月 月の城 廊下

シズク

セイカさん、着きました。出口です

釣鐘セイカ

え?もう着いたの?

シズク

はい。この城は小さい頃から住んでますから…さ、人が来ないうちに行きましょう

釣鐘セイカ

え、あ、うん

シズクちゃんは私の手を握り、おそらく出口であろう扉を開けると

シズク

さぁ、セイカさん。外ですよ

釣鐘セイカ

え?

そこには見慣れない景色が広がっていた。黒い空、灰色の土、遠くに森が少しだけあるくらいで緑は殆どなかった。そこに私が知っている『外』の風景は一切無かった。

シズク

どうですか?セイカさん。その…信じていただけましたか?

釣鐘セイカ

……うん、分ったよ。もう十分。だから扉閉めてもいいかな?

シズク

…はい。どうぞ

私の顔を見て察したのか。シズクちゃんはどこか申し訳なさそうな顔をしていた

シズク

理解していだだけたなら先ほどの部屋に戻りましょう?セイカさん

釣鐘セイカ

…うん、そうだね。戻るよ

現実だったんだ、信じられない
私は本当に月に来ていたのだ

釣鐘セイカ

シズクちゃん…

シズク

はい?何ですか?

釣鐘セイカ

あのさ…ん…いいや。何でもない

シズク

?そうですか

そういうとシズクちゃんは再び歩き出す

釣鐘セイカ

駄目だな。詰んだ…まさか本当に月に来てるなんて…ここから逃げる方法が全く思いつかない

外に出ればなんとかなると思ったけど…

シズク

セイカさん。すいません。少しだけ待っててもらっていいですか?

いつも以上に真面目な顔をシズクちゃんはしていた

釣鐘セイカ

う、うん。分かったよ

気が付けば、私達は扉の横に止まっていた
どうやら、この扉、室内にいる人の声をシズクちゃんは聞いているようだった
暇なので私も聞く事にした

セレナ

…あー、面倒くさい。本当にやってられないって

聞き覚えのある声だった
どうやら、部屋にいるのはあの巫女狐だ

セレナ

あんたもそう思わない?シカナ

シカナ

うーん…どうですかにゃ~

セレナ

どうですか。じゃ、ないわよ!あーもう、本当にムカつくわ。あの見習い

シカナ

シズクですかにゃ?まぁ、あいつも見習いとはいっても一応は巫女ではあるし…

セレナ

発現する予兆すらない糞巫女よ。あんたが敬意を払う必要なんてないわよ

シカナ

はぁ…そんなもんですかにゃ?

セレナ

そうよ。だいたい女神様も女神様よ。あんな小娘に気を使って対象の事も話さないなんてさ、信じられないわ

シカナ

対象…地球の破壊の件ですにゃ

セレナ

そ、清々するわ。あんな星なんてさっさと『アマテラス』起動して破壊すればいいのよ

シズク

!?

釣鐘セイカ

一体何言ってるの。この狐!?まさか、シズクちゃんもこの事を知って…

シズク

ま、まさか…そ、そんな…

…そんな風にはとても思えない、な

シズク

セイカさん…

釣鐘セイカ

え?な、何?

シズク

逃げましょう。こっちです。付いて来て下さい

そして再び彼女は私の手を掴むと走り出すのであった

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