大学の講義は退屈だった。いつも平和で、何の発見もなく、ただ淡々と時間が過ぎるのを待つ。そんな退屈な日常が、1時間もしないうちに壊れて消えるのを、その時の僕はまだ知らなかった。
大学の講義は退屈だった。いつも平和で、何の発見もなく、ただ淡々と時間が過ぎるのを待つ。そんな退屈な日常が、1時間もしないうちに壊れて消えるのを、その時の僕はまだ知らなかった。
はぁ・・・やっと講義終わったぁ。
シュン。さっさと帰ろうぜ。
うん。帰ろう。
それにしてもかったりーよな。吉崎の講義。
あはは。まー確かに退屈だよね。
まー、退屈なのは吉崎の講義だけじゃねーけどな。この世の中、全部が退屈だぜ。
そうかなー。今みたいな平和で退屈な日常も僕は悪くないと思うけどな。
お前は平和主義者だからな。
平和が一番だよ。
ま、そういう考えもあるだろうけどな。俺は刺激が欲しいよ。この退屈な日常の全てをぶち壊すような刺激が欲しい。
ははっ。僕らはただの大学生だよ?そんな刺激ありえないでしょ。
まーな。俺だって本気で何かが起こるなんて思ってねーよ。
思うんだけど、トウヤはカッコイイんだから彼女でも作ればいいんじゃない?そしたら退屈なんてなくなるよ。
女ね。俺はもう高校で散々遊んできたからな。俺が欲しいのはそういう刺激じゃないんだよ。
ふーん・・・
こうしていつものくだらない会話をしながら、階段を降りていき、校門へたどり着いた。
シュン。お前のほうはどうなんだよ?彼女は?
そんなのいないよ。
はぁ・・・情けねー。お前、ホント草食系だよな。
ほっといてよ。別にいいでしょ。
へへっ。いい事思いついた。お前、今からあそこの女をナンパしてこいよ。
ええっ!なんで?いいよ。そんなの。
だめだ。してこいよ。そんな事すらできないから、お前はいつまでたっても彼女出来ねーんだよ。
余計なお世話だよ。僕がいつ彼女が欲しいなんて言ったんだよ。そんな事言ってないだろ?
顔に書いてある。彼女欲しいですーってな。ほら行けよ。
シュンはトウヤに押されて、仕方なくトウヤの指名した校門のそばで立っている女の子の元へと向かった。
あっ。あの・・・
何?
ぼ、僕とデートしてくれませんか?
私はあなたの事なんて知らないわ。さよなら。
そう言うと彼女はスタスタとその場から離れてしまった。
おい。何やってんだよ。早く追いかけて口説け。
無茶言うなよ。聞いてただろ?僕の事なんか知らんって断られたじゃないか。無理だよ。
ちっ。仕方ねー。俺が見本見せてやるよ。行くぞ。着いて来い。
う、うん。
さっきの女の子は、スタスタと、近くの公園へと歩いて行った。
はぁ・・・。これからどうしたらいいのかしら・・・。
よっ。君さぁ。ここで何してんの?
・・・。何ですか?私に構わないでください。
ははっ。トウヤだって振られてんじゃん。
ばーか。ナンパってのはな。一度断られてもそれで終わりじゃねーのよ。グイグイ押せば女の子は落ちるぜ。これからだ!
君、名前は?
ミクです。名前が分かったんだから、もう満足したでしょ。私に関わらないでください。
ミクちゃん。君なんでそんなに冷たいんだよ。ちょっとだけ遊ぼうって言ってるだけじゃん。
私に関わると死にますよ。
は?
突如ミクから放たれた外見に似つかわしくない言葉に、トウヤは驚いた。
死ぬって何だよ?意味わかんねー。
そのまんまの意味よ。私に関わると死ぬの。分かったら今すぐここを離れなさい。ここももうすぐ嗅ぎ付けられるわ。
君、頭が逝っちゃってる系の人?
どう思われてもかまわないわ。
おい。トウヤ。もう行こう。
ああ。そうだな。こんな意味わかんねー女と付き合ってられねーわ。
その時、辺りが一瞬光ったのと同時に、一人の仮面の男が現われた。
ミクさん。こんにちは♪
くっ。来たわね。
そこの二人はお仲間ですか?
一般人よ。何も知らないし、関係ないわ。逃がしてあげて。
そういうわけにはいきませんよ。少しでもあなたに関わりを持った人間を生かしておくわけにはいきません。
そう言うと仮面の男は手を振りかざした。するとさっきまで明るかった空間が真っ黒に染まっていく。
うわっ!何だ。これ!!
どうなっちゃったんだ。
騒がないで!こうなったら仕方ない。あなた達にも戦ってもらうわ。
えっ。戦う?戦うって何だよ?意味分かんないよ。
へっ。なんだかわかんねーけど、おもしれーじゃねぇか。やってやるよ。
二人ともこれをつけてちょうだい。
銅の指輪だ。
つけたけど何も起こらないぞ?
大丈夫。ちゃんと教えるから慌てないで。でもこれから言う事は命懸けで聞いてね。できなければあなた達二人とも死ぬわ。
ミクは「死」というキーワードを使って僕らを脅した。その言葉は僕の脳裏に張り付いて離れる事はなかった。
to be continued