ある村に大きなロボットのロボット太郎が住んでいました。
 ロボット太郎はいつも皆と一緒に笑っていましたし、皆の笑顔が大好きです。
 山の上に住んでいる病気の人が山の下の病院に行きたい時はその人を胸の中に入れて足のキャタピラで坂道を降りて送ってあげました。
 遠くに住んでいる家族が居る人は手紙や荷物を胸の中に入れて背中のジェットで空を飛んで届けてあげました。
 ドリルを使って竹馬やコマ、竹とんぼを作るのも得意です。
 腰が痛くて畑に出られない人が居れば、四本の腕に鍬を持って足と腰に力を入れて汗を流して畑を耕します。
 村に住んでいるミチコちゃんはがんばっているロボット太郎が大好きでした。

お疲れ様! ロボット太郎!
一緒にオニギリでも食べましょう!

するとロボット太郎は困ってしまいました。

ゴメンね、ミチコちゃん。
ボクはオニギリは食べられないんだ

どうして?

ボクはおなかの中にウラン235っていうお弁当が入ってて、
オニギリを食べなくてもがんばれるんだ

それっておいしいの?
オニギリととりかえっこする?

……。
うーん、おいしくはないんじゃないかなァ…。
ウランをミチコちゃんが食べるとおなかがいたくなっちゃうよ

 ミチコちゃんはロボット太郎のいっていることがよくわかりませんでしたが、
 おいしいオニギリを食べられなくてもがんばってくれるロボット太郎が大好きでした。
 でも、オニギリもみかんもウドンも食べられず、食べたらおなかがいたくなるお弁当でがんばっているロボット太郎のことがとてもかわいそうだともおもいました。
 大好きなロボット太郎がかわいそうで、ミチコちゃんは泣きだしてしまいました。

泣かないでミチコちゃん。
ボクはみんなが笑ってるのが、いちばん好きなんだ

いちばんって、ウランより?

うん。
ボクのために泣いてくれるミチコちゃんが笑ってくれるのがいちばんだよ

 ミチコちゃんは、泣くのをやめて、ロボット太郎にあげようとしていたオニギリをパクっ、と食べました。
 笑うミチコちゃんを見て、ロボット太郎はおなかがいっぱいになったミチコちゃんと同じ気持ちになって、4本の腕でぎゅうっとだきしめました。

 それは2011年の3月11日まで続く、幸せでした。

原子力系童話 ロボット太郎とミチコちゃん(前)

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