おどぎの国へ。

04:浮き立つ思い

ブローチをじっくりと見ていると、ふと思い出したようにルドルフは言葉を紡ぎました。

ルドルフ

うむ…そういえば、北のゲートと言えば今の時期、サーカスがやってる辺りじゃな。

クリフ

サーカス?

リノア

サーカス!?サーカスってあのサーカス!?

サーカスという単語を聞いて今まで黙っていたリノアが堰を切ったように喋り始めました。
あまりの騒がしさにルドルフは翼をばたつかせ、呆れるように言い放ちました。

ルドルフ

騒がしいのぉ…。
黙っておれと言ったじゃろう。

リノア

だって!サーカスだよ!?サーカス!!
私まだ一回も見たことないんだもん!
行ってみたい!

リノアはルドルフの顔に突進しようという勢いで反論しました。
その勢いに押されたのかルドルフは小さなため息をはきました。

ルドルフ

…なんじゃ、お前さんはサーカスに行ったことなかったのかね。

リノア

うん!いつも森までしか来ないから、見ることができるかもって思うとワクワクするの!ね!クリフ!

クリフ

うん、僕も見たことないから行ってみたいな。

リノア

ほーら!

ルドルフ

まぁ…近くまで行くんじゃし、サーカスに行ってみるといいさ。
とにもかくにも、クリフは気をつけて帰るんじゃな。北のゲートはそう遠くないから子供の足でも夕暮れまでには着けるじゃろ。

かくしてクリフはお礼と別れを告げ、ルドルフの導きにより家へ帰り方への手がかりがわかったのでした。

リノア

やっぱりルドルフおじいちゃんに聞いて正解だったね!

クリフ

うん。このブローチがあればどっちが北か迷わないしね。

胸元でキラリと光るブローチで方角を確認しつつ、森を抜けるために北へと獣道を進んで行きました。

リノア

それにサーカスも見れると思うとドキドキだよー!

クリフ

あははっリノアはさっきからそればっかだね。

リノア

だって、初めていくんだもん!
クリフは行ったことある?

クリフ

うん、まだ赤ちゃんのときに行ったことあるってお母さんが言ってたの聞いたことあるよ。

リノア

いいな、いいな!羨ましい!!

リノアは羨ましいとクリフの目の前で頬を紅葉させて羽をパタパタとバタつかせていましたが、クリフは少し困った表情をしました。

クリフ

でもぜーんぜん覚えてないや。

リノア

じゃあ、おとぎの国のサーカスをめいいっぱい楽しもうよ!一緒の思い出嬉しいなー!

そんな話をしていると森と原っぱの小道の境界線にたどり着きました。

太陽の光がクリフとリノアに降り注ぎました。
今まで薄暗い森の中にいたので、まぶしい日差しに一瞬目がくらみました。

クリフ

んー、なんだか久しぶりにお日様を見た気がするよ。

リノア

わーい!おひさまだっ!

その小道は見渡す限り、どこまでも続いていました。
まるで昔お母さんが読んでくれたオズの魔法使いに出てくる黄色いレンガ道だなと思いました。
おとぎの国のサーカスはどんなことするんだろうという高揚感とちゃんと家に帰れるのかなと不安が混じり合う中、一歩を踏みしめました。

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