【第零話】
『序章』

誰もが寝静まった深夜、繁華街に銃声や爆発音が響いた。それも一回や二回ではない。まるで戦争でもしているかの様な絶え間無い荒々しさ。
しかし、それは強盗でもテロでもない。別の戦いが繰り広げられていた。

よし、捉えたぞ!



暗闇に浮かぶダークブルーの光りの群れ。それは彼らが装着しているヘルメットのアイシールドの光だった。
前身黒色の戦闘スーツを着た者達は、巨大な網を地面に杭の様なもので固定していた。網の中央部には、刺とも角とも思える物を身体から生やした、謎の生物・・・そう、未確認生命体がいた。それは時折、波打つ様に動き暴れまわる。

まだ、抵抗しやがるか・・・

これじゃまるで沖に引き上げられた魚だな



戦闘スーツの者達は銃を片手に、余裕の会話をしているが、その戦闘スーツは各自所々破損があり、中には顔を覆っているヘルメット部分の半分が破壊されていて素顔が見えている者もいた。
彼らは一斉に網に捕獲した未確認生命体を包囲し、銃を構える。

クダラナイ事を言ってるんじゃない。仕留めるぞ―――撃てぇ!



眠りについたはずの繁華街が目を覚ますかと思える程の銃声が響き、未確認生命体の身体には数えられぬ程の弾丸が突き刺さる。
一層暴れ狂う未確認生命体は、思うように身動きを取る事もできず、唸りにも似た言葉にならぬ声を張り上げ、電源を突然OFFにされた人形の様にピタリと止まると、突然身体から発火し空に向かって一瞬火柱を立てると、消滅した。

戦闘スーツの者達は安堵の声をもらす者や、感極まって奇声を上げる者。無言でへたり込む者など、戦闘の激しさを物語っていた。
その中の一人の男が徐に通信を始める。

ミッション終了です。後の処理をお願いします



『了解した』

男は共に戦った仲間を見て微笑むが、どこか複雑な表情をしていた。

・・・今年に入って、戦闘のペースが明らかに早まっている。はぁ・・・命がいくつあっても足りないな

西暦2000年から突如現れた未確認生命体との戦いは、西暦2015年では人類にとって最早当たり前になっていた。

これは、当たり前になっていた事を受け入れなかった者達の物語り。

【第零話】『序章』

facebook twitter
pagetop