ここは魔王の城、その玉座。

魔王

妾と契約を交わすのであれば、永遠の命を授けようぞ

魔王

そなたにとって、悪くない話であろう

リストラ

確かに魅力的なお話ですね!

リストラ

……でも、私は決めていたんです

リストラ

この世界の方々のために死ぬ……と!

召喚士

勇者様……

竜戦士

……ったく、お前って奴は……

魔法士

べ、別に恰好良いとか、思ってないんだからぁ☆

聖騎士

何も出来ない自身が許せないでござる……!

魔王

交渉は決裂だな。望み通り、死ぬが良い!

魔王

魔奥義・覇権斬り!

魔王の剣の切っ先が私に迫る。

不思議と全ての動きがスローモーションに見えた。

それと同時に、この世界に来た頃のことを思い出していた。

これが、いわゆる「走馬灯」というものなのかもしれない。


そう遠くない昔のこと。

それは麗らかな平日の昼下がりのことであった――。


















-勇者リストラはかく語りき-

















保田

はぁ……

私がこの公園で過ごすようになってから、早くも1か月が経った。

つまり、会社をリストラされてから1か月経ったわけだ。


今になって分かる。


会社にとって私の存在など、利益を出すための歯車に過ぎなかったのだ。

会社にとって、不要になったモノは切り捨てる。

家庭を顧みず、滅私奉公、粉骨砕身、不眠不休で会社に私の全てを捧げてきたとしても、だ。


リストラされたことを妻に伝えた結果、もはや金銭以外に繋がりのなかった夫婦という関係は、退職金を折半することで終わりを迎えることとなった。

保田

……

私は何のために生きているのか……。

私には生きる価値があるのだろうか……。


ただ、こうして日がな1日、公園で過ごすだけの毎日。


社会に対して何の貢献をすることもなく、酸素を消費し、食し、糞尿を排出するだけのこの私に……。

「くぅ~ん」

保田

おお、よしよし……

私は何のために生きているのか――。

少なくともその問いに関しては、愛犬チワワ「チャッピー(2歳)」のために生きている……と今のところは答えよう。

保田

ふふっ

1つだけでも答えがあるだけ、私は幸せ者なのだろう。

とはいえ……。

保田

ふぅ

この先、一体どうしたものか……。

死……しかないのだろうか……。

何度自分に問いかけても、答えは出ない。

保田

!?

体が一瞬、浮かび上がったような……!?

しかも、先ほどまでの風景と違う!?

確かに私はチャッピーと公園にいたはずなのだが!?

「……」

腕の中のチャッピーがブルブルと震えている。

間違いない。

私とチャッピーは得体のしれない何かに巻き込まれつつある!!!!!

保田

う、うわあーーーーー!!!

まるでブラックホールに吸い込まれるような引力を感じると、目の前が暗転し、私は気を失った。

―次回を待てっ!―

第01話「異変」

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