……そのころ
ゲルマニア月面帝国は月都
モーントシュタットの城
ヴォルフストゥルムにて。
おはようございます!
おはようございます、
レンくん。
今起こしてくるから、
ちょっと待っててね。
はい!
カケトー、起きなさい
レンくんが迎えに来てくれたよー
ぇー……まだ眠いよ…
なんか変な夢見たし…
……そのころ
ゲルマニア月面帝国は月都
モーントシュタットの城
ヴォルフストゥルムにて。
掛けよ、オスカー。
はいっ! 父上!
しつれいします。
「夢の」、――「庭」
確かそう言ったか。
先週の夢で、そこに
立ち入ったのだな?
はいっ! 父上!
すごいんですよ、すご
いんですよ!
たーくさん人がいて、
みーんなみん――
オスカー。
はい、父上。
ならばトイファイトに
参加できる。
それの実況中継が世界
で注目されている。
試合に勝てばよき宣伝
となる。
わかるな、オスカー。
はい、父上。
そなたももう六つ。
ヴォルフスケーニヒの
男なら、初陣を飾らね
ばならぬ。
だがそなたは幼き日の
余に似て、あまりにも
柔和だ。戦場に出るに
は尚早。
はい、父上……
ゆえにトイファイトで
戦いというものを学ぶ
のだ。
はい! 父上!
ぼく、がんばります!
よくぞ言った!
余は!
そなたを!
誇りに思う!
我が社の玩具部門を、
本日付で子会社化した
株式の過半数はそなた
のものだ。
これを使い、物具を調
えよ。
また必要とあらば、他
の事業部門にも技術協
力させる。
ありがたきしあわせ!
父上! ありがとうご
ざいます!
うむ。
そしてもう一つ、忘れ
てはならないことがあ
る。
今のそなたはヴォルフ
ス・シュピールツォイ
ゲ社の主である、とい
うことだ。人を率いる
者が持つべき徳と格、
そして責任を持たねば
ならぬ。
はい、父上……
父は、そなたなら理解
できると信じておる。
ヴォルフスケーニヒの
男にふさわしいいさお
しを挙げるのだ!
家訓、朗誦!
は、はい!
『獰猛なるヴォルフスケーニヒよ、勝利は義務なり。其は支配の土台なれば。
峻厳なるヴォルフスケーニヒよ、支配は美徳なり。其は下民を安らわすゆえに。
比類なきヴォルフスケーニヒよ、暴虐を自在にせよ。狼の法こそ不滅の法なれば』
よろしい。
勝利せよ! 勝利ある
のみだ、オスカー!
勝利はそなたを正しく
する。
己を信じよ!
そなたには貴き血が、
紀元前より続くゲルマ
ニア貴族、ヴォルフス
ケーニヒの血が流れて
おるのだから!
はいっ! 父上!
ぼくは、ぜったいに、
ぜったいに、ぜったい
に、トイファイトで勝
利します!
勝利をあなたにささげ
ます、父上!