友人

それじゃあ樹里、うちの子をお願いね?

ドージン

う、う~ん・・

学生時代の友人から久しぶりに電話がかかってきたと思ったら、子供を1日預かって欲しいとの事であった。

今でこそ同人誌を描かなくなってしまったものの、買い専門として女性向け同人イベントに結婚後も参加している彼女である。預かって欲しい理由はだいたい分かる。

ドージン

やっぱ不安だよ
無理だよ‥

ドージン

子供なんて怖くて預かれないよ~

友人

大丈夫だって!!!

友人

この子しっかりしているから一人で何でもやるし、大人しい性格だから

かおるこ

(もじもじ)

友人

ねっ!!
ほら~挨拶は?

2次元の世界であれば光の速さでペロペロする所ではあるが、リアルで子供と接した事がほとんど無い小生に余裕はない。

ドージン

う、おお、う・・(ガタガタ)

ドージン

強引に預けて、出て行ってしまったな・・

ドージン

昔からそうなんだよな・・

イベント会場へ向かう彼女の車を、ベランダの上から眺めながら小生はぼやいた。この借りは同人漫画原稿の修羅場で返してもらうとしよう。

ドージン

それで・・だ・・

ベランダの窓を閉めて、チラッチラッとかおるこちゃんの様子を伺う。

この辺りは巨乳の女性とすれ違った際、ばれないようにチラ見する技能を普段から鍛えている小生なので、お手の物である。

ドージン

それにしても凄い集中して読んでいるな

ドージン

同人趣味が功を奏したか・・家に漫画が沢山あって良かったな

かおるこ

・・ねぇおばさん?

ドージン

あっ!!
はい何でしょうか!!?

初めておばさんと呼ばれた衝撃で、脳へ深刻なダメージが発生する。

かおるこ

ねぇねぇ、コレって何て読むの?

ドージン

えええええ、え~と、とととと

そんな小生の様子を気にせず、かおるこちゃんは質問をしてくる。

手には女性同士が抱きしめあっている本があり、小さな指はある2文字を指している。

『百合』

ドージン

そ、その本は!!!!?

とりあえず横で漫画を読んでいると、いつの間にかお昼近くになっている。

自炊するのが面倒なので、いつもなら近所の牛丼屋で生卵付き牛丼をかきこむ所だが、かこるこちゃんがいるとなるとそういう訳にもいくまいか。

お腹が鳴った事を恥ずかしそうにするかおるこちゃん。うむ可愛い。この演出はいつか同人原稿でネタにしよう。

ドージン

そっか~普段、お母さんはどんなの作ってくれるの?

かおるこ

ん~・・

さりげなくタメ口をしてみて様子を伺う小生。それに対して何のリアクションも無いが、何か人間としてひとつ成長した気がする。

かおるこ

目玉焼きハンバーグとカレーライスと

かおるこ

あとメロンクリームソーダ!!

ニコニコ笑顔で食べ物の名前を言うかおるこちゃん。

ドージン

多分これは、好きな食べ物を言っただけなんだろうけど・・

ドージン

この5歳児、なかなか策略家だな

この年齢はこんなに賢かったっけと考えつつ、可愛いなあと思う小生。

ならば期待に答えねばなるまい。

友人

おーい、今、帰ったぞ~!!何つって

お昼を食べたあと一緒にお絵かきをしていたのだが、いつの間にか寝てしまった様だ。

友人

何か仲良くしていたみたいだな~

ドージン

(むにゃぁ)

友人

子供の可愛さを理解すれば、樹里も結婚を真剣に考えてくれるかな?

小生も結婚できるならしたいものだが、友人は小生にその意思がないと思っていたらしく、お節介を兼ねていた模様だ。まあ同人が楽しすぎて、おろそかにしている部分もあるが。

友人

どんな絵を描いていたのかな?

そして友人は寝ている小生達の横においてあるスケッチブックを手に取る。

そこには女性同士が顔を近づけ、壁ドンをしている絵が描かれていた。

紙をめくると、他にも男性同士が抱きしめあっている絵や、はたして子供に見せてよいか分からない絵がたくさん描かれてた。

子供の可愛さを分かったというより、若い世代に文化を引き継いでいく楽しさに若干目覚めた小生であった。

つづく.....

5. <番外編②> アラサー女同人作家は子供を預かる

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