私が寝ていたのは一階で、お母さんはどうやら二階に移動したみたいです。

 二階の方から物音がします。


 階段を上り物音のする部屋を覗いてみます。

……え

 そこで見た光景に自分の目を疑いました。


 箪笥の引き出しを次々と開けて血眼になって何かを探す一人の男性。


 そう、男性です。


 お父さんではありません。


 金色に染まった髪の見知らぬおじさん。


 

だ……だれ……?

 思わず、言葉が出てしまいました。


 しまったと思った時には既に遅く、そのおじさんと目が合ってしまいました。

おやあ? ここの家の子かな?

そ……そうです

お名前は?

有栖(アリス)……

アリスちゃん、ね。それじゃ悪いけどアリスちゃん

死んでくれるかな?

えっ?

 突然、おじさんが懐から何かを取り出すと、私の方に走って来ました。 


 怖くなって逃げようとするけれど、大人の人の足には勝てず追いつかれてしまいます。

 背中に強い衝撃。

 階段から転げ落ちます。

 痛い、痛い痛い痛い!!

 あまりの痛さに悶え苦しみ、意識が段々薄くなっていきました。
 

ありゃりゃ。勝手に死んでくれたや

 おじさんの笑い声が聞こえてきます。

 鳴り響くインターホン。 


 お母さんが帰って来たのでしょう。

おや、信一郎(しんいちろう)は仕事のはずだし、となると妙子(たえこ)さんかな?

 信一郎はお父さんで、妙子と言うのはお母さんの名前です。


 このおじさんはお父さんとお母さんの知り合い、なのでしょうか?

 玄関の扉が開き、その前で倒れる私とお母さんとで目が合います。

有……栖……?

 信じられないものをみた、とでも言いたげな声。


 それもそのはずで、目の前で留守番をしていたはずの私が倒れているのです。


 階段から落ちた衝撃からか、傷が幾つも出来ており、頭も打った事により血だまりが出来ていました。


 

えっ!? あんた……何であんたがここに!!

久しぶり妙子さん。殺しに来たよ

あんたが……あんたが有栖をっ!!


 
 ごめんなさいお母さん。私が倒れているのは私のミスです。


 そう伝える事が出来るはずも無く、おじさんもお母さんを殺す、と宣言している事から私の事も本当に殺すつもりだったのでしょう。


 せめてお母さんだけでも逃げて。


 そんな願いも虚しく、私の目の前で繰り広げられる乱闘。


 おじさんの持つナイフがお母さんの喉元を貫き、溢れ出る鮮血。


 その光景が私の見る最後の光景となりました。

あはは……

アハハハハハッ!!

 掠れ行く意識の中、狂ったようなおじさんの笑い声が響いてきました。

だいにわ「おじさん……だれ……?」

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