ドタドタと、慌ただしい足音が家中に響く。

日高 さゆり

ちょっと! 笠原!
あんたまで寝ちゃ……。

 日高は、思わず口を噤んだ。

 ベッドの側に、笠原がうつ伏せで倒れている。

 そして重なるように、見知らぬ少女が眠っていた。

日高 さゆり

か、笠原アンタ……!
よくも希の目の前で堂々と!

松原 丈史

よう。
お前ら、今日も来たのか。

松原 丈史

って、望月も居るじゃねぇか。
なんだお前、心配させやがって。
もう大丈夫なのか?

望月 希

はい。おかげさまでなんとか。

松原 丈史

そうか。そりゃよかった。

松原 丈史

ところで、その子は?

望月 希

私の友達です。

は、はじめまして……。

松原 丈史

そうか。
俺は松原 丈史。
こいつらの担任やってたんだ。よろしくな。

よろしくお願いします!

松原 丈史

高校の友達か?

望月 希

うーん、ちょっと違うんです。

……。

松原 丈史

夢から出てきた……ねぇ。
不思議なこともあるもんだな。

望月 希

え、そんなあっさり信じるんですか?

松原 丈史

お前らがそうだってんなら、
俺はそれを信じるよ。

お前らは、夢の中に入ったんだろ?
なら、夢の中から人が出てきてもいいだろ。

も、物分りがいいというか……。

望月 希

あはは……。
相変わらずですね、先生。

松原 丈史

まあな。

松原 丈史

……ところで笠原。お前どうした?
随分と顔が腫れているようだが。
それに、頭に何乗せてんだ。

 笠原の両頬は真っ赤に染まっていた。

 頭には、何故かめがちゃんが乗っている。

……。

笠原 裕樹

……まぁ、色々ありまして。

日高 さゆり

ほ、本当にごめん。

笠原 裕樹

もういいって。
でも、次からはせめて、
話くらい聞いてからにしてくれ。

望月 希

めがちゃん、
そこが随分気に入ったみたいね。

笠原 裕樹

他人事みたいに言うなよ……。

松原 丈史

……よくわからんが、
望月が無事で良かったじゃねぇか。
今日はなんで来たんだ?

笠原 裕樹

先生にもお世話になったので、報告に。
それと、1つお願いがありまして。

日高 さゆり

また学校に入りたいんですけど、
いいですか?

松原 丈史

望月は起きたんだろ?
入ってどうするんだ。

望月 希

友達に、学校を見せてあげたいんです。

笠原 裕樹

何度もすみません……。
先生がお忙しくなければ、お願いします。

松原 丈史

今更遠慮すんなよ。
望月の回復祝いだ、好きなだけ見ていけ。

大森 慎吾

あれ? 望月さんじゃないですか。
お久しぶりです。

望月 希

お久しぶり、大森くん。

望月 希

突然悪いんだけど、私の絵の場所、教えてくれないかしら。

大森 慎吾

望月さんの絵の場所ですか?
いいですよ、僕が取ってきます。

 大森の運んできた沢山の絵。

 その中に、確かにあった。

 笑っている毛玉。嬉しそうな毛玉。悲しそうな毛玉。

 色々な表情をした毛玉が描かれている。

私の絵……。

望月 希

よく描けてるでしょ。

うん。
……ありがとう。

大森 慎吾

 3人で行こうと約束した、中学校訪問。
 予定よりも大人数になったけど、それは3人よりも賑やかで、楽しいものとなった。

望月 希

思ったよりも狭いのね。屋上。

笠原 裕樹

夢の屋上が広すぎたんだ。
明らかに校舎以上あったぞ。

うっ……。

望月 希

私が伝えたこと以外は何もわからないんだから当然よ。

望月 希

でも、これからは自分で色々見て回れるね。

うん。
……一緒にね。

望月 希

勿論。

これから、一緒に色んな物を見よう。

みんなと、私たちのセカイで。

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