私は油島(ゆしま)みずき、
小学4年生!
絶賛恋愛中なの!
今日はあなたにだけ、
夏休みに起こったラブラブで
ミラクルな出来事を教えちゃうね!
明日から夏休みですが、
くれぐれも怪我のないように
過ごしてくださいね
はーい!
夏休みかぁ……。
明日からの予定決まってる?
うちは家族でハワイに行くよ
えー、いいなあ。
みずきちゃんは?
私はね……。
夏休みはずっと、
彼氏とデートなの!
みずきちゃんって彼氏いるの?
知らなかった!
ねえねえ、彼氏って誰?
うちのクラス?
ううん、別の学校。
みんなの知らない人だよ
別の学校なんてすごーい!
なんか大人って感じだよね。
どこで知り合ったの?
街を歩いてたとき、
彼に一目惚れしちゃったの。
それで告白したら
オッケーしてくれたんだ
さすがみずきちゃん!
みずきちゃんって可愛いもんね
えへへ。
そんなことないよ~
彼氏はなんて名前?
顔はどんな感じ?
背は高い?
学年は私たちと一緒?
まあまあ、落ち着いてよ。
ひとつずつ答えていくから
まず、名前は
水島 祐希(みずしま ゆうき)くん。
イケメンでスマートだし、
ヘアスタイルもかっこいいんだよ
へえー、いいじゃん!
それでね、
祐希くんの身長は175cmなんだ
えっ、175cm……?
小学生なのに
背が高すぎない?
誰が小学生なんて言った?
祐希くんは高校3年生だよ
ええー!!
高校生と付き合ってるの?
みずきちゃんすごくない?!
ふふん、まあね
みずきちゃんの彼氏、見てみたい!
ねえねえいいでしょ?
私も見たーい
しょうがないなあ。
これから会う予定だから、
ちょっとくらいならいいよ
やった!
楽しみー
ここで祐希くんと
待ち合わせてるんだ
噴水の前でデートの待ち合わせなんて、
ドラマや漫画みたい!
あっ、誰かこっちに向かって来る。
もしかしてあの人が祐希くん?
…………
そうだよ。
あの人が、私の彼氏
うそー!
ムチャクチャかっこいいじゃん!
2人っきりにしてあげる。
私たちは陰から見守ってるね
ありがとっ
…………
祐希くん……。
手紙、読んでくれたんだ?
誰かと思って来てみたら……。
またお前か
えっ(小声)
なんかおかしくない?(ヒソヒソ)
またうちの高校に忍び込んで
下駄箱に手紙を置いて
行っただろう?
あのお兄さん、
ちょっと迷惑そう(ヒソヒソ)
付き合ってるって
雰囲気じゃないよね(ヒソヒソ)
ねえ、
ベンチの陰に隠れてるそこのキミ達
は、はい!
バレてるし!
このガキから俺のこと、
なんて聞かされてる?
このガキじゃなくて、
ちゃんと名前で呼んでよ。
油島 みずきっていう
可愛い名前があるんだから
…………(イラッ)
え、えーと。
お兄さんのことは、
彼氏って聞きました……
ふう……。
やっぱりな……
お兄さんはみずきちゃんと、
付き合ってるんですよね?
勘弁してくれよ。
俺はこのガキの彼氏じゃない。
つきまとわれて
ウンザリしてるんだ!
またまたっ。
照れちゃってカワイイ!
どこに行ってもこいつが現れるし、
学校にまで乗り込んで来て
体操着を盗まれたこともあった
あの時はやばかった……。
高校の先生に見つかって、
警察に突き出されそうになったよ
なあ、キミ達……。
友達なら注意してくれよ……
みずきちゃん、
本当にそんなことしたの?
恋人とはいつも一緒に居たいし、
恋人の物なら何でも欲しいって
思うのは当たり前でしょ?
いい加減にしろ!
俺は小学生と付き合う趣味は無いって、
何度も言ってるだろ!
みずきちゃんの……
うそつき
えっ?
みずきちゃんのウソツキ!
彼氏なんて大嘘じゃん!
あ、だからこれは、
祐希くんが
恥ずかしがってるだけで……
そのお兄さん嫌がってるじゃん。
みずきちゃんがやってることは
ストーカーだよ?!
ストーカー……
ウソツキみずきちゃんとは
もう遊ばな~い!
私も絶交する!
バイバイ!
あっ……。
待ってよ、みんな……
…………
どうしよう……。
2人とも帰っちゃった……
わ、悪い。
こんな事になるとは思わなくて
そうだよ!
祐希くんのせいだよ!
あのなあ……。
元はといえば、
お前が嘘ついたのが悪いんだろ
でも、私が祐希くんを好きなのは
本当なんだもん……ぐすっ
待てよ、頼むから泣くな
祐希くんは私の初恋なんだもん!!
