大学の講義は退屈だった。いつも平和で、何の発見もなく、ただ淡々と時間が過ぎるのを待つ。そんな退屈な日常が、1時間もしないうちに壊れて消えるのを、その時の僕はまだ知らなかった。

シュン

はぁ・・・やっと講義終わったぁ。

トウヤ

シュン。さっさと帰ろうぜ。

シュン

うん。帰ろう。

トウヤ

それにしてもかったりーよな。吉崎の講義。

シュン

あはは。まー確かに退屈だよね。

トウヤ

まー、退屈なのは吉崎の講義だけじゃねーけどな。この世の中、全部が退屈だぜ。

シュン

そうかなー。今みたいな平和で退屈な日常も僕は悪くないと思うけどな。

トウヤ

お前は平和主義者だからな。

シュン

平和が一番だよ。

トウヤ

ま、そういう考えもあるだろうけどな。俺は刺激が欲しいよ。この退屈な日常の全てをぶち壊すような刺激が欲しい。

シュン

ははっ。僕らはただの大学生だよ?そんな刺激ありえないでしょ。

トウヤ

まーな。俺だって本気で何かが起こるなんて思ってねーよ。

シュン

思うんだけど、トウヤはカッコイイんだから彼女でも作ればいいんじゃない?そしたら退屈なんてなくなるよ。

トウヤ

女ね。俺はもう高校で散々遊んできたからな。俺が欲しいのはそういう刺激じゃないんだよ。

シュン

ふーん・・・

こうしていつものくだらない会話をしながら、階段を降りていき、校門へたどり着いた。

トウヤ

シュン。お前のほうはどうなんだよ?彼女は?

シュン

そんなのいないよ。

トウヤ

はぁ・・・情けねー。お前、ホント草食系だよな。

シュン

ほっといてよ。別にいいでしょ。

トウヤ

へへっ。いい事思いついた。お前、今からあそこの女をナンパしてこいよ。

シュン

ええっ!なんで?いいよ。そんなの。

トウヤ

だめだ。してこいよ。そんな事すらできないから、お前はいつまでたっても彼女出来ねーんだよ。

シュン

余計なお世話だよ。僕がいつ彼女が欲しいなんて言ったんだよ。そんな事言ってないだろ?

トウヤ

顔に書いてある。彼女欲しいですーってな。ほら行けよ。

シュンはトウヤに押されて、仕方なくトウヤの指名した校門のそばで立っている女の子の元へと向かった。

シュン

あっ。あの・・・

ミク

何?

シュン

ぼ、僕とデートしてくれませんか?

ミク

私はあなたの事なんて知らないわ。さよなら。

そう言うと彼女はスタスタとその場から離れてしまった。

トウヤ

おい。何やってんだよ。早く追いかけて口説け。

シュン

無茶言うなよ。聞いてただろ?僕の事なんか知らんって断られたじゃないか。無理だよ。

トウヤ

ちっ。仕方ねー。俺が見本見せてやるよ。行くぞ。着いて来い。

シュン

う、うん。

さっきの女の子は、スタスタと、近くの公園へと歩いて行った。

ミク

はぁ・・・。これからどうしたらいいのかしら・・・。

トウヤ

よっ。君さぁ。ここで何してんの?

ミク

・・・。何ですか?私に構わないでください。

シュン

ははっ。トウヤだって振られてんじゃん。

トウヤ

ばーか。ナンパってのはな。一度断られてもそれで終わりじゃねーのよ。グイグイ押せば女の子は落ちるぜ。これからだ!

トウヤ

君、名前は?

ミク

ミクです。名前が分かったんだから、もう満足したでしょ。私に関わらないでください。

トウヤ

ミクちゃん。君なんでそんなに冷たいんだよ。ちょっとだけ遊ぼうって言ってるだけじゃん。

ミク

私に関わると死にますよ。

トウヤ

は?

突如ミクから放たれた外見に似つかわしくない言葉に、トウヤは驚いた。

トウヤ

死ぬって何だよ?意味わかんねー。

ミク

そのまんまの意味よ。私に関わると死ぬの。分かったら今すぐここを離れなさい。ここももうすぐ嗅ぎ付けられるわ。

トウヤ

君、頭が逝っちゃってる系の人?

ミク

どう思われてもかまわないわ。

シュン

おい。トウヤ。もう行こう。

トウヤ

ああ。そうだな。こんな意味わかんねー女と付き合ってられねーわ。

その時、辺りが一瞬光ったのと同時に、一人の仮面の男が現われた。

アキラ

ミクさん。こんにちは♪

ミク

くっ。来たわね。

アキラ

そこの二人はお仲間ですか?

ミク

一般人よ。何も知らないし、関係ないわ。逃がしてあげて。

アキラ

そういうわけにはいきませんよ。少しでもあなたに関わりを持った人間を生かしておくわけにはいきません。

そう言うと仮面の男は手を振りかざした。するとさっきまで明るかった空間が真っ黒に染まっていく。

トウヤ

うわっ!何だ。これ!!

シュン

どうなっちゃったんだ。

ミク

騒がないで!こうなったら仕方ない。あなた達にも戦ってもらうわ。

シュン

えっ。戦う?戦うって何だよ?意味分かんないよ。

トウヤ

へっ。なんだかわかんねーけど、おもしれーじゃねぇか。やってやるよ。

ミク

二人ともこれをつけてちょうだい。

シュン

銅の指輪だ。

トウヤ

つけたけど何も起こらないぞ?

ミク

大丈夫。ちゃんと教えるから慌てないで。でもこれから言う事は命懸けで聞いてね。できなければあなた達二人とも死ぬわ。

ミクは「死」というキーワードを使って僕らを脅した。その言葉は僕の脳裏に張り付いて離れる事はなかった。

to be continued

第1話 壊れた日常

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