ニケ

いやー、いい天気だなぁ。

城門前の中庭。
ニケは空を見上げながら、大きく伸びをした。

この城に来たばかりの頃より、
1回りも2回りも大きくなった。
それは、中身も同じことだ。

勇者が、旅立ちの朝を迎えた。

オーゼ

そうだな……。

ニケの隣にはオーゼが立っていたが、
明るい表情のニケとは対照的に、沈んだ顔をしている。

オーゼ

私が代わってやれたらと今でも思う。
ニケ、本当に……。

オーゼ

……。

オーゼ

いや、やめよう。
思えば君には、
このことで怒られてばかりだったな。

ニケ

ハハ、いよいよ出発って日に、やっとわかってくれましたか。

ニケ

でも、少し間違えてますねぇ……。

そうですよ。

アルマ

"君たち"でしょう?
私だって何度も言いましたよ。

オーゼ

そうだったな。
すまない。
君にも怒られてばかりだな。

アステリア

おっすおはよう。
3人とも早いね。

ファイナ

おはよう。オーゼさん。2人とも。

ルーツ

おはよう。

ニケ

おはようございます!

アルマ

ルーツさん、アステリアさん、ファイナさん。
おはようございます。

アステリア

いよいよ出発の日だね。
ちゃんと準備はできてるか?

アルマ

バッチリですよ。

ルーツ

そうか。
準備が済んだ後で悪いんだが、
俺たちからの贈り物だ。

そう言ってルーツが取り出したのは、2本の剣だった。
騎士団の紋章があしらわれたそれは、
ルーツやアステリアの剣と同じものだ。

ニケ

え、これ、いいんですか?

アルマ

この剣を持つことが許されてるのって、
騎士団の上位実力者だけなんじゃ……。

ルーツ

まぁ、特別だ。
それに、この剣を持つに相応しいだけの力はもう持ってるだろ?

アステリア

私にはまだまだ及ばないけどね。

ルーツ

当たり前だろ。
簡単に追いぬかれてたまるかってんだよ。

ファイナ

私は追いぬかれちゃったわ。
悔しいわね。

ニケ

ファイナさんは肉弾戦向きじゃないでしょう。

アステリア

そういうわけだ。
持って行きな。

ニケ

ありがとうございます!

アルマ

ありがとうございます。

アステリア

まぁ、2人は色々押し付けちゃうんだから、
これぐらいはしないとねぇ。

アルマ

あっ……。

オーゼ

……本当にすまない……。

アルマ

また……。

アステリア

相変わらずだなぁ。
最後までこれかよ。

ニケ

さっきはちょっと直ってたんですけどね。

ニケの言葉で笑い合った後、
皆静まり返ってしまった。

ニケ

……それじゃ、そろそろ行こうか?

アルマ

はい。

アステリア

気をつけて行くんだよ!
困ったことがあれば戻ってこい。
私達が助けてやるよ。

アルマ

フフ。
その時はお願いしますね。

ルーツ

俺が教えられることは全部教えた。
後はお前ら次第だよ。
お前らが帰ってきた時、どれだけ成長してるか楽しみだぜ。

ニケ

いいんですか、そんな悠長に構えて。
帰ってきたら今度こそ勝ちますから。

ルーツ

言うじゃねぇか。
楽しみにしてるよ。

ファイナ

頑張ってね。
辛くなったら何時でも戻ってきていいから。

アルマ

ありがとうございます。
でも、私たちは大丈夫ですよ。

ファイナ

頼もしいわね。

オーゼ

頼むぞ。2人とも。
私達の方でも、出来る限りの事はする。
近くに来ることがあったら、
また顔を見せてくれ。

アルマ

皆さんもお元気で。

ニケ

行ってきます!

2人の乗った馬が、城門から飛び出す。


この日、2人の勇者が旅立って行った。


2人の旅の行く末がどうなるのか。
それはまた別のお話。


駆けて行く勇者の髪飾りに朝日が反射し、光り輝いた。

終わり

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