うさら

…………

うさら、おはようなの

うさら

お、おはよう……

どうしたなの、今日は先に行っているなんて

うさら

ちょっと、ちょっとね……

それになんだか、目が赤いの
寝不足なの?

うさら

そんなことないって

うーむ
あ!

昨日は楽しかったなの
買ったペン、使えるのが楽しみなのー!

うさら

そう、なんだ

あと、またあそこでアイス食べたいなの!

うさら

うん、そだね……そう……

うさら

え? ゆうか? ゆうか?

よおな

なの?

うさら

ちょっと、冗談やめてよ
そんなの、誰も楽しめないから

よおな

血、血なの……

よおな

誰の、血、なの?

おいッ! 女の子だ!
女の子が下敷きになってんぞッ!!

よおな

ゆうか……?

よおな

ウソ、ウソなの、そんなのウソなのッ!

よおな

だってさっきまであそこに……あそこ……

何が起こってんだ⁉

看板が落ちてきて、女の子が下敷きになってッ!!

よおな

ゆうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

うさら

よ、よおなッ!

よおな

友達なの!!
誰か、誰か助けてなのッ!!

専門の人を待つしかない!

よおな

どけて、どけてなの!
この看板どけてなのッ!

でもこんな大きく重いもの……

よおな

れいなが、れいながやる!

うさら

よ、ようなッ⁉

どいてろ!
おい、お前ら力貸せ!
すぐに救急車に乗せられるよう、ちょっとでも上げるんだよ!

よしッ!
せえのぉッ!!

よおな

ゆうかッ!

よおな

うさら

ひ、ひいッ!

こ、こんなのってねえよ……

腕も脚も、なんだよこれ……
人ってこんな風に……

よおな

ゆうかが、ゆうかがこんなのになるワケないの!

よおな

なるワケ……ないの……

よおな

ない……の

うさら

なんで……なんでゆうかが、ゆうかがこんなことに……

うさら

なんでぇッ⁉

なんとひどい事故だ

うさら

うさら

い、『いつな』……

うさら

いつなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!

いつな

危ない
でも、オレに暴力は届かないよ

いつな

実際にある空間じゃないからね
まあ心と心のお話し空間とでも言っておこうかな

うさら

ああああああああああああ!!

いつな

ふふ、そうしていると獣と変わりないねうさら
賢しさはどこへ行ったのかな

いつな

世界を解体するというのに、微細な一人が消えてこの感情の昂り、よくない、よくないようさら

うさら

ゆうかはッ!
ゆうかはぁッ!!

いつな

見たものは本物だ
あの人間は『不幸な事故』によって看板の下敷き、哀れなカエルのごとくぺしゃんこに潰れてしまった

いつな

あーあーあんなに血を流して
いったい誰が掃除をすることになるのかな?

いつな

だが、うら若き乙女、女子高生の血
舐めたい者もいるだろうなあ

うさら

こいつッ!
こいつぅぅぅぅぅぅぅッ!!

うさら

いつな

悪いけど話にならないから、そこから動けなくした
口以外は動かせないから、ほら、オレとおしゃべりしようじゃないか
あの人間のように

うさら

誰があんたなんかと!

いつな

どうどう
今のことについて説明があるのさ

うさら

あんたがゆうかをッ!

いつな

確かにそうだ
いわゆる、オレが殺した

いつな

だけどね、オレが手を下したワケじゃない

うさら

くそ野郎ッ!

いつな

野郎はやめてくれ
こうして女の子なんだからね

いつな

オレに、管理者に人を消すようなことができると思っているのかい?

うさら

できるに決まってるでしょ!

いつな

残念だけど、答えはNOだ
それならばこの世界をもっと楽に安定させるため、そうするだろう

いつな

オレはあくまで管理者
よほどのことがない限りは見ているだけなのだ

うさら

じゃあ今回の事はどう説明するのよ!

