魔王を追いかけていた勇者と姫は、アジトの奥深くにある祭壇のようなところに来ていた。

魔王

さて、この辺でいいかな。

勇者

もう逃げ場はないぞ魔王!

魔王と対峙する勇者。いよいよ最終決戦が始まろうとしていた。

はあ…はあ…。勇者様…何度も言ってますが…置いていかないでください…。

姫の空気の読めなさもいよいよ極まってきていた。

敵アジトで一人置いて行かれる身にもなってください!

私はなにも知らない。

魔王

逃げてたわけじゃないさ。君たちをここに連れてきたんだよ。

勇者

なに?

魔王

ああも人が多くて騒がしくちゃ最後の戦いにしては華がないからね。

魔王

ここならぴったりだ。

ここはいったい…。

魔王

ボクが魔王になった場所、とでも言えばいいかな。

勇者

魔王になった?

勇者様、魔王は元人間なんだそうです。

裏切りの記憶はなくてもそういう記憶はある、都合のいい頭を持つ姫は言った。

本当に覚えてないんです!

私はなにも知らない。

勇者

人だったやつが何で人を滅ぼすようなことを!

魔王

それは姫様と散々話したからいいよ。

魔王

そうだね、戦いの前に一つ話でもしようか。

話ですか?

魔王

魔力の存在とボクの存在について。聞いてくれるかな。

そんな重要そうなことを…。

勇者

……。

勇者が黙っているのを肯定と見た魔王は語り始めた。

魔王

ボクは昔科学者だったんだ。まあ、極秘の研究をしていたから世間的に知られていたわけじゃなかったんだけど。

魔王

ある日、研究中にあるエネルギーが検出されたんだ。それが魔力。

魔王

仲間たちは生活水準が上がるとか言ってたけど、そんな小さなことに使うなんておかしいと思ったんだよね。

魔王

だからその研究に関わった人たちをみんな殺して、場所をここに移してボク一人で研究を続けたんだ。

そんな…。

勇者

お前!

魔王

待って待って、まだ続きがあるんだから。

魔王

その結果無事に魔力のコントロール方法を見つけて効率的な生成方法もできた。

魔王

でも、その生成方法がやっかいでね。なんと人間が媒体にならないといけなかったんだよね。

魔王

魔法とか機械とかで代用できるか試したけど、どうもうまくいかない。でもこんな力を他人に仕掛けるのは危険すぎた。

魔王

だからボク自身をその媒体にした。これで魔力を生み出しコントロールできる魔王の完成というわけだ。

魔王

さて、そういうわけで魔物に魔力を与えているのはボク。その魔力を生み出しているのもボクってわけだ。魔物を消すにはボクを殺すしかない。

魔王

どうだい?いい展開だろ。

勇者

つまりお前を倒せば魔物は消えて、もう魔物は現れないというわけだな。

魔王

各魔物が持つ魔力がなくなるまでは存在するけど、まあそういうことだね。

勇者

なら魔王を倒して世界を平和にするだけだ!そのためにオレたちはここまで来た!

魔王

それでこそ勇者だ。さあ、最後の戦いを始めようとしようか。

明かされた魔王の過去、そして揺るがない信念を持つ勇者、正直必要かわからない姫。彼らの運命をかけた最後の戦いが今始まる。

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