ー勇者の家ー
ー勇者の家ー
あと2日…
今日と明日さえ凌げば
名縛反魂が成立する。
…ククク
部屋の隅で何をニヤニヤしてるのです?
イナリ。
ビックゥゥゥ!!
まだ陽も高いので
草刈りをしようと思うの。
手伝ってくれる?
か、かしこまりました。
そんな女子会後の昼下がりです。
逼る
《せまる》
玄関から庭先に出る
シーラさんとイナリさん。
はい、草刈り鎌。
はい…って。
頭と魔力を使って草を刈る
わけではないのですか?
イナリ、たまには自分の体を
動かすのも必要よ。
そ…そうですね、シーラ様。
では、私は花壇の手入れをいたします。
イナリは雑草をお願いね。
かしこまりました。
シーラさんは家の前の花壇の方へ向かいます。
イナリさんは花壇とは反対側の草を狩り始めました。
まったく…シザース呼んでくれりゃ
バッサバッサ刈って
すぐ終わるというのに…
まぁいい。
従順に従っていれば
もう1日半はすぐだろう。
ぶつぶつとひとりごちりながら
草を刈るイナリさん。
その間、シーラさんは
花壇の水やりや剪定を行います。
ソルフェージュ様が言っていた…
アルザレアを旅立つまでに一日と半、
といったところであろう。
それまでに勇者勇が帰ってきたり
我に伝えたいことであったら
魔便箋を使ってくれ。
あれはきっと
『明日中に旅立つ覚悟を決めろ』
ということなんだと思う。
私は召喚士なんだ…。
いざとなれば勇くんと戦いたい。
でも、勇くんとの約束もある。
この家の留守を預かるという約束…。
シーラさんは悩みました。
…あー…
勇くんが求めるシーラは
どっちなのかしら?
* * *
ぬぅ……
それにしても草の量が多いな…。
もくもくと草を刈るイナリさん
ふと、草を刈る手元に
だれかの足が見えました。
…ん
草刈りの手を止めるイナリさん。
見上げると目の前には
小さな女の子が笑顔で立っています。
ねぇねぇ、おにいちゃん。
おやおや。
これはかわいいお客さんだ。
街から来たお嬢さんかな?
私の姿が見えるとは、
どうやら潜在魔力が強いと見える。
これ、どうぞ。
花束ですか。
ありがとう。
みつけたお花は、
なの花なの。きれいでしょ?
お花畑にそっともどしてね。
イナリさんは女の子に
花束を渡されました。
なの花?
バラのように見えるが…
私がお花畑に戻すのかい?
れんげの花も好きだけど
のに咲くバラは
もっと好き。
私も花は好きですよ。
今度一緒にお花畑に行きますか?
私が自由になったらね…ふふふ。
のこらず散れ。
…は?
決められないなぁ…。
勇くんの状況を把握しないと…。
…そうね。
勇くんの状況把握が必要ね。
イナリ、ちょっと相談があるの。
来てくれるかしら?
…イナリ…
…あら?
シーラさんが振り返ると
そこにイナリさんの姿はありませんでした。
ただ、バラの花束が地面に落ちているだけ…。
…イナリはどこへ行ったのかしら?
…このバラは一体…
いつもの慣れ親しんだ家の前なのに
まるで切り取られた空間に
1人取り残されたような
異様な雰囲気すら漂います。
家にでも入ったのかしら…
家の中に戻ったのか、と思い
シーラさんは家へと入ります。
何かから逃げるかのように。
* * *
………
つづく
【現在の装備】
レベル :7
めいせい:205
ぶき :新品の短剣
よろい :鋼鉄のよろい
かぶと :いつもの額当て
たて :なし
どうぐ :ファンガスの切り身(黄)
野ばらのペンダント
焼豚×2
焼きとり×3
なかま :
とくぎ :ファイアブレス