窓に何かが打ち付けられるような音がして、うさらはベッドのカーテンを開いて確かめる
すると
ん、どうしたの?
なんだかちょっと顔色悪いよ
そ、そうかな?
うん、そうだよ
具合悪そう。保健室行く?
うん、じゃあそうしよかな……
今、『ひいな』だよね
じゃあ、泊ったことはきっと……
わかった
じゃあ、行こっか
ありがと
あんまり具合が悪いなら、先生に言って帰ってね
わかった
じゃあ、私戻るね
れいな……
何?
昨日の夜、何してた?
え、どうしたの?
ちょ、ちょっと気になって
熱はなかったけど……ヘンなうさらちゃん
昨日の夜は家でゆっくりしてたよ
まあ、いつものことだけど
そっか、ありがと
……?
じゃあ、戻るね
無理はしないこと、わかった?
うん、わかってる
そっか、『ひいな』も泊ってないことになってるんだ
それぞれの『れいな』でズレが出てきたんだ
ホントに、ゆうかが言ったようなことになるのかな……
でも、確かにこんなのあっていいことじゃないもんね
でもだからって、どうすればいいのかなんてわからないよ……ッ!
はあぁ……
ん?
窓に何かが打ち付けられるような音がして、うさらはベッドのカーテンを開いて確かめる
すると
こ、これ……あられ?
いや、違うあられなんかじゃない……これって……
窓を開け、手を出してその空から落ちるものを受け取ってみる
痛ッ
痛みが走ったかと思えば、指にうっすらと切り傷のあとができた
これ、ガラス……?
ガラスが空から降ってきてる?
な、なんで⁉
それに外のみんな、全く気づいてない……ケガもしてない……
あんなにいっぱい落ちてるのにッ!
世界だ、世界のズレのせいだ……絶対……
と、とにかく『れいな』にこのことを言って、それでなんとかならないかな
こう本人が気づけばどうにか
それはやめておいた方がいいな
だ、誰ッ?
はじめまして、うさら
れいな……
じゃない
さすがキミ
『四人のれいな』を判断できるだけある
オレはこの『れいな』の身体を借りてキミと話している
そしてオレはそうだな……『いつな』と名乗っておこう、わかりやすくな
い、『いつな』……
オレの名前はキミでは聞き取れないし、発音もできない。だからさ
さ、キミが呼んだのだ。訊きたいことがあるんだろう?
あたしが……呼んだ?
そうだ
この現象について悩んでいるのだろう?
なんか、嫌なヤツ
ふ、表情に出やすいなキミは
まあ、どう思われてもオレはいい
ぐっ……
この現象について知ってるのね
もちろんだ
ふふ、オレがやっていることだからな
えっ?
キミの言う、『四人のれいな現象』というのは、オレが起こしていることなのだよ
あんたァ……ッ
まあ、いい
まずは話を聞かせてもらう
ほう、なかなかに賢しいじゃないか
こちらも機嫌が良くなるな
さて、と
オレがこの現象を起こした理由だが……まあ、実は世界の数を削減しようという動きがあってな
世界を……削減?
そうだ
世界はここ一つだけではなく、かなりの数が存在している
だが、最近少し多すぎるということになってな、数を減らすことにした
管理も大変なのだ、世界一つ一つのな
管理者どもは仕事がなくなると言って、大反対だったがな
それでもどうにもならないことはあるものだ
あんたも、その管理者?
ああ
だがオレはかなり上のクラスの者だから、仕事がなくなることもなければ……
こうして大きな干渉をすることだってできる
それで、どうしてこんなことになるワケ?
ふふ、オレの管轄の一部に四つの世界がある
それがキミの言う、『ひいな』『ふうな』『みいな』『よおな』のいる世界だ
そしてキミ、うさらにその四人の世界へと飛べるようにしたのだ
キミは気づいていなかったが、キミがそれぞれ四人のいる世界へと足を踏み入れていたのだ
そしてオレの力によって、ズレがないように調整していた
だからどの『れいな』でも基本的な流れは変わらなかった
そういうことも聞きたかったけど、それだけじゃない
理由は?
ふふ、選ばせてやると言っているのだ
はあ?
キミに選ばせてやろうと、決めたのだ
たまたま当たっただけだがね
何言ってるのかさっぱりだよ
ふふ、この『四つの世界』の内、『三つ』を解体するように言われている
すれば意味はわかるんじゃないか?
あんた……ッ!
ふふ、そういうことだ賢しいキミよ
キミが選んだ世界だけを残し、他は解体する
そう、四つの世界の選択者になったのだ
そして時間制限もある
それを過ぎても決定できなければ、四つすべての世界を解体する
さっき降ったガラスはその予兆だ
ふふ……一つの世界を選んで他を解体するか、すべてを解体するか
それはキミに任せよう
期限はキミたちの言う、三か月と少し
三か月……
ふふ、しかしこれはオレが力を与えてから進んでいる
だから残り『一週間』だぞ、キミ
なッ……卑怯!
もっと早く教えなさいよ!
ふふ、この方がより楽しめると思ったんでな
こいつッ!
ふふ、いいぞそういうのが見たかったのだ
さあ考えろキミ。まだまだ一週間もあるのだぞ、答えは出るだろう
では、また会おう
楽しい一週間を過ごすことだ、可愛いうさら
なッ、消えた……
ちっ、何が世界よ……ふざけたこと……
でも、これまでずっとヘンな事が起きていたから、ウソじゃないんだよね……
あたしが、世界を滅ぼすかどうか決めろって……
そんなのッ!