ウヒヒヒ! さすがの名推理だな!
全裸大五郎よ!
ふむ……ここが…………
そうです警部、ここが……
……
普通の……
ええ、普通の……
典型的な……
とうふ工場だな
ええ、そうですね
どこにでもある。ふつうのとうふ工場です
本当にここで密室殺人が起こったのか?
信じられん
こんな、ありふれた下町のとうふ工場で……
本当ですね。こんな平和な感じのところで……
密室殺人が起こるなんて……
被害者は豆腐屋のご主人のようですね
大豆倉庫の奥で亡くなっていました
大豆倉庫の扉は、三重のロックのかかった厚さ1メートルの鉄扉です
ふむ、死因は磔(はりつけ)か、ひどいな
善良な豆腐屋の主人を殺すなんて……
いったい犯人はどこに?
ちょっとちょっと!
あ、全裸大五郎だ
全裸大五郎じゃないか、どうしたんだ。
とうふを買いに来たのか?
違いますよ!
たまたま通りがかったんです
そうか
そんなことはどうでもいいですよ!
あなたたち気が狂ってるんですか?
ドラッグでもやってるんじゃないですか?
まあ、ひどい
われわれは警察だぞ
よく回りを見てくださいよ!
ここのどこが普通のとうふ工場なんですか!
え、意味がわからない
どう見てもふつうの下町の工場でしょ
明らかにもっと特殊な施設でしょ!
この富士の樹海の奥地にある地下工場は!
ほら。うしろを見てください。背景を
背景とか言うなよ
なんですかこのモニタとコンソールは
それは豆腐と豆乳を守るためのセキュリティ・システムだ。決まってるだろう
今どきのとうふ工場では常識だぞ
じゃあ、なんですかこの怪しげな装置は!
これは豆腐を作るための「にがり」を水に溶くための装置だ。
にがりを水に溶くために指紋認証がいるのかよ……
……
……あかん
この人たち、マトモじゃない
完全にここを豆腐工場だと思い込んでいる
これはおそらく催眠術……
あきらかに「組織」から僕に向けて送り込まれた「刺客」の「能力」……。
とはいえ、ここで密室殺人が起きたのは事実らしい……
こうなったら……ぼく一人で……
ほら、見てみろ、あそこにおからがたくさんあるじゃないか
あっ、本当だ。おからですわね
……えっ?
げえっ、溶岩!
密室の奥からマグマがあふれてきている!
いけない! この工場はもうマグマに飲み込まれようとしている! はやく逃げないと
わーい、おからだー
警部! 正気に戻ってください! 早く逃げないと!
あっ、あそこにとうふもある!
あっ、ほんとだ!
死体の横にとうふがあるぞ!
えっ
くっ……今度は何だ?
げえっ、とうふだ!
くっ、ついに僕まで催眠にかかったのか……
……いや、待てよ……
ぼくの推理が正しければ……
このとうふの中には……
……
やはり! もうひとつ死体が!
おそらくこの子が……
おい! 全裸大五郎!
これはどういうことだ!
いったい何なんだ? この溶岩は!
あっ警部! 正気に戻ったんですね!
すでに密室の謎は解けました
この、豆腐の中からでてきた死体が、第一の殺人の犯人です
……
彼女は男をハリツケにして殺したあと、扉を内側から閉めました
そこにたまたま溶岩があふれてきたのです
ところで警部、どじょう鍋ってご存じですか。豆腐の
ああ、あのどじょうを生きたまま煮て、そこに豆腐を入れるとどじょうが豆腐に逃げ込んで、そのままいっしょに煮えるって料理か
まあ残酷
そう、それと同じです
マグマのせいで室内が熱くなってきたため、彼女はたまたま近くにあった豆腐にもぐりこんだのです
そしてそのまま煮えてしまった……
扉をあけて外に出ればよかったんじゃないか
たぶん頭が悪かったのでしょう
ムチャクチャな推理だな……
お前、ドラッグでもやってるんじゃないか
失礼な!
ウヒヒヒ! さすがの名推理だな!
全裸大五郎よ!
げえっ、また変なのが来た
オレの名は、殺人大好き催眠ピッグマン!
貴様の息の根を止めにきたぜ! 全裸大五郎!
くっ、組織からの刺客か……
オレの必殺の催眠音波で
貴様を操ってやるぜええええええ!
射殺しろ
あっ、はい
グワアアアアア!
ウッギャアアアアアアア!
ギャアアアアア!
至近距離で三発も撃たれて
致命傷を受けたあああああ!
…………
…………死んだ
まあ、能力者って言ったって
撃たれれば死ぬよな……
銃つよい……
ここは熱くて危険だ! 逃げるぞ大五郎!
近くに手頃なレインボーブリッジがあります! そこに逃げ込みましょう!
……
ここまで来ればもう安心だ……
ええ……
ボクの能力「殺人事件」はやはり危険すぎるのか……?
ボクを狙ってきた「組織」の刺客たちはみんな死んでいく……