思考に没頭したい時、資料を見る必要がないのなら、できればじっと留まらずに躰を軽く動かしながらにしろ――それはあたし、レイディナ・ブリザディア・近衛の父親であるところの、エイクの言葉だ。
だから、というわけではないにせよ、あたしは腕を組むようにして胸を下から支えつつ、狭い研究室内部を右へ左へと歩きながら思考に没頭する。動く、ということは意識を別の部分で使わなくてはならないし、視界も変動するため、いろいろな情報が目に飛び込んでくる。父に言わせれば、逆にそれこそが発想の転換になるのだ、とのことらしいけれど、あたしはまだそこまでの領域には至っていない。ただ、そうなれば良いとは思う。