突き刺さる視線。
怒りと恨みを篭った空気。
悪くないよね。
これが私のやったことの結果だから。
突き刺さる視線。
怒りと恨みを篭った空気。
悪くないよね。
これが私のやったことの結果だから。
全員見事に騙されてやんのバーカ!
ほんと面白いもん見せてもらえたよ!!
速水がいつ気づくかってビクビクしていたんだけどねぇ……
全然気付きやしないから最後まで生き残れた
そこは感謝してるよ速水
住吉ィッ!!
既に人狼ゲームは終わっている。
あとは、ルール無用の殺し合い。
私だけどうにかすれば、ここから出られる。
とうとうキレた『速水』が、私に飛びかかろうとする。
それを読んでいた私は、文月を跳ね除けて、事前に持っていたそれを素早く取り出して構え……。
って違う、やめろこいつは撃っちゃダメだ!
慌てて銃口を頭から下に下げる。
トリガーにかかる指も……無理だった。
これじゃ間に合わない。
うぁっ……!?
乾いた炸裂音。
続いて、倒れる速水。
硝煙を上げている拳銃を構えている、私。
って……。
!
ば……ばーか!
私が丸腰でくるわけないでしょう?
危険なのわかってるのにさ
うぐっ……
私が用意してもらっていた切り札――それは、このオートマチックの拳銃だった。予備の弾丸もポケットに入れてある。
私は発泡したことで、室内は本格的混乱に陥った。
元より、人殺しのゲームをしていても、直の殺しはしていない。
代理殺人だったこのゲームで、初めての暴力行為。
みな、私から逃げまどい、悲鳴を上げて、ドアから一目散に逃げ出した。
ドタドタと安全な場所を探して、館の中を逃げていく。
……やっちゃった……。
あっ……あぁっ……
すみ、よしぃ……!
残ったのは、腰を抜かして私を涙目で見上げている文月と、太腿を撃たれ押さえて悶え憎しみの目で私を見上げる、速水だけ。
……運がいいのかな、誰もいなくなったか。
私は談話室の扉に向かい、閉めて施錠した。
……これで、オッケーだ。邪魔は入らない。
悔しそうだね、速水?
この状況で出来るかな?
私を殺さないと何時までもでられないよ?
この……ッ
卑怯者ォ……!
そう……私は、卑怯な人間なんだ
だからこんなことまでしちゃった、もう……
突然飛びかかってくるから驚いたよ、まったくもう
何してるのさ?
いいんだ。
彼女達は、もう。
助かるんだから。
絶対に、助けるんだから。
死なせないから。
はっ……?
ああもう、他の連中想定してたのに……
咄嗟に撃っちゃったじゃない、ごめんね?
急所は多分当たってないよね?
掠っただけだといいけど……
私は拳銃をテーブルに置いて、倒れる彼女の元に向かう。
念の為に隠しておいたモノ、使えばいいか。
傷を見ると、深手だけは回避できたようだ。
私はソファーの後ろに置いておいた、救急箱を持ってきた。
これは万が一の為に、この拳銃と共に隠しておいた物だった。
よかった、用意しておいて……。
あなた……なにして……?
不幸中の幸いだったね
直撃は避けてるし……
掠っただけで見た目はひどいけど、歩けると思う
……思いたい
ろくに動けない彼女のスカートから伸びる足に止血して、薬を塗って包帯を巻いていく。
いだっ!
ごめんごめん、痛いと思うけど
私のせいだよだから手当はするから
なんの……つもりよ?
どうして殺そうとした相手を助けるの……?
うん、意味わかんないよね?
でもさ、ちょっとね……?
罪悪感……かな
いうなれば、だけど
えっ?
私がこうしている理由だよ……
文月、いいよ
私は二人を殺す気はないから
あんたはあんたを最期まで面倒見るから
ちゃんと、ここから生きて出したげる
ふぇ……?
私に敵意がないことを理解力のある速水はすぐに悟った。
手当てを受けている間、私に問う。
住吉……なぜ、みんなを、裏切ったの?
死ぬためだよ
どうせバレたんだ。
それにゲームは終わりだ。
もう隠し事をすることもない。
殺し合いも必要もない。
私は、本当のことを彼女達に言う。
知ってるでしょ?
私は……本当に、先が長くないの
だから死にたいのよ
楽になるために、このゲームを利用した
より自分が死にやすくなるために、ね
……死ぬために、ゲームをしていたの?
真澄……?
真澄、本当に死んじゃうの?
