…………
うさら、おはようなの
お、おはよう……
どうしたなの、今日は先に行っているなんて
ちょっと、ちょっとね……
それになんだか、目が赤いの
寝不足なの?
そんなことないって
うーむ
あ!
昨日は楽しかったなの
買ったペン、使えるのが楽しみなのー!
そう、なんだ
あと、またあそこでアイス食べたいなの!
うん、そだね……そう……
え? ゆうか? ゆうか?
なの?
ちょっと、冗談やめてよ
そんなの、誰も楽しめないから
血、血なの……
誰の、血、なの?
おいッ! 女の子だ!
女の子が下敷きになってんぞッ!!
ゆうか……?
ウソ、ウソなの、そんなのウソなのッ!
だってさっきまであそこに……あそこ……
何が起こってんだ⁉
看板が落ちてきて、女の子が下敷きになってッ!!
ゆうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
よ、よおなッ!
友達なの!!
誰か、誰か助けてなのッ!!
専門の人を待つしかない!
どけて、どけてなの!
この看板どけてなのッ!
でもこんな大きく重いもの……
れいなが、れいながやる!
よ、ようなッ⁉
どいてろ!
おい、お前ら力貸せ!
すぐに救急車に乗せられるよう、ちょっとでも上げるんだよ!
よしッ!
せえのぉッ!!
ゆうかッ!
⁉
⁉
ひ、ひいッ!
こ、こんなのってねえよ……
腕も脚も、なんだよこれ……
人ってこんな風に……
ゆうかが、ゆうかがこんなのになるワケないの!
なるワケ……ないの……
ない……の
なんで……なんでゆうかが、ゆうかがこんなことに……
なんでぇッ⁉
なんとひどい事故だ
⁉
い、『いつな』……
いつなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
危ない
でも、オレに暴力は届かないよ
実際にある空間じゃないからね
まあ心と心のお話し空間とでも言っておこうかな
ああああああああああああ!!
ふふ、そうしていると獣と変わりないねうさら
賢しさはどこへ行ったのかな
世界を解体するというのに、微細な一人が消えてこの感情の昂り、よくない、よくないようさら
ゆうかはッ!
ゆうかはぁッ!!
見たものは本物だ
あの人間は『不幸な事故』によって看板の下敷き、哀れなカエルのごとくぺしゃんこに潰れてしまった
あーあーあんなに血を流して
いったい誰が掃除をすることになるのかな?
だが、うら若き乙女、女子高生の血
舐めたい者もいるだろうなあ
こいつッ!
こいつぅぅぅぅぅぅぅッ!!
⁉
悪いけど話にならないから、そこから動けなくした
口以外は動かせないから、ほら、オレとおしゃべりしようじゃないか
あの人間のように
誰があんたなんかと!
どうどう
今のことについて説明があるのさ
あんたがゆうかをッ!
確かにそうだ
いわゆる、オレが殺した
だけどね、オレが手を下したワケじゃない
くそ野郎ッ!
野郎はやめてくれ
こうして女の子なんだからね
オレに、管理者に人を消すようなことができると思っているのかい?
できるに決まってるでしょ!
残念だけど、答えはNOだ
それならばこの世界をもっと楽に安定させるため、そうするだろう
オレはあくまで管理者
よほどのことがない限りは見ているだけなのだ
じゃあ今回の事はどう説明するのよ!
ふふ、今回は解体対象の世界だからね、いつもより干渉しても問題ないようになっている
だからゆうかまで……ッ
待て
だからオレは手を下していない
あれは本当に事故だ
オレならば助けられただろうが、間に合わなかった
そういう意味で殺したと言わせてもらった
くだらないウソを!
少しからかいすぎたようだな
しかし、あれは死んだ。オレでもどうにもすることはできんよ
でももしかすれば、キミの行動がペナルティとして返ってきたのかもしれないな
ああいう形で
しかしそうとしても可哀そうだ
それはキミの姿でわかる
だから、オレが少し干渉することにした
何を……するつもり?
キミのためのことだ
友人を失って悲しんでいるキミのための
言った通り元に戻すということはできない
が、和らげることはできる
ふふ、感謝してくれよ
……ん、戻ってきた?
うさら、どうしたなの?
早くしないとアイス溶けるなの
ゆうか、ゆうかはッ?
ゆうか?
誰なの?
ゆうかだよ、ゆうかに決まってるじゃない!
友達のッ!
なに言ってるなの
れいなにそんな名前の友達はいないなの
あそこ、看板の……ッ
何もなくなってる……
アイス食べてる途中に寝るなんて、うさらすごいなの
なんで……なんで……
干渉って、干渉ってこういうこと?
あいつ……何考えてるの……
わからないか?
何よ、何よこれ
キミだけが死んだことを認識するよう、干渉させてもらった
あまり知られていない存在でも、やはりなかなか面倒な作業だったな
だから何よこれッ⁉
?
キミだけがその存在、そして死を認識し続けられるのだ
つまりキミだけの存在になったのだよ、アレは
これほど嬉しいことはないだろう?
あんた、あんた本気で、それ……
ん?
どうしたんだ、顔が引きつって
そこまで嬉しいのか?
それはそうだな
仲がいい様子だった。ならば独り占めは実に満たされるものだ
サービス。せめてもの贈り物だ
キミが壊れてしまっては続きを楽しめなくなる
あんた……なんなの?
ん? どうした?
なんだその反応は?
こんなので……本当に喜ぶとか、そんなこと思ってんの?
言ったとおりだ
オレにしては珍しく善意なのだがね
あんたたちって、みんなそんななの?
質問の意図がわからないな
とにかく、キミはアレを手に入れることができたのだ
どれかの世界を選べば、寿命で死ぬまでずっと持ち続けられる
生みの親ですら超えたものをね
では、しばらく席を離す
ゆうか、かな? 思いで抱きしめるがいい
…………
違う、根っこが違うんだ、あいつとは
こんなことされた方が、辛いに決まってるじゃない……
ゆうかだって、みんなから忘れ去られて……ひとりぼっちだ、こんなの
ゆうか……お葬式すらできないなんて、こんなのない……あんまりにもひどいよ……
うっ……ううっ……
うさら……
ど、どうしたなの?
なんで泣いているなの?
ごめん、ごめんね、ゆうか……
うさら……
ごめん、れいな……今は一人にして……
わかったなの……
不思議
昨日あんなに泣いたのに、でもまだ出てくるなんて……
なんにも、あたしじゃなんにもできないんだ……
うぬぼれたってどうにもならないんだ、最初から……
玩具にされるしかない……んだ
もう選ばず、このままいっそ楽になった方が……
ん? 着信?
だ、誰から……お母さん? れいな?
え?
そんな、また……『いつな』、の?
そうだとしても……でも
行かないと!