続く
次の資格なんだけど、ちょっと見当たらないんだよな……
講習を受けるだけのもないの?
あんまりな……
この情報誌以外の情報も探してみようかと思う
なるほど
ペース早かったし、思いつかないのもムリないよ
それでだけど……
今日は休みって感じにしてだな
少し前に審判の仕事しただろ? 闘技場の
うん、ちゃんとできてたね
それよりあの単独行ライカが審判って気づいて、ちょっと騒ぎになっちゃったけど
でもあれのおかげであそこの人にも気に入ってもらえたんだぞ
集客率が上がるってな
審判目当てに来るって、闘技場の意味ないような……
まあまあ
それはともかく仕事したんだ、それに見合ったものが支払われるわけで
美味しいもの食べに行こうぜ
えっ
約束しただろ?
給料入ったら、お礼にご馳走するって
あっ、本のお金も返さなくちゃな
いや、家賃に諸々もある……っ
はあ……
そこまで高いものじゃなくていいから
えっ、でもせっかくだし……
いいの
ライカがご馳走してくれるだけで
む、むう……
じゃあ今はまだ時間も早いし、夕方でいいか?
うん、わかった
オレはちょっと散歩してくる
ずっと勉強ばっかりだったし、バルストルってまだあんまりわからないし
時間までには戻るから、まあ勉強しておいてくれ
特殊調合師の勉強、あるんだろ?
うん、ありがと
気をつけてね、ライカ
ああ、行ってくるよ
んー、バルストルって言ってもこう歩いてみれば広いなー
……腹減ったな
休憩がてら、適当に買って食べるか
お、屋台発見
おじさん、そのパン一つください
うん、美味い美味い
ふうー、多く買い過ぎたな
まあ袋に入れてもらってるし、家に持って帰るか
ん?
やあ
ファ、ファリアス……?
そうだ、ファリアスだ
元気してるかい? ライカ・アベイン
…………
あの……どなたですか?
どなたって、僕はファリアスに決まっているじゃあないか。ファリアス・キネインだ
あ、パンだ。一つ貰っても?
余っているんでどうぞ
どうもどうも
おっ、美味しいねえ、これは
心休まる味だよ
それはどうも
あの、本当にどなたですか?
ほう、どうしてまた?
雰囲気が違いますし、なにより勇敢心がないです
やっぱりわかってしまうものなんだね
観念しよう、僕はファリアス・キネインじゃあない
アクロアだ
アクロア?
もうちょっと声を小さく、周りに聞かれるとまずい
いや、あのアクロアという知り合いは……
そうだろう
お互いに初めて会うからね
でも、私はそなたのことを知っているし、そなたも私の名前くらいは知っているはずだ
いや、その申し訳ない……です
むう、自分であまり言いたくはないのだが……
エングラドの王子の一人にほら、そういう名前の者がいるだろう?
えっ……
えっ、えっ、ええええええええええっ
ま、まさか本当にアクロア殿下……?
魔、いや異法でな、こうして姿を変えてもらっている
こうして色々と周るのが私の趣味の一つでな
もっ、申し訳ありません……
名前を思い出せないなどと、ひどく失礼を……
気にしなくていい
まあ、楽にしてくれ。今の私はファリアスの姿なのだから、そうしてもらわなければ怪しまれてしまう
は、はあ……
あの、御一人ですか?
いや、あそこにファリアスがいてくれている
あの橋の物陰のところだ
そう、あのフードを被った
なるほど……
こういうの、大丈夫なのですか?
なに、明るみにならなければ問題はないよ
こうでもしなければ自由に外を歩くことはできないからね
あの、それでどういう……?
