犯人はまず最初に凶器……
つまり浴衣(の帯)の調達をしたんだ。
それは管理人である志島さんに堂々と申告して、簡単に手に入れることができた。
凶器に浴衣の帯を選んだのは、返り血を浴びることを危惧したからなんじゃないかな。
浴衣を借りる人がそれほどいなかったことは、犯人にとって誤算だったのかもしれない。
被害者を含めて四人だけだった。
深夜。
みんなが寝静まった頃、犯人は殺害現場……
206号室、被害者武井さんの部屋へと向かった。
そこで偶然、犯人はトイレから戻る片倉さんとすれ違ったんだ。
犯人は被害者の『親戚』だった。
親戚なら警戒もせずにドアを開けてしまうよね。
犯人は難なく被害者の部屋に入ることができた。
犯人は被害者の隙をついて、浴衣の帯で首を絞めたんだ。
『浴衣を持っている人間』という手がかりから特定されることを恐れた犯人は、すかさず厨房へと向かい、包丁を入手した。
心臓の停止によって被害者の血流が止まるのを、犯人は数時間待った。
返り血を浴びないためにね。
そして、首を切断することで絞殺の痕を隠滅した。
それだけだと違和感が残るため、手足も切断し、最後に胸に包丁を突き刺して、犯人は、単なる猟奇的な犯行に見せかけたんだ。
武井さんの殺害を終え自室へと戻る途中、犯人はトイレに向かうハルカちゃんとすれ違ってしまった。
この不運が、後の自身の証言に違和感をもたらしてしまったんだよ。
この犯行が可能だったのは、浴衣を持った三人の内、PROFILEに縛られていない、犯人だけだった。
藤堂ユナ、君だけだったんだ。