サンザシがぼそりと言う。
アキレアですね
サンザシがぼそりと言う。
アキレア……
まあ! 花言葉は勇敢、勇者様にぴったりですこと!
……お花が、好きなんですね
ええ! 趣味程度の知識ですが、大きくておおらかなお花の数々には、心が癒されます
どうやらこの世界では、お花は大きなものらしい。
先ほどまで、お花の国にいましたの。
そこで、お花の占いをしていただいたのですわ。
ぷちぷちと占い師様と一緒に、花びらをちぎりましてよ
なんだそのかわいい占い方法は。想像して少し笑う。
そうしたら、今日必ず、運命の出会いがあるという結果が出たのですわ!
私はかねがね、勇者様と旅をしてみたいと願っておりましたの。もう、運命的ですわ!
それは光栄です。
俺も、どうしていいのかよくわからなくて困ってたんです
お互い探しあっていたのですね、運命、まさしく運命です!
アキレア様、とお呼びしてもよろしいですか?
アキでいいですよ
まあ! 光栄ですわ、アキ様。
私にも、堅苦しいお言葉はどうぞ、おやめになってくださいませね。
私はずっとこの口調ですから、おきになさらず!
では、どこに向かいますか?
……とりあえず、どこでもいいので、まずは町にいきたいですね
かしこまりました! では、葉っぱで飛びましょう
葉っぱでとびましょう?
そうですわ。そーれい!
そーれいって! 掛け声それかよ! と思ったが、魔法はそれでもすごかった。
ルキが手を上にあげると、どこからともなく二枚の葉っぱが風に吹かれてやってきた。
それは、まるで飛行機のように一直線にこちらに向かって降りてきて、俺たちの前でぴたりと止まった。
さあ、乗ってくださいませ
ルキは微笑み、葉を手のひらで指し示してみせた。
魔法使いってすごいんだな……
やだ勇者様ったら、誉め上手!
背中を思いきり叩かれる。痛い。
町は、れんがでできた家が連なる、小さくおしゃれな町だった。
忘れかけそうになるが、俺も含めてサイズはミニサイズ。
海の近くにあるその町は、岩にある窪みのなかにちょこんと存在していた。隠れ家のような町だ。
この町ははじめてですか?
夕御飯を食べる場所を探しながら歩く途中で、ルキが訪ねてきた。
はい、はじめてです
もちろんのこと。
ご出身はどちらの町でございますの?
私は先程も申し上げました、花の国にある小さな村ですの。
海の国に来たのは久しぶりですのよ……と、話がずれてしまいまして、申し訳ございません。いけない癖ですわ。
それで、えっと、そうでした。ご出身はどちらで?
……遠い国です
まあ、そうですの。雲の谷方面です?
それとも、星の元方面でしょうか?
知らん知らん、サンザシさんヘルプ! と思うが、サンザシさんは例によって例のごとく、町並みに夢中でそれどころではないようだ。
サポーターとはなんなのか。
雲の谷よりさらに向こうで……
まあ、素敵ですのね。
そのお召し物も、ここらへんでは見ないものですわ……あら、いい匂いがしますことね。
あそこですわ、どうでしょう、入ってみませんこと?
故郷のはなしから逃れるのが一番。
大賛成してお店に入り、そこからもひやひやしながら会話を進めたが、基本はおしゃべりな彼女がぺらぺらと話してくれるので、大きなぼろは出なかった。
Nia様>コメントありがとございます! わああ嬉しいです^^ 私もファンタジー大好きなので、わくわくしながら書いております! 楽しんでいただけますように……!