大丈夫。そなたを捕えに来たわけではない
ファリアスから聞いてな、ここにライカ・アベインが滞在していると
だからこうして会いに来たのだ
ははっ
えっと、その、光栄でもうなんだか、あの、とにかく光栄です
楽にしてくれと言ったじゃあないか
そうだな、私、いや僕も楽にさせてもらうから
君もそうしてくれ
ははっ
僕が想像していたよりも、ライカ・アベインは真面目なのだな
すまない。君に興味があってね、色々と話を聞きたいと思っていたんだ
聞かせてくれないか?
それはもちろん
それでは……
と、いうような感じで……
ほうほう、ファリアスとはまた違っているな
楽しんでいただけましたか?
ああ
勇者の話は面白いものだ
それはとても……
城に呼び出していれば聞けない話も多い
周りがうるさくてな
そう……
城では聞けない話を聞きたいな
それはどういう……
私は全国を回り、独自に勇者について調べている
というのも、勇者の待遇があまりよいものではないと感じていてな
…………
そのせいで勇者には辛い思いをさせている、と
…………
ファリアスから話を聞いたのですか?
私が勇者を辞めたと
うむ
しかし僕にはそれを止めようなどと意思はない
情けないから、ですか?
とんでもない。僕は君を尊敬している
一人で過酷な道を乗り越えてきた勇者だ
そんな勇者の決めたこと、僕は尊重したいのだ
さらに保護したいとも考えている
君の選んだその道を
間違いなく辞めさせたくないという動きがあるはずだから
ただ、その道を選んだ理由を聞きたいのだ
話したくないというのはわかる
しかし、君の話を次なる勇者のために役立てたいのだ
このままでは今も、そして魔王が討たれたあとも、勇者はただの道具扱いだ
使い捨ての、都合のいいただの道具に
とても英雄に対する扱いではない!
…………
力の限界ですよ
ただそれだけです
なるほど
己の力量の限界を感じたということか
と、いうことだそうだが、どうだい?
……そうか
ふむ、ウソはやめていただきたい
……魔法、ですか?
異法と言うべきだな
彼らは本当に気にしている
私はあまり気にしていないから、よく怒られるけれど
ウソはついてもらいたくないな
君にとっては腹立たしいことだろうが、誠の話でなければ意味はない
それに私は王子だ
今のウソが明るみになってしまった時点で君は処罰されてしまう
ああ、もちろん今のは無かったことにしよう
だからこそ、本当の理由を話してもらおうか
あまり……いい手だとは思いませんが
いわゆる汚い手、ということかな?
気持ちのいいものじゃありませんね
君はやはり勇者だ
生粋の勇者、惜しいな……
私をからかっているのですか?
気を悪くしないでほしい
その気性、素直さ、私には使えないものだ
だからこそ僕は君を尊敬し、そして羨ましく思う
何を言っているのか、私にはさっぱりです
そうだな
しかし君にどう思われようと、本当の理由を知れぬままに帰ることはできない
それに、彼女も聞きたがっている
!?
ごめん、ライカ……
スタイア……
殿下、これはどういうことです?
君に会うため、まずは滞在しているという彼女の家へと向かったのだ
そして事情を説明すればついていきたいということだったのでな
……っ!
ライカ、ウソだってわかってた
あの時異法を使ったのかっ?
ううん
そんなの使わなくたってウソだってわかるよ……幼馴染なんだよ?
ライカ、ウソつくときヘンな笑い顔するもん
ウソなんて、オレは……っ
彼女は君をしっかりと見ている
君はどうする?
……っ
嫌になったんですよ……
勇者ってヤツが嫌になったんですよ!
それでいいでしょう
オレはもう勇者じゃないんです
理由を話したくないほどにか? ライカ・アベイン
理由というのを話せば、認めていただけるんですね?
辞めることに関して僕は止めないと言ったはずだ
ただ、話を聞けばこの場から去り、君の道を守ろう
誓っていただけますか?
ライカ、殿下に対してっ
これはオレと殿下の話だ
いかがです、殿下?
我が名に誓おう
そして、力の限り勇者の力になるとも
……わかりました
ではお話します
続く