ん、どうしたの?
なんだかちょっと顔色悪いよ

うさら

そ、そうかな?

うん、そうだよ
具合悪そう。保健室行く?

うさら

うん、じゃあそうしよかな……

うさら

今、『ひいな』だよね
じゃあ、泊ったことはきっと……

わかった
じゃあ、行こっか

うさら

ありがと

ひいな

あんまり具合が悪いなら、先生に言って帰ってね

うさら

わかった

ひいな

じゃあ、私戻るね

うさら

れいな……

ひいな

何?

うさら

昨日の夜、何してた?

ひいな

え、どうしたの?

うさら

ちょ、ちょっと気になって

ひいな

熱はなかったけど……ヘンなうさらちゃん

ひいな

昨日の夜は家でゆっくりしてたよ
まあ、いつものことだけど

うさら

そっか、ありがと

ひいな

……?
じゃあ、戻るね
無理はしないこと、わかった?

うさら

うん、わかってる

うさら

そっか、『ひいな』も泊ってないことになってるんだ
それぞれの『れいな』でズレが出てきたんだ

うさら

ホントに、ゆうかが言ったようなことになるのかな……
でも、確かにこんなのあっていいことじゃないもんね

うさら

でもだからって、どうすればいいのかなんてわからないよ……ッ!

うさら

はあぁ……

うさら

ん?

窓に何かが打ち付けられるような音がして、うさらはベッドのカーテンを開いて確かめる
すると

うさら

こ、これ……あられ?

うさら

いや、違うあられなんかじゃない……これって……

窓を開け、手を出してその空から落ちるものを受け取ってみる

うさら

痛ッ

痛みが走ったかと思えば、指にうっすらと切り傷のあとができた

うさら

これ、ガラス……?
ガラスが空から降ってきてる?

うさら

な、なんで⁉

うさら

それに外のみんな、全く気づいてない……ケガもしてない……

うさら

あんなにいっぱい落ちてるのにッ!

うさら

世界だ、世界のズレのせいだ……絶対……

うさら

と、とにかく『れいな』にこのことを言って、それでなんとかならないかな
こう本人が気づけばどうにか

それはやめておいた方がいいな

うさら

だ、誰ッ?

いつな

はじめまして、うさら

うさら

れいな……

うさら

じゃない

いつな

さすがキミ
『四人のれいな』を判断できるだけある

いつな

オレはこの『れいな』の身体を借りてキミと話している
そしてオレはそうだな……『いつな』と名乗っておこう、わかりやすくな

うさら

い、『いつな』……

いつな

オレの名前はキミでは聞き取れないし、発音もできない。だからさ
さ、キミが呼んだのだ。訊きたいことがあるんだろう?

うさら

あたしが……呼んだ?

いつな

そうだ
この現象について悩んでいるのだろう?

うさら

なんか、嫌なヤツ

いつな

ふ、表情に出やすいなキミは
まあ、どう思われてもオレはいい

うさら

ぐっ……
この現象について知ってるのね

いつな

もちろんだ
ふふ、オレがやっていることだからな

うさら

えっ?

いつな

キミの言う、『四人のれいな現象』というのは、オレが起こしていることなのだよ

うさら

あんたァ……ッ

うさら

まあ、いい
まずは話を聞かせてもらう

いつな

ほう、なかなかに賢しいじゃないか
こちらも機嫌が良くなるな

いつな

さて、と
オレがこの現象を起こした理由だが……まあ、実は世界の数を削減しようという動きがあってな

うさら

世界を……削減?

いつな

そうだ
世界はここ一つだけではなく、かなりの数が存在している
だが、最近少し多すぎるということになってな、数を減らすことにした
管理も大変なのだ、世界一つ一つのな

いつな

管理者どもは仕事がなくなると言って、大反対だったがな
それでもどうにもならないことはあるものだ

うさら

あんたも、その管理者?

いつな

ああ
だがオレはかなり上のクラスの者だから、仕事がなくなることもなければ……

いつな

こうして大きな干渉をすることだってできる

うさら

それで、どうしてこんなことになるワケ?

いつな

ふふ、オレの管轄の一部に四つの世界がある
それがキミの言う、『ひいな』『ふうな』『みいな』『よおな』のいる世界だ
そしてキミ、うさらにその四人の世界へと飛べるようにしたのだ

いつな

キミは気づいていなかったが、キミがそれぞれ四人のいる世界へと足を踏み入れていたのだ
そしてオレの力によって、ズレがないように調整していた
だからどの『れいな』でも基本的な流れは変わらなかった

うさら

そういうことも聞きたかったけど、それだけじゃない
理由は?

いつな

ふふ、選ばせてやると言っているのだ

うさら

はあ?

いつな

キミに選ばせてやろうと、決めたのだ
たまたま当たっただけだがね

うさら

何言ってるのかさっぱりだよ

いつな

ふふ、この『四つの世界』の内、『三つ』を解体するように言われている
すれば意味はわかるんじゃないか?

うさら

あんた……ッ!

いつな

ふふ、そういうことだ賢しいキミよ
キミが選んだ世界だけを残し、他は解体する
そう、四つの世界の選択者になったのだ

いつな

そして時間制限もある
それを過ぎても決定できなければ、四つすべての世界を解体する
さっき降ったガラスはその予兆だ

いつな

ふふ……一つの世界を選んで他を解体するか、すべてを解体するか
それはキミに任せよう

いつな

期限はキミたちの言う、三か月と少し

うさら

三か月……

いつな

ふふ、しかしこれはオレが力を与えてから進んでいる
だから残り『一週間』だぞ、キミ

うさら

なッ……卑怯!
もっと早く教えなさいよ!

いつな

ふふ、この方がより楽しめると思ったんでな

うさら

こいつッ!

いつな

ふふ、いいぞそういうのが見たかったのだ
さあ考えろキミ。まだまだ一週間もあるのだぞ、答えは出るだろう

いつな

では、また会おう
楽しい一週間を過ごすことだ、可愛いうさら

うさら

なッ、消えた……

うさら

ちっ、何が世界よ……ふざけたこと……

うさら

でも、これまでずっとヘンな事が起きていたから、ウソじゃないんだよね……

うさら

あたしが、世界を滅ぼすかどうか決めろって……

うさら

そんなのッ!

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