私の人生、祐希くん無しじゃ
考えられない!!
10歳が人生を語るなよ……
うるさいうるさいっ!
祐希くんが彼氏になってくれないなら、
死んでやるっ!
おいっ!
どこに行くんだ?!
お腹空いたから家に帰る
だったらそう言え!
紛らわしい!
(あーあ。
今日から夏休みだっていうのに、
祐希くんには振られちゃうし、
友達にも絶交されちゃった)
(私ってなんて不幸なの?。
こういうの悲劇のヒロインって
いうんだよね)
(こんな時は
ママにもらったお金で、
プチプラコスメを買って元気出そう)
(あ、ママから電話だ)
はーい、もしもし?
ちょっとみずき?
念のため言っておくけど、
お使いで渡したお金で余計な物買ったら
ママ怒るからね?
チッ
チッて何よ?
今、舌打ちしたわね?!
じゃーね、ママ。
電話切るよ
コラッ!
切るんじゃないみずき!!
プツンッ! ツー、ツー……
(あーあ。
プチプラコスメは買えないし、
心のスキマを何で埋めようかなあ)
……ん?
…………
(あそこに居るのは祐希くん!
なんて運命的なの?!)
ゆーうーきーくー……
あれ?
どっちの色が似合ってる?
どっちでもいいから
早く買えよ
(な、なんなのあの女……。
まさか、祐希くんの彼女?)
イヤッ!
信じたくない!!
ヤダヤダッ!
そんなの絶対にヤダーッ!!
……おい。
油島 みずき
きゃっ、祐希くん!
どうして私が居るのがわかったの?
大声出しながら
目の前まで転がってきたら、
嫌でも目につくだろ
祐希くん……。
私のこと心配してくれたんだ
なんでそうなる
なにー、この子?
知り合い?
一応知り合いだけど、
限りなく赤の他人に近い
祐希くん、冷たい……
ひどーい。
まだ子供なんだから
優しくしてあげなよ
さり気なくガキ扱いして
むかつくなこのババア
えっ?
今、なんか言った?
ううん、何も言ってない
うそうそ。
絶対なんか言ったでしょ?
言ったけど教えない!
何よー。
『さり気なくガキ扱いして
むかつくなこのババア』って
言ったことくらい、
教えてくれてもいいのに
聞こえてんじゃねーか
それにしてもババアってのは
ちょっとひどいな~。
これでも17歳なのに
なに?
大人の女っての自慢してるの?
別に自慢してないけど
見てなさい、10年後や20年後を!
私の若さに嫉妬する日がくるんだから!
アハハッ。
この子おもしろーい
面白かったか、今の?
祐希くんは私のもの!
あんたなんかに
絶対渡さないんだから!
あんたなんかって……。
私のこと?
そうよ!
勝手に彼女ヅラして、
祐希くんが迷惑してるのが
わかんないの?
お前がそれを言うのか
えーっ、私が彼女?
アハハハハッ!
ちょっとやめてよ、お腹痛い!!
な、何がおかしいの?
私はコイツの、妹。
彼女じゃないよ
い、も、う、と……?
あー、言っちゃった。
彼女って誤解したままなら、
こいつが諦めたかもしんねえのに
祐希くんの妹さんなんですか?!
どうりで見目麗しいと
思いました!!
手の平返し早っ
やだ、見目麗しいなんて。
すごくいい子じゃない?
ねえお兄ちゃん、
付き合ってあげなよ
(ナイス妹!)
勘弁してくれよ……。
俺をロリコンにしたいのか?
年の差カップルなんて、
イマドキ珍しくないよ
もうこいつには
何を言っても無駄だ。
帰るぞ、優奈
申し遅れましたが、
私は油島 みずきです。
将来、お兄様の妻になるために
花嫁修業中です!
私は優奈(ゆうな)。
よろしくね、みずきちゃん
はいっ!
お前ら俺を無視するな
よかったら
メールアドレス交換しない?
いいんですか?
やったー!
おいコラ。
なに友達になってんだ
そういえばお兄ちゃんの
アドレスは知ってるの?
知りません……。
何回も聞いたけど
教えてくれないんです
そうなんだ。
じゃ、今メールで送るね
そこまでしてもらって
いいんですか!?
駄目に決まってんだろ
送信……っと
あっ、届きました!
ありがとうございます、
お義姉さん!
ひどい個人情報漏洩の瞬間を見た
ふふっ、お義姉さんかあ。
いい響き……
(今日は祐希くんの妹と
友達になっちゃった)
(祐希くんのアドレスもゲットしたし、
大収穫っ。
これからは毎日メールしよ~)
あの子、使えそう……
悪いけどお義姉さんが、
みずきちゃんの身体を
利用させてもらうよ
崇高なる研究のために!