勇者、
よくぞ呪いに負けることなく魔王を倒すことができましたね

ボクは、この冒険のお供ができて本当によかったです!

けれど、魔王を倒したくらいじゃ
まだまだ勇者の冒険は終わりません

勇者の助けを待つ、困った人々はこの王国以外にもいるんですから、
世界を救う冒険をこれからも続けていきましょう!

ここは国の中枢である王の城――
放たれていた瘴気は、魔王が倒されたことにより消え、
王国の自然も人々も生気を取り戻し、平和と平穏が訪れていた


そして兵士をクビになっていた将校は、
勇者とともに魔王を倒し、拐われた王を救ったという手柄を立てたおかげで、
また王国兵士として仕えることが許されていた

勇者のおかげだ…とは言わない
魔王の手下を仕留めたのは私なのだからな
私にも同等な栄誉が与えられるに決まっている

だが、
少しはお前の勇者としての力を認めてやろう

気が向いたらいつでも寄るがいい
私が兵士として恥ずかしくないよう鍛えてやるからな

魔王に仕えていた魔物たちはというと、
ある者は森に逃げ、ある者は王国を去り――

そして一番の手下であった魔物の女は、城の地下にある牢屋の中に捕らえられながらも、
再び魔王復活を夢見て、日夜脱走の計画を練っているのだった

今回はすご~く悔しかったけど~
魔王サマは絶対にまた目覚めて今度こそ勇者なんかやっつけてやるんだから~

魔王サマ~…
アチシは魔王サマのお帰りを待ち続けていますからね~

魔王を慕う彼女が、城の牢屋を抜け出す日もそう遠くはない…

そして、魔王を倒したことで
捕らわれていたブックマーカーたちを解放したのち、

勇者とともに冒険に出たブックマーカーの少女もまた例外ではなく、自分が守る<ブックマーク>の神殿へと帰ってきていた


ブックマーカーは神殿にある<ブックマーク>の力を維持するためにも、長くその場を離れるわけにはいかない

少女を無事に送り届けたことで、
勇者たちと少女の別れが訪れていた――

勇者さん、
あなたのおかげで、私は魔王からブックマーカーの未来を守ることができました

本当にありがとうございます

いや、君がいてくれたおかげで俺も魔王を倒すことができたんだ

俺のほうこそ礼を言うよ

ふふふ

……

――魔王を倒したこともそうですが、
私は勇者さんの冒険に連れて行ってもらえたこと…外に連れ出してもらったこと、
ずっと忘れません

私はブックマーカー
これからもこの神殿で、来る冒険者さんたちに<ブックマーク>の力を与えるため、この場所に居続けます

だから、勇者さんたちも、
たまにはこの神殿に顔を見せに来てくださいね

ああ、約束するよ

ブクマーカーも、どうかお元気で

はい!

それから一言二言、言葉を交わし、
別れを済ませると勇者たちは、少女の目の前から去り、神殿から冒険へと旅立っていった


部屋から出て行った勇者の背中が見えなくなるまで、少女は黙したまま見つめていたが……

勇者さん!

少女は勇者の後を追って部屋を飛び出す

しかし、部屋の外に伸びる神殿内の廊下には、もう勇者たちの姿はなかった

また、いつか…
絶対にですからね

シン…とした静けさに耳を傾ける少女の表情には、
自分が勇者と共に守った未来を信じる想いが溢れていた

◆◆◆

……あれ?

勇者?…あれ⁉
ちょっ!なんで神殿から出た途端に転んだと思ったら突然消えちゃうんですかー⁉

勇者どこ行っちゃったんですか!
勇ー者ぁー!!

◆◆◆

……で?

なんで俺は神殿から出たと思ったら、また魔王がいた城に逆戻りしてんだ?

呪い解けてねぇじゃねーかよ!
魔王のやろー!
そのまま待ってろって、そういうことかよ‼

おおおおい!

◆◆◆

書物には綴られる物語がある

それは男が辿ってきた道であり
行ってきた偉業であり
そして、後に伝えられるべき伝説でもある


けれど、彼の偉業が冒険が伝説として書物に残される時がくるのは遠い先のことであり、

それはまた、別のお話――…

―continue…?

終われない勇者サマ

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