いつな

ふふ、今回は解体対象の世界だからね、いつもより干渉しても問題ないようになっている

うさら

だからゆうかまで……ッ

いつな

待て
だからオレは手を下していない
あれは本当に事故だ

いつな

オレならば助けられただろうが、間に合わなかった
そういう意味で殺したと言わせてもらった

うさら

くだらないウソを!

いつな

少しからかいすぎたようだな
しかし、あれは死んだ。オレでもどうにもすることはできんよ

いつな

でももしかすれば、キミの行動がペナルティとして返ってきたのかもしれないな
ああいう形で

いつな

しかしそうとしても可哀そうだ
それはキミの姿でわかる
だから、オレが少し干渉することにした

うさら

何を……するつもり?

いつな

キミのためのことだ
友人を失って悲しんでいるキミのための

いつな

言った通り元に戻すということはできない
が、和らげることはできる

いつな

ふふ、感謝してくれよ

うさら

……ん、戻ってきた?

よおな

うさら、どうしたなの?
早くしないとアイス溶けるなの

うさら

ゆうか、ゆうかはッ?

よおな

ゆうか?
誰なの?

うさら

ゆうかだよ、ゆうかに決まってるじゃない!
友達のッ!

よおな

なに言ってるなの
れいなにそんな名前の友達はいないなの

うさら

あそこ、看板の……ッ

うさら

何もなくなってる……

よおな

アイス食べてる途中に寝るなんて、うさらすごいなの

うさら

なんで……なんで……

うさら

干渉って、干渉ってこういうこと?

うさら

あいつ……何考えてるの……

いつな

わからないか?

うさら

何よ、何よこれ

いつな

キミだけが死んだことを認識するよう、干渉させてもらった
あまり知られていない存在でも、やはりなかなか面倒な作業だったな

うさら

だから何よこれッ⁉

いつな

いつな

キミだけがその存在、そして死を認識し続けられるのだ
つまりキミだけの存在になったのだよ、アレは

いつな

これほど嬉しいことはないだろう?

うさら

あんた、あんた本気で、それ……

いつな

ん?
どうしたんだ、顔が引きつって
そこまで嬉しいのか?

いつな

それはそうだな
仲がいい様子だった。ならば独り占めは実に満たされるものだ

いつな

サービス。せめてもの贈り物だ
キミが壊れてしまっては続きを楽しめなくなる

うさら

あんた……なんなの?

いつな

ん? どうした?
なんだその反応は?

うさら

こんなので……本当に喜ぶとか、そんなこと思ってんの?

いつな

言ったとおりだ
オレにしては珍しく善意なのだがね

うさら

あんたたちって、みんなそんななの?

いつな

質問の意図がわからないな
とにかく、キミはアレを手に入れることができたのだ
どれかの世界を選べば、寿命で死ぬまでずっと持ち続けられる

いつな

生みの親ですら超えたものをね

いつな

では、しばらく席を離す
ゆうか、かな? 思いで抱きしめるがいい

うさら

…………

うさら

違う、根っこが違うんだ、あいつとは

うさら

こんなことされた方が、辛いに決まってるじゃない……

うさら

ゆうかだって、みんなから忘れ去られて……ひとりぼっちだ、こんなの

うさら

ゆうか……お葬式すらできないなんて、こんなのない……あんまりにもひどいよ……

うさら

うっ……ううっ……

うさら……

ど、どうしたなの?
なんで泣いているなの?

うさら

ごめん、ごめんね、ゆうか……

うさら……

うさら

ごめん、れいな……今は一人にして……

わかったなの……

うさら

不思議
昨日あんなに泣いたのに、でもまだ出てくるなんて……

うさら

なんにも、あたしじゃなんにもできないんだ……
うぬぼれたってどうにもならないんだ、最初から……

うさら

玩具にされるしかない……んだ

うさら

もう選ばず、このままいっそ楽になった方が……

うさら

ん? 着信?
だ、誰から……お母さん? れいな?

うさら

え?

うさら

そんな、また……『いつな』、の?

うさら

そうだとしても……でも

うさら

行かないと!

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