悟君

あ……怜奈

この前の舞台、大成功だったよ

そうか

悟君の作ってくれた人形のお陰なんだからね!

そうか

もうちょっと喜ぶとかなんとかしてよ

別にお前たちの舞台がどうなろうと関係ないからな

ひどーい

まあ、俺の人形が素晴らしかったのは事実だけどな

うっわー、自画自賛かっこわるい

お前も似たようなものだろう

ま、そうだね。今回の舞台の成功も結局は私の最高に優れた演技のお陰だし

ああ、そうだなー

棒読みはやめてよ!

で、俺を呼び止めた要件はそれだけか?

ん……うん、まあそうだけど

それじゃあ俺は行くから。進路がまだ決まっていないんだ

え!?

驚くこともないだろう。何をやっても中途半端な落ちこぼれの俺が進むべき進路なんてねえんだよ

何言ってるの?

は?

悟君が進みたい進路は決まっているんでしょ?

だから、そんなものないと……

あなた自身の想いは外から見れば一目瞭然

……

大丈夫、あなたの実力は私が保証する

お前なんかに保証されてもなあ……

えー!? ひどーいっ

仮にも、秘密を共有した仲じゃない

いや……まあ、でもあれはお前が勝手に暴露したわけで……

それも策略の内? みたいな

……はあ

悟君ならなれるよ

天才人形師

天才って……

悟君なら普通にそれくらい名乗ると思っていたんだけど

ああ……いや、まあ……

歯切れ悪いなあ

そう言われてもだな、

この、天才女優の玉川怜奈が保証するんだから間違いはない!

三宮悟は天才人形師。
間違いはないよ!

……ああ

そうだな

うわっ途端に自信満々の笑みになった

文句あるのか?

ううんー、なんでも

……はあ

では、その怜奈さんという方の絶対的保証があったお蔭で悟君は天才人形師を名乗っていると

ああ……

では、自称ではなく他称天才人形師であると

そういう前書きはいらない。ただの『天才人形師』でいんだ

はいはい

……

それで、怜奈さんの秘密ってなんですか?

……言わなければならないのか?

勿論です

それが優里奈ちゃんやあの男の人に関わる重要なヒントかもしれないじゃないですか

……そうか?

ならないのですか?

ああ……まさか……いやでも、まさか……

もし怜奈と優里奈が似ているっていうならば……

優里奈は……いや、でも……

悟!

悩んでいるようだね

圭くん

こんにちは、たまこちゃん

どうしてここへ?

なんだか悟のことが心配になってね

どう? うまくいってる……

って顔じゃないね

ああ

あの、圭くん!

どうしたの? たまこちゃん

怜奈さんって知っていますか?

ああ、勿論

俺たちの大学の転載舞台女優だね。将来有望と言われながら大学を卒業と同時に女優の道を退いで……

そこからはどこにいるのか分からないけど

勿体ないなあ、才能あったのに

……さっき、怜奈のプロデューサーだったと名乗る男に会った

ああ、二階堂 信くん?

知っているのか?

まあ、同じ大学だったし

信くんが、どうしたの?

奴に、あった

え……

奴は俺のせいで怜奈が女優をやめたと言っていた

一体、何故

悩みこむ悟。そんな彼らに近づいてくる一つの影があった。

悟君

それはあまりにも……聞きなれた声であった。

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