そだね
ほっといても数年しないうちに病死確定
今動いてるのが奇跡なくらいだから
とてとて寄ってきた文月の頭を撫でながら、私は言う。
速水は、それだけを聞いて合致がいったんだろう、私を見る。
あの言動は全部死ぬためだったのね?
死ぬために、あんな無謀なプレイをしていた
そう考えると、全部合致が行く
ご明察
あ、あいつのこととか本当だよ?
そこは嘘言ってないから
ただ、とっくに乗り越えてざまあみろって思ってるけど
首を傾げる文月に気にしなくていい、と私は笑いかける。
それから、私は全部のことを二人に明かした。
自分からゲームマスターに話を持ちかけたこと、自分の役目、全ての黒を把握していたことから盗聴のことも、隠していたこと全部を。
全部は、私が死ぬために行なっていた嘘
それが私の行動のすべての理由
そう言うと、二人とも微妙な顔をした。
文月は困ったような、速水は何かを考えるような。
それは、どうでもいい。もう、どうでもいいんだ。
納得した?
してもしなくても、とっととあんたらをここから出さないといけないから
それに小田の言うラストゲームなんてないよ
私が一人で片付けるから
よろよろと、彼女達は立ち上がる。
文月が、速水を支える形だ。
これで……脱出はできるだろうな。
うん、もうこれでいいや。
きっと、二人は大丈夫。
ブレスレットの効力には気を付けてね
これはあいつが用意したもんであってゲームは終わってる
爆発するおそれはないかもしれないけど、人様捕まえてこんなことさせる連中だから
気を付けてよね
不意打ち食らって生き延びた生命散らさないでよ
そう言って、私はこの館の出口は知っているか聞く。
この館は、窓に鉄格子などがある。
万が一、ドアが開かなくなったとかで脱出できないと思われたら困る。
二人を助ける。
そして私の望みを叶える方法なんて、これしかない。
首吊りした姉貴とやることは、同じか……。
双子ってのは同じことをするのかな。
まぁ、仕方ないか。
私は結局、最期までクソ野郎だった。
私は置いておいた、拳銃を手にする。
そして部屋の鍵を開けて振り返る。
あんた達と過ごした時間は、悪くなかったよ
少なくてもこんな行動を起こすぐらいには、楽しかった
裏切っておいて、こんなことを言えた口じゃないけど……さ
言わせて欲しいんだ
元気でね、二人とも
私のことは、忘れて
殺し合いなんてした記憶、覚えてないほうがいいから
私は、これでもう後悔はない。
未練はない。全部、本当のこと、いったんだから。
誰よりも勝手に振舞ったんだ。
その責任は、果たさないといけないんだ。
真澄……ダメだよ!
死んじゃうのはダメ!
それはいけないことだよ!
知ってて私達が黙って死なせると思う?
私がなんとかするわ、死ぬのはやめなさい
やっぱり、止められた。
方法はいくらでもあるとか、二人は説得するけど。
これしか方法がないんじゃなくて。
私が、こうしたいんだ。
だから。
聞き飽きたセリフをありがとう
悪いけど、止まらないよ
速く行きなよ
死ぬところなんて、見られたくない
友達とは言わなくても、一応知り合いなわけだし
安全装置は、はずれてる。
銃口をこめかみに押し付ける。
あとは、これで。
私は死ねる、あの子達は助かる。
こうしないと、あの子達はどうなるかわからない。
二人が喚く。
やめてって、ダメだって。
うるさいな。
こうしたいんだから、早く行ってよ。
これが一番なんだ。
それでもいかないなら……ッ!
行かないなら、勝手にして
このゲームは、私が終わらせるから
それじゃ、二人とも
………………
バイバイ
さぁ、私の人生と、このゲームを終わりにしよう。
指を、力込めて
私は、トリガーを引いた。
住吉っ!!
真澄ッ!!
……あれ、何があったんだ?
私、死んだはずじゃ……?
のんのん、死んじゃいないよ?
いや、死んだけどね?
でもキミ、面白かったからもう一度使うことにしたんだよ共犯者君
……は?
あんた生きてたの?
ってか、なに? 私を使う?
今度はこっちから、契約の持ち掛けよう
住吉真澄……僕と取り引きしないか?
受けるのならば
そうだね、キミの願いを……叶えてあげよう
願いを叶える?
それは……どういう意味?
それはまず、受けるかうけないか?
これにどう答えるかを聞いてから説明するよ
……私は。
…………。
私は……。
人狼ゲーム 狼を殺せ
END
人狼ゲームアクティブに続く