教室に見立てた小さな部屋。
黒板の前にファイナが立ち、
向かうようにして2人が並んで座る。
おはようございます。
ファイナさん。
おはよう。ニケくん。
あら。
アルマちゃんも一緒なのね。おはよう。
おはようございます。
2人とも、
早速仲良くなれたようで嬉しいわ。
さ、始めるから2人とも座って。
はーい。
教室に見立てた小さな部屋。
黒板の前にファイナが立ち、
向かうようにして2人が並んで座る。
さて、今日はアルマちゃんが初参加だから、基本的なことから始めるわ。
ニケくんにはおさらいになるけど、
ちゃんと聞いてね。
アルマちゃんは城の人達から何度か"勇者候補"という呼ばれ方をされたと思うけれど、その意味を説明するには、勇者ラクスとその功績について説明しないといけないわ。
遠い昔、まだ魔族達が地上に住んでいた頃。
人間と魔族の間では、何故か争いが絶えなかった。
理由はわからない。
どうしてか、魔族たちは人間を襲った。
中には人間の言葉を理解できる者も居たようだけれど
人間を襲う理由を語ってはくれなかったようね。
人間と魔族の戦争は、魔族側が圧倒的に優勢だった。
魔族達は数こそ少なかったけれど
彼らの扱う魔力は非常に強力で
人間達がいくら束になってもまるで歯が立たなかった。
そんな時に現れたのが、件の勇者ラクスよ。
もっとも、ラクスが勇者と呼ばれるのはもっと先の話で
当時はただの冒険家だったのだけれど。
彼は魔力を持った人間だったの。
ただ、知っての通り人間が魔力を扱うということ自体は
それほど珍しい話では無いわ。
魔力そのものは、何処にでもあるエネルギーだから。
魔力を扱う技術も、今ほどでは無いにしろ、
当時からある程度は存在していたようね。
彼が特別だったのは、自身の内に魔力を持ち、それを自由に扱えたこと。貴方達と同じようにね。
彼はその力と沢山の人々の力を借りて
ついに魔族を封じたの。
ちなみに、その時に彼と共に戦った者達が集まって出来たのがここ、ラクスの城と騎士団よ。
……で、魔族たちはラクスの手で封印されたんだが、最近になって魔物たちが地上をうろつくようになった。
魔物は魔族の中では最下級の存在だけど、集まれば人間にとっては脅威だし、もし上級の魔族たちが現れればまた戦争に逆戻りだ。
もし、ラクスの封印が解けてしまったんなら大事だ。
誰かが魔族たちを封じ直さないといけない。
つまり、勇者ラクスに続く存在。
"勇者候補"ってわけ。
その通り。
ただ残念ながら、封印の場所は現在に伝わっていないのよ。封印の場所の調査も、貴方達にお願いすることになるわ。
勿論、騎士団の人たちも手伝ってはくれる。
けど、普通の人間じゃ魔力の影響で立ち入れない場所もあるから、そういう場所は俺たちで調べる必要があるんだよ。
そういった区域では、私達が手助けすることはできない。
だから、たとえ才能があったとしても実力が伴わなければ、勇者として送り出すことは出来ないわ。
半端な状態なら、命を落とすだけだから。
勿論、それ以前に重要なのは本人の気持ちよ。
自分には無理だと思ったら、素直に言って。
……誰も責めたりしないわ。
……。
俺は……、もう覚悟を決めてるよ。
でも、アルマ。君はこれからだ。
私は大丈夫です。
……やれますから。
まだ、時間はあるわ。
重要なコトよ。
ゆっくり考えてね。
……。
ま、いざとなったら俺だけでも魔族なんて楽勝だけどね。
強がっちゃって……。
その後もファイナの講義は続き
やがて、日も暮れ始めた。
さて。
今日はこの辺にしましょう。
ふー、お疲れ様。
はい。
お疲れ様です。
明日は訓練の日ね。
アルマちゃんは、運動とか得意な方かしら?
わりと……。
それなら、心配無いわね。
ニケくん。
ちゃんとサポートしてあげるのよ。
はーい。
それでは、今日は解散とします。
明日も頑張ってね。