あらすじ:
名探偵、全裸大五郎は名探偵である。
彼の行く先々では殺人事件が止まらない

警部、こ、こちらが
今回の死亡者です

うむ

……

このなんかちょっと絵柄の異なる方が

やめろって

第一発見者の方が見つけたときにはすでに……

毒フランスパンをあおって亡くなっていた
そうです

そうなの! わたしが見たときには
すでに死んでいたの!

この毒フランスパンを

あおって

このちょっと絵柄の違う方が
第一発見者です

そういうのはもういいよ

つーか

なんなんだよ毒フランスパンって

どんだけ珍パンなんだよ

まあ、とにかく今回は自殺ということだな
自分で自分を殺した

そ、それが、警部

なに?

密室殺人なのです

自殺なんだから密室でもおかしくないだろ

そういうレベルではないのです

密室にレベルも何もあるか

まあまあ、ちょっと死体を見てよ、おじさん

ここにセーブポイントみたいなクリスタルがあるでしょ?

死体はこの中に入ってたんだよ

そうなのです。警部

死体はこのバカでかいクリスタルの中に
入っていたのです

……ふむ
たしかにクリスタルの中がくり抜かれていて、そこに死体が入っているな

そうです。クリスタルの中がくり抜かれて、
少女一人がようやくおさまる程度の空間が空いています

棺桶みたいだな

このクリスタル内の空間には、フランスパンが二本入るぐらいの穴が開いているだけです

この穴はおそらく空気穴でしょうが……

つまり、自殺した少女がどうやって中に入ったのかわからないのです

バカバカしい、どっかに入れた穴があるんだろう

クリスタルを割って、中に入れて、接着剤でくっつけたとか

それはありえないよ、おじさん

女の子の回りにはそういった痕はすこしも見当たらないもの

じゃあ、高熱でクリスタルを溶かすとか

クリスタルにはガラスと違って、結晶の方向ってものがあるからね

部分的に溶かしたりしたら痕が残るんだ

いったい、この少女はどうやってクリスタルの中に……

うーむ。得体がしれないな

どうしましょう、警部

うむ。鑑識にまわせ

クリスタルを鑑識にまわして、そこで割るかなんかして、死体は解剖だな。そうすれば何かわかるかも知れない。

わからない事は専門家にまかせろ
われわれ警察はチームで動いてるんだからな

現場の判断で軽はずみに密室だの不可能犯罪だの騒いでも、事態が好転しないだろ

そうですね。とても常識的な判断です

常識的すぎますよ、警部

ちょっとあなた、全裸で現場に入らないで

げっ、お前は

そういうサラリーマン的なやり方は
どうかと思いますね

全裸大五郎!

うわー……(下半身を見る)

どうやって少女は
クリスタルの中に入ったのか

すでに謎はとけています

さあ、みんなも考えてみよう!

解答編

で、どうやってあの死体はクリスタルの中に入ったんだ?

このクリスタルは完全な密室ではありません
空気穴が開いています

でも、この穴は呼吸のためには役立つけど、せいぜいフランスパンが二本ぐらいしか通らないですよ。

まさか、少女をバラバラに分解してボトルシップ的に組み立てたとでもいうんじゃないでしょうね

うーん。惜しい

早く答えを言えクイズじゃないんだ

ちょっと問題の質を変えてみましょう

口の小さいビンの中に
大きなキュウリが丸ごと一本入っています
どうやったのでしょーか

そりゃあ、キュウリが小さいうちにビンの口から通して、中で育てたんだ

このやり方で、ビンを割らないと食えないピクルスを作ることができる

お子さんの夏休みの宿題にピッタリですよ
簡単に作れて教師ウケがいい

そうですね。小さいときに中に入れて
そのまま育てればいい

ちょ……まさか

そう、この少女は赤ちゃんのときにこのクリスタルに入れられ、そのままずっとこの中で育ったのです

まるでビンの中で育つキュウリのようにね

なるほど! 赤ちゃんだって、入れた穴よりでかく育つもんね

な、なるほど

お前なあ、言ってることはわかるが、赤ちゃんとキュウリじゃ手間が段違いだぞ。食い物はいいとして、糞尿はどうするんだ、糞尿は

たしかに大変ですが、人を雇ったりして手間をかければできていきます

つまり金持ちならできます

この館の主人のような……ね

……

女の子をクリスタルに入れて育てる。ものすごい超絶変態野郎ね

というか、人権侵害にもほどがある

本当だったら、この館の主人は完全な犯罪者だ、別件だがほうって置くわけにはいかんな

ぐへへへへ……

誰だ貴様!

俺が、この館の主人……

死神ブルジョアだ!

来たな全裸大五郎、行く先々で死を呼び起こす男……

お、お前、僕の「能力」のことを……

その通りだ! わたしは「組織」の幹部!
貴様の「能力」のことはよく知っている……
行く先々で殺人事件が起こる「能力」……

すっげえ迷惑……

まさか私の本拠地まで乗り込んでくるとは思わなかったぞ。そのうえ私が個人的な趣味で作った「毒パン」や「なんとなくクリスタル少女」まで破壊するとは……

許さん!
行け! しもべども! あの男を殺すのだ!

キシェエエエエ!

フォッシャアアアア!!!

くっ、アシッドスライムとバイオスパイダーか、これは手強い!

フハハハハハ! さらばだ!

待て! 死神ブルジョア!

事情聴取を受けろ!

キシェエエエエエ!

くっ、銃が効かない!

ウギャアアアアアアアアア!

フォッシャアアア!

わあああああ! 喉笛に食らいつかれた!
毒液が注入される!

うっ…………

がくっ

死んだ!

二人とも!

逃げましょう! 警部!

し、しかし……

このままだと、なたも「殺されて」しまいます! ぼくのはそういう「能力」なんです!

くっ、そうだな……
危険を冒すことと職業的情熱を混同してはいけない、プロとして……

たまたま近くにレインボーブリッジがあります! そこまで逃げましょう!

くっ……また部下を失うのか……

どうやら追ってこないようだな……

今回は三つの「殺人」を起こしてしまった……

「組織」の言うとおり、ぼくは悪魔なのだろうか……

毒パンに気をつけろ! 金持ちの家は死の香り

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