魔王を倒した勇者たち一行は、それぞれ平和な生活を送っていた。

魔法使い

師匠。この薬はどう、売れそう?

青い薬の入ったビンを指さして魔法使いは師匠に尋ねた。

師匠

うーん、これは無理だな。

魔法使い

ええー!?あたしの最高傑作だよ!

師匠

魔物はもうほとんどいなくなってるんだ。そんな世の中に魔力を無効化してもな。

魔法使い

……ほかのは。

少しテンションを落としながらも、旅で使ってきた薬を並べながら魔法使いは言った。

師匠

副作用がなくなれば売れそうな物もあるが…基本的魔力に対しての薬ばかりだからな。

魔法使い

もう!金勘定ができない癖に文句ばっか言って!

師匠

それは関係ないだろ!

玄関先から控えめなノック聞こえ、一人の兵士が現れた。

あの、魔法使い様はこちらにいらっしゃいますか?

魔法使い

なーに。あなただれ?

剣闘士

なあ先生、直さなきゃダメなのか。

騎士

当たり前だ。騎士とは仕える者に敬意を表さなくてはならない。まずはその口調を直せ。

女勇者の騎士に、騎士としての礼儀を習っている剣闘士は、ひたすら面倒そうな顔をしていた。

剣闘士

どう直すんだよ。

騎士

直せばいいのでしょうか、だ。

剣闘士

…直せばいいのでしょうか。

騎士

そうだ、そうやって習慣づけていけ。

剣闘士

先生!わたしは別に口調を変えるために騎士になったわけじゃねえよ!

騎士

強いだけで騎士が務められると思うな!

剣闘士

うえー。

そこに気真面目そうな兵士がやってきた。

失礼します!剣闘士様はこちらにいらっしゃるでしょうか!

剣闘士

ん?わたしだけどなんだ。

勇者!俺と勝負しろ!

勇者

…なんで。

町を歩いていた勇者は一人の男に絡まれていた。

魔王を倒したらしいお前を倒して、女の子にモテモテになるためだ。

勇者

別にオレ一人の力で倒したわけじゃないんだがな。

お前以外は全員女の子だったって聞いた。俺は女の子と戦う趣味はない。

さあ勇者!剣をとって俺と戦え!

騎士

……勇者。

二人の間に割って入るように騎士が勇者に声をかけた。

勇者

騎士、どうしたこんなところで。

騎士

……話がある。来てほしい。

勇者

わかった。

ちょっと待て勇者!

慌てたように勇者を呼び止める男。

勇者

なんだ…。

その子は誰だ。

勇者

騎士だ。一緒に魔王討伐に行った仲間だ。

こんなかわいい子とだと!絶対に許さないぞ勇者!

勇者

何で怒られてんのオレ。

騎士

……うるさい、私は勇者に用事がある。

は、はい。

騎士がすごむと怯えたような表情で男は返事をした。

騎士

行こう。

今に覚えてろよ勇者!

騎士

……。

うひい!

女勇者

ここはこう…いや、こうですかね…。

魔法使い

なにやってんの女勇者。

何かものを書いている女勇者に女勇者の魔法使いは声をかけた。

女勇者

自伝を書いているんです。

魔法使い

自伝?

女勇者

はい。平和な世の中になってしまった以上、私の英雄伝を伝えるには私の活躍を記すしかありません。

女勇者

私が魔王を倒していれば…、しっかりと伝説が語り継がれていったのに。

獣娘

あるじあるじ、どんなこと書いてるの?

獣の耳の生えた娘が屋根の上から飛び降りてきた。

女勇者

ああ、戻ったんですか。

獣娘

ただいまー!

魔法使い

しかし、帰りにまた変なのを拾ったな女勇者は。

女勇者

ちょうど情報収集役が欠けていましたからね。あの片眼鏡くんより獣娘のほうがよく働いてくれますし。

魔法使い

にしても意外にいる者なんだな、魔力を得た人間って。

女勇者

私も強くなれるのならほしいですけどね。

獣娘

それよりあるじー!なんか変な噂を聞いたよー!

女勇者

変な噂?

獣娘

なんか機械がどうとかって町で話してた。

魔法使い

なに一つわからないぞ、それ。

女勇者

いえ、これは何かあるかもしれませんよ。

女勇者

獣娘。引き続き情報収集をよろしくお願いします。

獣娘

かしこまったー!

獣娘はぴょんと屋根に飛び乗ると、身軽に屋根を飛び移っていった。

女勇者

さて、では私たちも騎士さんの元に行きましょうか。

魔法使い

ええー!これから姐さんのお店に戻る予定なんだけど。

女勇者

そんな暇はありません!手伝いもしばらくは禁止です!

魔法使い

そりゃねえよ…。

ええええええええ!お父様操られていたんではなかったんですか!?

城では姫がいつものように騒いでいた。

いつも騒いでなんかいません!

私はなにも知らない。

魔法使いにそう言うように、私が頼んだんだ。

じゃあなんで私の同行を許可したんですか!

怒りの表情の姫に対して、王は真剣な表情で向かい合う。

姫よ。いつかはお前も王女となる。そのためにはいろいろな経験をしておくべきなんだ。

これもお前のためなんだ。

魔物にされたり、魔王に誘拐されたり、変な薬一杯飲まされることもですか?

もちろんだ。

絶対違います!

姫が親子喧嘩をしていると騎士が勇者を連れてやってきた。

騎士

王様、失礼します!勇者を連れてきました!

勇者

騎士、王のところに連れてきていったい何の用だ。

騎士様?それに勇者様まで。

ご苦労、騎士。

勇者

王、直々の呼び出しとは、いったい何の用ですか。

勇者よ。其方のおかげで世界に平和が訪れた。

勇者

はい。

魔物の数も減ってきている。しかし、機械の兵士からの被害が、このところ多く報告されるようになったのだ。

勇者

機械?

ああ。ここらの町ではあまりないが、遠くでは生活に使われている技術らしい。

魔物がいなくなったが、またも世界の平和を乱そうとするやつが現れている。

勇者

………。

勇者よ!この機械の兵士たちを倒し、世界を平和にしてくれ!

勇者

わかりました。必ずや平和を取り戻してみせます。

勇者

それで仲間たちには。

もう報告は済んでいる。そろそろ来る頃だろう。

そう言った頃、外からどたどたと足音が近づいてきた。

剣闘士

勇者!先生がうっさいんだ!やっぱりお前と旅してたほうがいい!

魔法使い

なんかまた変なのが出てきたらしいね。また薬の実験ができそう。

騎士

……平和のためなら手伝うぞ、勇者。

勇者たち一行が揃い、勇者は一呼吸つき彼女らに言った。

勇者

よし、早速出発するぞ!

勇者様、頑張ってきてくださいね!

勇者

なに言ってるんだ姫。行くぞ。

行きません!なんでまた行かなきゃならないんですか!

姫よ、行って来い。

お父様!

勇者

王の許可も下りた。行くぞ!

勇者は姫の手を取り走り出す。

ちょっと勇者様!引っ張らないで!

勇者

置いてくなって言ってただろ。

今は置いてってもらったほうがうれしいです!

勇者

今回はしっかり手を引いてやるからな。

なんで私まで一緒に行くんですかー!

こうして新たに現れた平和を脅かす存在を倒すため、勇者たち一行はわがまま姫を連れて、新たに旅立とうとしていた。

私が勇者とともに旅をする

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