ここは魔王の城、その玉座。
ここは魔王の城、その玉座。
妾と契約を交わすのであれば、永遠の命を授けようぞ
そなたにとって、悪くない話であろう
確かに魅力的なお話ですね!
……でも、私は決めていたんです
この世界の方々のために死ぬ……と!
勇者様……
……ったく、お前って奴は……
べ、別に恰好良いとか、思ってないんだからぁ☆
何も出来ない自身が許せないでござる……!
交渉は決裂だな。望み通り、死ぬが良い!
魔奥義・覇権斬り!
魔王の剣の切っ先が私に迫る。
不思議と全ての動きがスローモーションに見えた。
それと同時に、この世界に来た頃のことを思い出していた。
これが、いわゆる「走馬灯」というものなのかもしれない。
そう遠くない昔のこと。
それは麗らかな平日の昼下がりのことであった――。
-勇者リストラはかく語りき-
はぁ……
私がこの公園で過ごすようになってから、早くも1か月が経った。
つまり、会社をリストラされてから1か月経ったわけだ。
今になって分かる。
会社にとって私の存在など、利益を出すための歯車に過ぎなかったのだ。
会社にとって、不要になったモノは切り捨てる。
家庭を顧みず、滅私奉公、粉骨砕身、不眠不休で会社に私の全てを捧げてきたとしても、だ。
リストラされたことを妻に伝えた結果、もはや金銭以外に繋がりのなかった夫婦という関係は、退職金を折半することで終わりを迎えることとなった。
……
私は何のために生きているのか……。
私には生きる価値があるのだろうか……。
ただ、こうして日がな1日、公園で過ごすだけの毎日。
社会に対して何の貢献をすることもなく、酸素を消費し、食し、糞尿を排出するだけのこの私に……。
「くぅ~ん」
おお、よしよし……
私は何のために生きているのか――。
少なくともその問いに関しては、愛犬チワワ「チャッピー(2歳)」のために生きている……と今のところは答えよう。
ふふっ
1つだけでも答えがあるだけ、私は幸せ者なのだろう。
とはいえ……。
ふぅ
この先、一体どうしたものか……。
死……しかないのだろうか……。
何度自分に問いかけても、答えは出ない。
!?
体が一瞬、浮かび上がったような……!?
しかも、先ほどまでの風景と違う!?
確かに私はチャッピーと公園にいたはずなのだが!?
「……」
腕の中のチャッピーがブルブルと震えている。
間違いない。
私とチャッピーは得体のしれない何かに巻き込まれつつある!!!!!
う、うわあーーーーー!!!
まるでブラックホールに吸い込まれるような引力を感じると、目の前が暗転し、私は気を失った。
―次回を待てっ!―