Gael

やあ


 天井からの声はその場にいた三人、いや隣の死刑囚を含めれば四人か。とにかくその場にいた人物の視線を一気に集めることになった。

Gael

なにか騒がしいとおもったら、勇者が此処に捕まってやがったんだな

Gael

超吃驚


 天井からくるりと器用に、よりにもよって牢獄の中に着地した青年は、身なりは完全に盗賊のそれだ。
 いいや青年の場合義賊と呼ぶべきだろうか。
 義賊の青年は私を見ると、また驚いたように口を大きくあける。

Gael

ってあんたは、なんだ生きてたのか!

Claus

ご挨拶ですね

Gael

はっはーうっかり手を滑らせてもいいんだぜ

Claus

カンベンしてください

Gael

んでそっちのべっぴんさんは? なんで一緒に投獄されてるんだ?

Eva

あら、小汚い鼠ね

Eva

あたしも貴方と同じよ

Eva

どうせそちらも暇つぶしか興味でしょう

Gael

おうおう気の強いお嬢さんだ


 けらけら義賊は笑う。
 しかしそれに同調せずに、彼は頭を抱えた。

00

ザル警備か

Eva

今更の話題よねぇ

Gael

ふぬけばっかだし

Claus

私がここにいる時点で警戒心というものはないようですよ

00

もう帰ってよ……


 振り回されることにはもうだいぶ前から疲れているのだろう、彼はくたくただとため息を零す。

Gael

いやー、また会えるとは思ってなかったぜ。勇者ぁー

00

……どこかであった?

Gael

ありゃりゃ忘れてらっしゃるか

Gael

ほら、灰色の街で

Gael

あの時はばたばたしてたからしかたねぇか

Gael

あんがとな。んでごめん

00

え……

Gael

相当無理させちまっただろ、泣きそうな顔してたし。だからごめん

Gael

あとあの時あんたがいなかったら死んでたから、あんがと

Gael

OK?

00

あ、えっと

Eva

何困惑してるんだか

Claus

私に振られても

Claus

……彼、結構弱気ですね

Eva

前は違ったわよ

Eva

怯えてああなってるだけ

Eva

裏切られてああなってるだけ

Claus

裏切りは人の深層を暴く、とよく聞きます

Eva

それ、言ったのあの人でしょう

Eva

三つ傷の

Claus

よく分かりましたね、お知り合いですか

Eva

えぇ、幼馴染

Claus

……失礼ですが、今何歳で

Eva

冥土の土産にする?

Claus

いえ、結構です

何々、何やってるの

Eva

……どちらさまで

Claus

あぁ、お久しぶりです。アサシンさん

いや、また会えるとは思ってなかったぜ。

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