中は暗く鬼たちの持つ松明の明かりだけが唯一周りを照らしている。 


 今にも逃げ出してしまいたい。


 けれど体がそれを許す事は無く。


 ただ淡々と命令に従い鬼の行く道を着いていく。


 そうして辿り着いたのは大きな穴の開いた行き止まり。


 穴の前には像が建っている。


 鳥の頭が鬼になったような不気味な像。


 鬼たちがその像を前に膝を着けて頭を下げる。


 

邪神様。生贄を連れて参りました

 リーダー格の鬼がそう言うと、目の前の像が暗い昏い光を放つ。


 その光を見た瞬間、これは人が触れてはいけない物であると理解した。


 同時、これが光と相反する存在。闇である事を悟った。

ハハッ!

 リーダー格の鬼が頷き立ち上がる。


 俺達に聞こえない何かの声を聞いたのか。他の鬼たちも立ち上がり、両サイドに詰めて道を作る。


 

よし。お前ら

 リーダー格の鬼が像の横に立つ。


 作られた道に残された俺達に向けられたのは、優しい笑顔だった。

落ちろ

 体は言葉で支配されている。


 
 俺達は逆らう事を許されず。

 命令に背く事は不可能。


 故に俺達は──。

ああ。もう喋っても良いぞ

嫌だ嫌だ嫌だ!!

やめて助けて!

うわぁああああんっ!! ママぁ! ママぁっ!!

嫌よ私には愛する人がいるのマイダーリン!!

ふざけやがってこの鬼鬼鬼ぃぃイイッ!! ぶっ殺してやる殺してやる殺してやる!!

怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨怨

呪い殺してやるぅううっ!!

ひぃっ!? お願い許してお願いします何でもしますからぁあああっ!!

嫌、嫌アああ!! あなた、あなたぁあああっ!!

由美子ォッ!! おのれ………おのれえええええええええええっ!!

お前たちだけは絶対に許さない!!

助け……ひっく……助けてぇ……

貴様だけは許さない…………………絶対に許さない………

あの世で待ってるぜヒャッハアアアッ!!

せめて一発やりたかった!!

これ落ちたら助からないのではないかね!?

大輔

はあ…………あ。あんたも道連れな

──は?

 最期の最期。


 落ちろという命令に従い落ちる瞬間。


 俺が伸ばした右手が、鬼の手を強く掴む。

「ふざ……ふざけっ!!? 放せ!! 放っ! アァアアアアアアアアアアアッ!!?」

 こうして俺達は暗い穴の奥へと消えた。

 

第六話「供物、道連れ」

facebook twitter
pagetop