第二話

ハイド・アンド・シーク



表参道ヒルズの街道を颯爽と歩く真希子。


セレクトショップ“プラスマイナスゼロ”にやってくる。

白とオレンジを基調にしたシンプルなデザインの空間。棚に飾られたデザイン性の高い商品を手に取り、眺める真希子。女性店員がレジにポイントカードを通す。

店員

ポイントはご使用になられますか?それともお貯めになられますか?

真希子

使います

店員

かしこまりました

後藤の書斎。

片手でドーナツを食べながらデザインの作業を進める直也。


突如テーブルから床にこぼれる紅茶。それは直也が咳き込んで膝から崩れた反動であった。

地を張ってもがき苦しむ直也。咳き込み続けながらムネポケットをさぐる。

直也

な、無い!真希子―ッ!!薬ッ、薬くれよゴホッ!!

   部屋中を暴れまわって探す直也。

その頃、真希子は表参道“モンスーンカフェ”にいた。
東南アジア系の異国情緒溢れる空間で悠々とタピオカを飲みながら、ノートパソコンで仕事を始める真希子。
画面には翔泳社の会社ロゴデザインを明南学園のロゴに修正している。

這って真希子の部屋のドアまでやってくる直也。何度もドアをノックしたりドアノブを回すが開かない。

直也

真希子!!助けてくれ!薬が、息が!!死ぬ!


ドアにこぶりつくドーナツのソース。
それから間もなくしてドアを殴る音と直也の怒声は消えた。



時計を見て、パソコンを閉じる真希子。


真希子

すいません。お会計お願いします

直也

真希子


部屋前で絶命している直也を真希子は引き摺ってリビングに移動する。


窓から差し込む夕日。直也が散らかした部屋を片付けている真希子。

真希子

!!


予想よりやや早いあずみの帰宅に慌てて自分の部屋に隠れる真希子。

あずみ

あり?空いてる。ただいまでーす


コートを掛け物にかけ、部屋奥に進むあずみ。

彼女が去った後、こっそり自分の部屋から出てくる真希子。
手袋で拭いてからコートのポケットに薬のビン、バッグにスケッチブックを忍ばせて再び家を出る。


そんな真希子の暗躍など気づきもせず、あずみは固くなった直也を見て予定調和のリアクションをとる事になる。

あずみ

きゃああああああ!!!直也さーん!!


後藤のマンション前に止まるパトカーと数人の野次馬。


スポーツバイクに乗ってやってくる細身の男が一人。バイクを電柱にチェーンで止めているところを警官がやってくる。

警官

ちょっと君

はい、何か御用ですか?

警官

ここの住民の方ですか?申し訳ないですか今はちょっと

ヘルメットを取る男。それはこの物語の主人公花園為五郎であった。

花園

申し送れまして~、私南青山警察署第四課の花園と申します。(警察手帳取り出して)はい、この印籠が目に入らぬか~ってね。うふふ

警官

…はあ、これは失礼いたしました。えー、花園ためご…

花園

下の名前で呼ぶんじゃねえ!!

警官

…はあ、重ね重ね失礼致しました。
 (トランシーバーで)現場、花園警部お見
 えになりました

花園

あのちょっと待って下さるかしら?すいませんトイレはどこかしら?5分少々お時間いただける?汗かいちゃったからお色直しを少々…

警官

はあ…あちらの公園になります

花園

はい、ごめんあそばせ。それではまた後ほど

内股で颯爽とトイレに向かう花園。

next to go

第二章 ハイド・アンド・シーク

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