とはいえ。
寝ようと思っても、己の領域ではないこの場所で寝れるほど蒼凰蓮華は神経が図太くはなかった。やはり世話になってしまっている現状、落ち着かないのが心情だ。食事も湯浴みもできたし、その時に改めて確認したが足の傷も酷いけれど痛みを我慢できないほどでもなし、ゆえに歩けないわけでもない。かといって歩き回るのは失礼だろうし、するにしてもまずは家主に挨拶をしてからだ――が、その家主は今いない。
つまり蓮華は暇だった。
布団から出て廊下に出ると、腰を下ろして足をふらふらと動かす。石畳の景色は蓮華にとって見慣れぬもので、森を抜けてくる風の心地よさもまた知らないものだった。