最終章


結末




青山通を走り抜けるパトカー。

運転する草野。

後部席に花園と真希子。

ケースの指輪を眺める真希子。

真希子

思い出しました。彼と出会った時にした会話

花園

どんなお話?

真希子

ハートのマークを一番最初にデザインした人って誰だろうねって

花園

は!そういえば。全然考えた事なかったわ。あー、気になってきた

真希子

心臓の形から来てるだろうなとも感じるし、もしかしたら二つの何かがいびつだけど一つになっているようにも見えるじゃないですか

花園

たしかにそうね

真希子

どれにしても、愛の原型をしっかり具現化した、最高のデザインだと思うんです。いつかこれを越えるデザインをして世界に名を残したい、若い頃はよくそんな事を言っていました。私は彼の才能ならきっと出来る、本気でこの人を歴史に残る人物にしよう、そう思ったんです

花園

素敵だわ

真希子

いつからでしょう。彼への愛と憧れの歯車が噛み合わなくなってたんです。そのズレがあの殺意に変わっていったのだとしたらと考えると私は…私のして来た事は一体何だったのかって考えてしまいます

花園

罪は時間をかけて償いましょう。でも忘れないで。あなたと直也さんには確かに愛し合った時が…愛のデザインがあったという事を


慟哭する真希子を抱きしめる花園。

南青山警察署の正門前で止まるパトカー。

草野

いいっすよ、後は俺がしておきますんで。先上がって下さい

花園

うん、お願いね


署に向かう真希子と草野。

足早に反対方向へ去る花園。

真希子

花園さん!私…

草野

振り返っちゃダメだ。男は女に涙を見られたくないモンさ


ハンカチを顔に当てながら
グシャグシャに泣いて歩く花園。


公園の端に止まるスポーツバイク。

ブランコで小刻みに肩を震わす
花園の隣にやってくる草野。

草野

いい加減直したらどうです?その逮捕した後に泣くクセ

花園

ごめんなさいね、努力してるんだけどどうも…歳かしら?

草野

あと前から思ってたんですけど、それって何泣きっすか?

花園

草野ちゃん。これだけは覚えておきなさい。乙女の涙の理由を聴く事ほど野暮な事はなくってよ?

草野

あそう、乙女(笑)…とにかく、泣くなよ為五郎

花園

やかましい!風で涙切ってくらあ!!


マウンテンバイクに跨って走り出す花園。

タバコに火をつける草野。


The End

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