レイリにとってニビは、育て親のようであり、教育者でもあった。
レイリが甘えてきても拒絶はせず、だからといって自ら撫でることはせず。ニビは絶妙な距離感を保ち、レイリに精神的な弛緩(しかん)を許さなかった。
それだからなのか、家族と他人の間に位置づけられる彼が何を考えているか分からないのだ。不必要なことは口にしない、優秀なアンドロイド。そんな彼は時折、人が変わったように突拍子もないことを口にすることがあった。
そういう時、決まって枕詞は「戯言ですが~」であった。ひっそりとレイリの中で『ニビ的枕詞』と指定しているベスト3に入る。