月 月の城 廊下
月 月の城 廊下
セイカさん、着きました。出口です
え?もう着いたの?
はい。この城は小さい頃から住んでますから…さ、人が来ないうちに行きましょう
え、あ、うん
シズクちゃんは私の手を握り、おそらく出口であろう扉を開けると
さぁ、セイカさん。外ですよ
え?
そこには見慣れない景色が広がっていた。黒い空、灰色の土、遠くに森が少しだけあるくらいで緑は殆どなかった。そこに私が知っている『外』の風景は一切無かった。
どうですか?セイカさん。その…信じていただけましたか?
……うん、分ったよ。もう十分。だから扉閉めてもいいかな?
…はい。どうぞ
私の顔を見て察したのか。シズクちゃんはどこか申し訳なさそうな顔をしていた
理解していだだけたなら先ほどの部屋に戻りましょう?セイカさん
…うん、そうだね。戻るよ
現実だったんだ、信じられない
私は本当に月に来ていたのだ
シズクちゃん…
はい?何ですか?
あのさ…ん…いいや。何でもない
?そうですか
そういうとシズクちゃんは再び歩き出す
駄目だな。詰んだ…まさか本当に月に来てるなんて…ここから逃げる方法が全く思いつかない
外に出ればなんとかなると思ったけど…
セイカさん。すいません。少しだけ待っててもらっていいですか?
いつも以上に真面目な顔をシズクちゃんはしていた
う、うん。分かったよ
気が付けば、私達は扉の横に止まっていた
どうやら、この扉、室内にいる人の声をシズクちゃんは聞いているようだった
暇なので私も聞く事にした
…あー、面倒くさい。本当にやってられないって
聞き覚えのある声だった
どうやら、部屋にいるのはあの巫女狐だ
あんたもそう思わない?シカナ
うーん…どうですかにゃ~
どうですか。じゃ、ないわよ!あーもう、本当にムカつくわ。あの見習い
シズクですかにゃ?まぁ、あいつも見習いとはいっても一応は巫女ではあるし…
発現する予兆すらない糞巫女よ。あんたが敬意を払う必要なんてないわよ
はぁ…そんなもんですかにゃ?
そうよ。だいたい女神様も女神様よ。あんな小娘に気を使って対象の事も話さないなんてさ、信じられないわ
対象…地球の破壊の件ですにゃ
そ、清々するわ。あんな星なんてさっさと『アマテラス』起動して破壊すればいいのよ
!?
一体何言ってるの。この狐!?まさか、シズクちゃんもこの事を知って…
ま、まさか…そ、そんな…
…そんな風にはとても思えない、な
セイカさん…
え?な、何?
逃げましょう。こっちです。付いて来て下さい
そして再び彼女は私の手を掴むと走り出すのであった