この季節になると目にすることが増えるのが『心霊特集』ですよね。

怖いもの見たさ、という言葉がありますが私もソレで、ビビリのくせについつい見たくなってしまいます。
しかし肝心のシーンでは目を瞑って耳を塞ぎ、概要は一緒に見ていた妹から聞くだけで満足、という小心っぷりを発揮しています。
再現ドラマも、作り物っぽい動画でもダメな本物のビビリですが、好奇心に勝てずやってしまうことがあります。

学校の集合写真や、遊びに行った先で撮った写真の中から、ついつい探してしまう、

心霊写真。

ベタですが、指の数を数えてみたり、足元や影を確認してみたり等。
ただ、前述の通りのビビリなので、「ないだろう」とは思いつつも、本当にないと分かるとどこかでホッとしていたものです。

あなたはどうですか?

私は数年前まで、縁があってとある神社で奉仕をさせて頂いておりました。
そこは県外からの参拝者も多く、色々な話を聞く機会がありました。
そして夏になると増えるのが、写真を持ち寄る参拝者です。

ここで先に念を押しておきますが、私に霊感はありません。
一緒に奉仕していた先輩の中には、「影が見える」と言って病んでる部位を言い当てたりする人もいましたが、私自身は極々普通の一般人です。

話を戻します。
この時期になると増えるのが、所謂心霊写真に纏わる相談です。
例えば海で撮った写真の波紋が人に見える、指が少ない気がする、といったようなものです。

普通に生活している人よりはそういった疑惑写真を目にすることが多かったと思いますが、一般人である私が見ると「そう見えるだけでは?」と感じてしまうようなものが大半でした。
実際にご本人も、「自分では分からないけど、他人(ひと)に言われて気になってしまうので…」と言ったような事も少なくなかったのです。

心掛りで相談に見えているのに大変失礼な話だとは思うのですが、あまり考えすぎてもストレスになってしまって良くないのではないかと思っていました。

そんな楽観的なわたしですが、

ああ!やっぱり目に見えないものは存在してるんだ!

と突付けられた写真があります。
それを見てしまうと思うんです。
「、、、に見える」「、、、かも知れない」はそれで済んでいて僥倖なのかも知れないと。
繰り返しますが「に見える」は「に見える」で済んでるんです。
本気のやつは本当にやばい。

テレビや雑誌という媒体を経由するのではなく、肉眼で現物を見た人間にしかわからない恐ろしさがある。
ここでは私が目にした本物と思われる2つの写真のうち、1つをお話します。

その日は参拝者も少なく、静かな日だったと記憶しています。
そんな平穏としか言いようのない日に、若い女性が一人きりで館内に入って来ました。

受付には私も含め3人おりましたが、お姉さんはまるで私しか目に入っていないかのように、迷わず私の前に来ました。

私には霊感はありません。ないと思っております。
ただ、幼い頃から「頼られやすいのだから気をつけろ」と何人かの大人には言われていました。
”頼られる”つまり、”寄せ付けやすい”とか”影響を受けやすい”という事だと思います。
今思うとそいういう事も含め、お姉さんが私の受付を選んだところから、私のこの体験は必然性を持って始まっていたような気がします。

あの…写ってしまったんです。

第一声です。
お姉さんは確信していました。写ってしまった、と。
そして徐ろに写真をカウンターに置きました。

これなんですけど・・・

見ると、写真は車内で撮られたもののようでした。
友達と海へ遊びに行った帰りに撮ったものだと言っていました。

おそらく3列シートのワゴン車でしょうか。

相談に来たお姉さんが撮影者で、2列目から前の席を撮ったようです。
構図は(想像してみて下さい。視点は2列目から前を見ています)、こちらを振り向き満面の笑顔を向けている助手席の女性が写真の左側に大きく写っています。

右側の運転手は運転中ですので写っていません。
せいぜい黒い後頭部くらいだったと思います。

振り向いた笑顔の女性と、運転席の間、写真の中央部にはフロントガラス越しに道路が伸び、フロントガラスの上部にあるルームミラーには3列目に座るもう一人の友人が写っていました。

フロントガラス越しに見える風景は、前方車両も対向車もなく、

ああ、たしかに地元の海帰りっぽいな

と思わせるような、舗装はされているけど道の脇には草木が茂っている田舎道でした。

写真を差し出された瞬間には、何も怪しいところのない、ただのはしゃいでいるリア充の写真にしか見えませんでした。

ただ、それまで見てきた数々の写真との決定的な違いは、

”怪しいと思われがちな要素(白いモヤ、謎の光、波紋、指の増減など)”

が見当たらなかった点です。
一見すると、怪しいところなどない、あまりにも”完璧な””普通の”写真なんです。

一体これのどこが…?

この時点で多少の違和感を感じつつも、私はそう思いました。

お姉さんがある一点を指さしながら口を開きました。

この人、一緒に行ってないんです。

人差し指で指したのは、ルームミラーに映った3列目に座る人物でした。

この人、友達じゃないんです。

ここに、人、座ってますよね?

行った時にはこんな人居なかった

ゾッ

瞬間、全身に寒気が走り、装束で隠れた肌には鳥肌がぶわりと広がりました。
今、思い出すだけでも結構悪寒がやばいです。

友達ではないと断言しながらも、そこに人が写っていることを私に確認するという矛盾にお姉さん自身も気づいていないのでしょう。
初めから冷静に説明しているように見えたお姉さんも、実はひどく混乱して恐怖を感じているようでした。

あまりにもしっかり写り込んでしまっているのです。
何も知らなければ、ただの写真にしか見えない程…、本当にそこに座っているように、はっきりと…。

えっ、この人、居なかったんですか?

うっかり、この"人"と称して聞き返してしまうほど、まるで実体があるようでした。

初めて”明らかな本物”を目の当たりにした私は、お姉さんに自分の動揺を悟られないよう(不安を煽るようなことは出来ない)受付を済ませ、件の写真をお預かりし、神職へと取次ぎました。

一通りお姉さんから聞いた話を伝え、写真を渡したのですが、その時の神主の苦々しい顔が今でも忘れられません。
眉を寄せて目を細め、唸るような声でボソッと
「あ"ぁ、、、これは、、、」
とこぼしていました。

確かこの件は、お姉さんが撮影に使ったカメラを持参していたので、そのカメラを清めたのだと記憶しております。
個人的には、車こそを祓った方がいいのではないかと思ったのですが、車の所有は別の方だったようですし、この後のことは何も分かりません・・・。

ビビりだと自覚があるけど、ついつい怖いもの見たさで見てしまう貴方。
やめましょう。本当にダメ、本物は本当にやばい。
ずっと頭から離れません。

前半で、思い込みによりそう見えているものが大半を占めるとお話ししましたが、中には本当に袖から先の手が完全に消えてしまっているようなものもありました。

ですが、やはりこのお姉さんの写真は衝撃や恐怖が桁違いでした。
あるはずの物がないよりも、ないはずの物がある恐怖は他に例えようもありません。

今はもう奉職から離れたので、自分から探したり見ようとしない限り、そういった類の物を目にすることはないはずですが、もう本当に二度とごめんです。
鳥肌やばい。
私の愛車も3列シートのワゴン車なので、夜中一人で運転してる時なんかはルームミラーで後部を見るのが怖くて仕方ありません…。

この話は実際に私が体験したものです。
拙い文章でしたが、ご閲覧ありがとうございました。

持ち込まれた写真

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