―始まり―
―始まり―
天下の美少女よ!!
すべからく俺に侍るべし!!
数百年も前から続く魔族と人の抗争!!
大乱の長き世を生き抜いてきた男の剛腕!
そこには何が握られていたか!?
一振りの剣か、一条の槍か!?
否、守るべきか弱い女の手だ!!
人が真に至強輝くとき、そこには絶世の美女が、あてがわれている!!
いかなる猛者がその武を誇ろうとも、傍らに守るべき美少女がいなければ、独りよがりの暴徒に過ぎない!!
真に平和を欲するならば、まず手中に収めるべきは美少女である!!
俺の冒険はそれを以って始まるのだ!!
もう一度、明言する!!
天下の美少女よ!!
臥竜たる美の化身たちよ!!
俺について来い!!
断る!!
勇者ソートクの心胆からの叫び。
だが、刹那の時も許さない者がいた。
持っていた聖剣を振り回す一人の女の騎士だ。
聖剣が目指す先は、街に侵攻してきた魔物ではない。
高らかな宣言を告げたソートクだった。
聖剣がソートクの頭に吸い込まれようとしている。
ソートクは天を仰ぐように頭をのけ反らせて回避する。
何故断る!?
お前が秘めた可能性は無限に及ぶ!!
俺の伝説の第一歩に相応しい!!
お前だけではない!!
そこな女戦士も女魔法使いもだ!!
……
……
美・少・女・三・人!!
この邂逅を以ってこの俺の道が決まった! ともに来い!!
そんな馬鹿げて卑下た醜悪な野望!!
首から上だけで見てなさい!!
その腕は、女性故に細腕。
だが込められた全力と、握りしめる聖剣の切れ味。
人一人の首を薙ぐに、これほど適した攻撃は無い。
聖剣がソートクの首を捉えた。
聖六角大陸『ヘキサポリス』
大陸全土を見ても、住まう人々に平和の二文字が与えられたことは無い。
魔界より現れる闇の眷属の侵攻。
――魔物。
彼奴らは空間のゆがみを創りだしては、漆黒の魔界より現れる。
人は立ち向かった。
強大な魔の手に抗うため、国と国とが手を結び、魔物の侵犯を防いだ。
敵は強い。恐ろしく、そして無慈悲に。
だが、人々の目から希望の炎が途絶えることは無い。
人々は知っている。
人々は憶えている。
闇が息吹き魔物が蠢くところに――
光りもまた煌煌と照らされると――
――……