーラの装備】
レベル  :1
めいせい :100
ぶき   :いつもの本
よろい  :いつもの服
かぶと  :いつもの飾り
たて   :なし
どうぐ  :やくそう×99
      イーサ薬×9
なかま  :戦士ポメラ
      大魔導ソルフェージュ
      コボルト
とくぎ  :野良しょうかん
じょうたい:新入召喚士

第21話 シーラも席を外します

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