ニケ

おはようございます。
ファイナさん。

ファイナ

おはよう。ニケくん。

ファイナ

あら。
アルマちゃんも一緒なのね。おはよう。

アルマ

おはようございます。

ファイナ

2人とも、
早速仲良くなれたようで嬉しいわ。

ファイナ

さ、始めるから2人とも座って。

ニケ

はーい。

教室に見立てた小さな部屋。

黒板の前にファイナが立ち、
向かうようにして2人が並んで座る。

ファイナ

さて、今日はアルマちゃんが初参加だから、基本的なことから始めるわ。
ニケくんにはおさらいになるけど、
ちゃんと聞いてね。

ファイナ

アルマちゃんは城の人達から何度か"勇者候補"という呼ばれ方をされたと思うけれど、その意味を説明するには、勇者ラクスとその功績について説明しないといけないわ。

遠い昔、まだ魔族達が地上に住んでいた頃。
人間と魔族の間では、何故か争いが絶えなかった。
理由はわからない。
どうしてか、魔族たちは人間を襲った。
中には人間の言葉を理解できる者も居たようだけれど
人間を襲う理由を語ってはくれなかったようね。

人間と魔族の戦争は、魔族側が圧倒的に優勢だった。
魔族達は数こそ少なかったけれど
彼らの扱う魔力は非常に強力で
人間達がいくら束になってもまるで歯が立たなかった。

そんな時に現れたのが、件の勇者ラクスよ。
もっとも、ラクスが勇者と呼ばれるのはもっと先の話で
当時はただの冒険家だったのだけれど。
彼は魔力を持った人間だったの。

ただ、知っての通り人間が魔力を扱うということ自体は
それほど珍しい話では無いわ。
魔力そのものは、何処にでもあるエネルギーだから。
魔力を扱う技術も、今ほどでは無いにしろ、
当時からある程度は存在していたようね。

彼が特別だったのは、自身の内に魔力を持ち、それを自由に扱えたこと。貴方達と同じようにね。

彼はその力と沢山の人々の力を借りて
ついに魔族を封じたの。

ちなみに、その時に彼と共に戦った者達が集まって出来たのがここ、ラクスの城と騎士団よ。

ニケ

……で、魔族たちはラクスの手で封印されたんだが、最近になって魔物たちが地上をうろつくようになった。

ニケ

魔物は魔族の中では最下級の存在だけど、集まれば人間にとっては脅威だし、もし上級の魔族たちが現れればまた戦争に逆戻りだ。

ニケ

もし、ラクスの封印が解けてしまったんなら大事だ。
誰かが魔族たちを封じ直さないといけない。
つまり、勇者ラクスに続く存在。
"勇者候補"ってわけ。

ファイナ

その通り。
ただ残念ながら、封印の場所は現在に伝わっていないのよ。封印の場所の調査も、貴方達にお願いすることになるわ。

ニケ

勿論、騎士団の人たちも手伝ってはくれる。
けど、普通の人間じゃ魔力の影響で立ち入れない場所もあるから、そういう場所は俺たちで調べる必要があるんだよ。

ファイナ

そういった区域では、私達が手助けすることはできない。
だから、たとえ才能があったとしても実力が伴わなければ、勇者として送り出すことは出来ないわ。
半端な状態なら、命を落とすだけだから。

ファイナ

勿論、それ以前に重要なのは本人の気持ちよ。
自分には無理だと思ったら、素直に言って。
……誰も責めたりしないわ。

アルマ

……。

ニケ

俺は……、もう覚悟を決めてるよ。
でも、アルマ。君はこれからだ。

アルマ

私は大丈夫です。
……やれますから。

ファイナ

まだ、時間はあるわ。
重要なコトよ。
ゆっくり考えてね。

アルマ

……。

ニケ

ま、いざとなったら俺だけでも魔族なんて楽勝だけどね。

ファイナ

強がっちゃって……。

その後もファイナの講義は続き
やがて、日も暮れ始めた。

ファイナ

さて。
今日はこの辺にしましょう。

ニケ

ふー、お疲れ様。

アルマ

はい。
お疲れ様です。

ファイナ

明日は訓練の日ね。
アルマちゃんは、運動とか得意な方かしら?

アルマ

わりと……。

ファイナ

それなら、心配無いわね。

ファイナ

ニケくん。
ちゃんとサポートしてあげるのよ。

ニケ

はーい。

ファイナ

それでは、今日は解散とします。
明日も頑張ってね。

pagetop